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数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

免疫(3)自然免疫 化学バリア 唾液、抗菌ペプチド

2023-08-02 10:22:52 | 免疫
自然免疫
2.化学バリア
(1)唾液
 唾液はリゾチーム、ペルオキシダーゼ、免疫グロブリン、ラクトフェリンなどを含み、抗菌機能を有しています。
 リゾチームは真正細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンを加水分解します。かつて塩化リゾチームは風邪薬にも配合されていたようですが、有効性が確認できないとして2016年に販売中止しているそうです。(唾液の成分でもあるリゾチームが風邪薬として堂々と売られていた?)
 ペルオキシダーゼは、過酸化水素を無害な水に分解したりして、酸化ストレスを解消したりしているようです。
 ラクトフェリンは、細菌の必須ミネラルの鉄を奪って抑制したり、細菌の細胞膜・細胞壁を脆弱化したりする機能があるようです。母乳の初乳には、ラクトフェリンが多く含まれ、免疫系が未熟な新生児を守っています。またラクトフェリンはC型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープに結合することで浸入を阻害しています。
 免疫グロブリンは抗体(獲得免疫)です。唾液に含まれるのはIgAのタイプのものです。
 唾を傷口に付けたりするのは、一定の効果はあるようです。猫がよく体中を舐めていますが、抗菌的な作用もあるのでしょうか。なお、傷口を舐めるのは、微生物の感染の可能性があるので避けた方がよいようです。
 汗腺が発達してない動物では、唾液で体温調節を行っているようです。犬が暑い時は涎だらけになっているのも体温調節のためということらしいです。

「唾液(だえき、saliva)は、唾液腺から口腔内に分泌される分泌液である。水、電解質、粘液、多くの種類の酵素からなる。ヒトでは、正常なら1日に1-1.5リットル程度(安静時唾液で700-800ミリリットル程度)分泌される。成分の99.5%が水分であり、無機質と有機質が残りの約半分ずつを占める。
 デンプンをマルトース(麦芽糖)へと分解するアミラーゼを含む消化液として知られる他、口腔粘膜の保護や洗浄、殺菌、抗菌、排泄などの作用を行う。
また緩衝液としてpHが急激に低下しないように働くことで、う蝕(虫歯)の予防も行っている。
…イヌなどの汗腺の少ない、もしくは他の汗腺を持たない動物(鳥や爬虫類など)では、汗腺を持つ動物が汗で体温調節を行うのと同様に唾液で体温調節を行っている。(汗腺を持つ動物でもこの作用は持つ。)
 牛は1日に約100リットルもの唾液を分泌する。」

「抗菌
リゾチーム、ペルオキシダーゼ、免疫グロブリン、ラクトフェリンなどを含む唾液は、口内に侵入した細菌の活動を抑えています。自浄作用とともに細菌の繁殖を阻害する重要なはたらきです。」
(免疫グロブリンは抗体(獲得免疫)です)

「リゾチーム(英語名: Lysozyme、別名: ムラミダーゼ)とは、糖質加水分解酵素ファミリー22に分類される酵素であり、真正細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンを加水分解する機能を持つ。具体的には、ペプチドグリカンを構成するN-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンとの間に形成されるβ-(1→4)グリコシド結合を加水分解する。
…食品添加物としては日持ちを向上させるために用いられる。特にグリシンと併用したり有機酸によりpHを調整することで効果が高まることから、卵白リゾチーム-グリシン-有機酸を組み合わせた製剤の形で食品メーカー向けに流通している。 
…塩化リゾチーム(リゾチーム塩酸塩)は、グリコサミノグリカンを分解する作用があるとして日本でも医薬品として主に風邪薬、副鼻腔炎向けなどに広く用いられていたが、有効性が確認できないとして製造販売を行っていた各社は、2016年3月販売中止と回収を発表した。 」

「ペルオキシダーゼ は、ペルオキシド構造を酸化的に切断して2つのヒドロキシル基に分解する酵素である。
…ミトコンドリアの電子伝達系では、スーパーオキシドアニオン(O2-)などの活性酸素種が常に発生している。活性酸素は生体分子を破壊し有害であるため、防御機構が存在する。スーパーオキシドアニオンは、まずスーパーオキシドディスムターゼ(SOD) によって過酸化水素に変換され、ペルオキシダーゼによって無害な水に分解される。
 機構の詳細は分かっていないが、ペルオキシダーゼは植物の感染防御に関与している。
 グルタチオンペルオキシダーゼはセレノシステインを含む酵素である。グルタチオンを電子供与体として用い、過酸化水素だけでなく有機過酸化物にも作用し、酸化ストレスから生体を守っている。」

「ラクトフェリン(別名:ラクトトランスフェリン)は、母乳・涙・汗・唾液などの外分泌液中に含まれる鉄結合性の糖タンパク質である。
…ラクトフェリンは、強力な抗菌活性を持つことが知られている。グラム陽性・グラム陰性に関係なく多くの細菌は、生育に鉄が必要である。トランスフェリンと同様、ラクトフェリンは鉄を奪い去ることで、細菌の増殖を抑制する。
…この鉄依存性のメカニズムとは別に、ラクトフェリンはグラム陰性菌の細胞膜の主要な構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)と結合することで、細胞膜構造を脆弱化し、抗菌活性を示す 。また、ラクトフェリンは緑膿菌によるバイオフィルムの形成を阻害する。ラクトフェリンをペプシンで分解した部分ペプチドであるラクトフェリシンは、細菌の細胞壁に傷害を与えることで、ラクトフェリンよりも10倍以上強力な抗菌活性を示す。 母乳の中でも、とりわけ出産後数日間に分泌される初乳にはラクトフェリンが多く含まれている。授乳により免疫グロブリンやラクトペルオキシダーゼなどと共に、母体からラクトフェリンが新生児に取り込まれる。ラクトフェリンはこれらの因子と共同で、免疫系が未熟な新生児を外敵から防御していると考えられる。
…ラクトフェリンはC型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープに結合することで、標的細胞への浸入を阻害する。」

(2)抗菌ペプチド
 抗菌ペプチドとは、十から数十個のアミノ酸からなるタンパク質(アミノ酸の数が少ないものをペプチドという)であり、あらゆる生物が持っている生体防御の物質です。
 1987年にアフリカツメガエルの粘膜から発見されてから、今まで約3000種類(動物起源が2248種類、植物起源が344種類,微生物起源が366種類)の抗菌ペプチドが見つかっているようです。
 抗菌ペプチドは主に細胞壁(細菌にはあり、動物にはない(細胞膜しかない))を直接攻撃することで殺菌するようです。抗菌ペプチドは抗生物質のように耐性菌を作り難いので、抗生物質に代わる抗菌薬としても注目されています。
 また抗菌ペプチドは免疫調整剤の機能もあることが分かっているようです。未だにどのような機能があるのかは分からないようです(研究中)のようです。
 なお抗菌薬のうち細菌(バクテリア)が産出する抗菌物資(他の細菌を攻撃する武器)を特に抗生物質といいます。ヒトは細菌同士が戦う武器(抗生物質)を借用して医薬品として利用しています。そのため世界中の土壌に生息してる細菌を探しまくっているようです。
  
「抗菌ペプチドとは、名前から想像できるように「菌に抗(あらが)うペプチド」のことを指します。抗菌ペプチドは、タンパク質の最小単位であるアミノ酸が約十~数十個連なって形成されており、我々ヒトを含めた哺乳類や植物、昆虫などあらゆる多細胞生物に菌と戦うための生体防御の機能として備わっている物質です。ペニシリンに代表される抗生物質が菌のDNA合成を阻害したり、タンパク質の生成を阻害したりするのに対し、抗菌ペプチドは菌の細胞膜を直接攻撃することで殺菌作用を発揮します。その作用は、抗生物質のような耐性菌を生み出しにくいことから、有用性が着目されています。
 ヒトでは、外部と接触する皮膚や口腔、消化器、泌尿器など、ありとあらゆる部位で抗菌ペプチドが産生されており、菌の増殖を抑制することで生体と菌との共生関係の維持に大いに関係しています。抗菌ペプチドの減少や欠如が疾患と関係する事例もあることから、抗菌ペプチドが生体防御にとっていかに重要であるかがわかります。 」

「The Antimicrobial Peptide Database(http://aps.unmc.edu/AP/)には,2018年12月現在で約3,000種類の抗菌ペプチドが登録されている.これらの抗菌ペプチドは,動物起源が2,248種類,植物起源が344種類,微生物起源が366種類(バクテリオシンを含む),およびその他となっている.また,これらの抗菌ペプチドが有する抗酸化,プロテアーゼ阻害,抗炎症,創傷治癒促進(血管新生,細胞遊走,細胞増殖が促進されて傷がはやく治癒すること)などの生理活性も,このデータベースを用いて検索することができる.すなわち,多くの抗菌ペプチドは,複数の生理活性を兼ね備えていることが明らかになっている. 
…1987年にアフリカツメガエルの粘膜からmagainin 2が発見され,1996年にアジアヒキガエルの胃組織からbuforin 2が見いだされた.前者は細胞膜破壊型の作用機序を有する抗菌ペプチドであり,後者は細胞膜通過型の抗菌ペプチドである.その後,多くの生物から抗菌ペプチドが発見され,それらの構造と機能が解析された.抗菌ペプチドは,それらの構造から,主にβ-sheet, α-helical, loop,およびextendedの4種類のタイプに分類され,その多くは分子中に塩基性アミノ酸(アルギニン,リジン)を多く含んでおり,負に帯電した細胞膜と静電的相互作用によって結合する.これらの抗菌ペプチドは,細胞膜の損傷・破壊作用によって殺菌効果を示す場合とタンパク質合成システムや特定の酵素などを阻害することによって殺菌効果を示す場合が報告されているが,特に後者の場合の作用機序は未解明な部分が多い.」 

「かつて、カエルの皮膚の切開手術をしていた科学者がいました。彼は、傷口に特別な処置をしないままカエルを飼育水中に戻しても、元気に生き続けることを経験的に知っていました(筆者も同じ頃、同じことに気付いていました)。ある時、その科学者はこのことを不思議に思い、ひょっとしたらカエルの皮膚には細菌の感染を抑制する物質が存在するのではないかという考えを持ちました(筆者も同じことを思いました)。そして彼は、ゼノパスの皮膚からMagaininという抗菌性を有する物質を、ペプチドとして単離することに成功しました。抗菌活性を有するペプチドが初めて単離された瞬間でした。
…抗菌ペプチドの発見が何ゆえエキサイティングであるかというと、抗菌活性がペプチドの構造に由来するものであり、広い範囲の微生物に作用する点にあります。これが、ピンポイントで効く抗生物質と大きく異なる点です。私たち哺乳動物は異物の侵入に対し働く免疫系がよく発達していますが、カエルではあまり発達していません。まして我々と同じような免疫系をもたない生物もたくさんいます。このような生物では我が身を守る手段として、抗菌ペプチドが重要な役割を果たしています。
 平たくいうと、抗菌ペプチドはカエルの体外に分泌されるとバネのようならせん状構造になり、またプラスの電荷を帯びます。ターゲットである微生物の細胞膜はマイナスに荷電しているので、両者は引き合います。加えて、これらのペプチドやタンパク質中に見られるらせん構造は、細胞膜中の脂質と馴染み、膜を突き抜け易い、という化学的な性質があるので、その結果、抗菌ペプチドが大量に集積した部分では、微生物の細胞膜に穴があく、というわけです。 」

「抗微生物ペプチド(こうびせいぶつペプチド;宿主防御ペプチド[しゅくしゅぼうぎょペプチド]とも呼ばれる)は、進化的に保存された自然免疫反応の1種として機能するペプチドの総称であり、あらゆる種類の生命で認められる。
 原核生物と真核生物の細胞には基本的な違いがあり、それは抗微生物ペプチドの標的の違いを表しているのかもしれない。これらのペプチドは薬効を持ち、広いスペクトルをもつ抗生物質であり、新規治療薬としての可能性を示している。抗微生物ペプチドはグラム陰性およびグラム陽性細菌(通常の抗生物質に耐性のある種を含む)、マイコバクテリウム属 (結核菌を含む)、エンベロープを持つウイルス、真菌、および濃度によっては哺乳類細胞でさえ殺すことが示されている。通常の抗生物質の多くとは異なり、抗微生物ペプチドは 免疫調節薬として機能することで免疫力を高めることができるようにみえる。


「抗微生物タンパク質は,早くから抗菌剤としての利用が見込まれ,その利用に関する研究も進められてきた.ことに薬剤耐性菌対策は喫緊の課題である.WHOによれば,現在薬剤耐性細菌の感染症により年間70万人が死亡しており,今後有効な抗菌剤が開発されなければ2050年には死者が年間1000万人に増加すると予想されている.抗微生物タンパク質は既存の抗生物質とは異なる作用機構をもち,薬剤耐性菌に対しても効果を示すことが多く,抗微生物タンパク質に対する耐性菌は生じにくいと考えられている.また,多くの抗微生物タンパク質がLPS中和によるTNF-α発現の抑制,種々の免疫細胞の走化,活性化,関連遺伝子の活性化などの免疫調整作用をもち,感染抑制や創傷治癒を促進する機能をもつことも大きなメリットと考えられる.また,バイオフィルム形成阻害活性や,一部のがん細胞に対する選択的な効果も見られる.このため,抗微生物タンパク質をリード化合物とした新規薬剤開発に期待が集まっている.オリジナルの抗微生物タンパク質を改変し,抗原性を減らすための低分子化や,活性や安定性を強化するための構造変換が行われ,これまでに多くの抗微生物ペプチドが臨床試験に進んでおり,実用化に向けた研究が続けられている. 」
 
「抗生物質(こうせいぶっしつ、英語: antibiotic)は、微生物が産生する、他の微生物や細胞に作用してその発育などを抑制する作用を持つ物質のことである。これまでに200種類以上の抗生物質が細菌感染症の治療と予防に広く使用されている。また、抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤の総称として抗生剤と呼ばれることもある。抗生物質は細菌に対して作用する抗菌薬として使用されるのみならず、真菌や寄生虫、腫瘍に対して用いられることもある。
…抗生物質を合成の観点から捉えると、抗生物質は放線菌などの微生物が、生存に必須な一次代謝産物を基に合成する二次代謝産物である。これまでに臨床的に使用されてきた抗生物質の約60%は放線菌に由来し、抗生物質は土壌から抗生物質を産生する放線菌のような微生物を分離することで発見されてきた。ほとんどの抗生物質は化学的に合成することが困難な構造を持つため、その生産は発酵によって成し遂げられる。また、発酵により産生した抗生物質はさらに化学的な修飾を加えることで、半合成の抗生物質として用いられることもある。このように生産された抗生物質はヒトの医療用途で治療・予防に使用されるほか、動物や植物に対して使用されることもある。
…1928年9月3日のフレミングによるペニシリンの発見は一つの失敗を機に成されたものであり、セレンディピティとしても知られる。フレミングは休日を終えて当時の職場であるセント・メアリーズ病院に出勤し、実験台で培養していたペトリ皿のブドウ球菌にカビがコンタミしていることに気づく。この時、フレミングはコンタミしたカビが周囲の細菌の増殖を抑制している様子を観察し、この増殖抑制がアオカビの産生する物質によるものであることと、その物質をペニシリンと名付けたことを論文として投稿した。その後オックスフォード大学のハワード・フローリーとエルンスト・ボリス・チェーンらの研究により大量生産が可能になると、フローリーらはペニシリンの臨床試験を1941年から1942年にかけて実施する。この臨床試験でペニシリンは何ら副作用を示さずに絶大な効果を発揮した。 
…抗生物質の分類は、化学構造からの分類と作用による分類の2つがある。前者は新しい抗生物質の分類ができず、後者では作用機序が厳密に調べられていない抗生物質が分類できないことがある。従って両者を考慮した分類が理想的とされる。
 化学構造からの分類では、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ペプチド系、核酸系、ポリエン系などに大別されるが、さらに細かくペニシリン系、セフェム系、モノバクタム系を加える場合もある。
 作用からの分類では、抗細菌性、抗カビ(真菌)性、抗腫瘍性などに分けられる。用途を重視する場合は、医療用、動物用、農業用などで分類される。作用域から、広範囲・狭域で区分される事もある。作用機序から、細胞壁作用性などの呼称もある。
…細菌に対する作用機序による抗菌薬の分類の一例としては、細胞壁合成阻害薬、タンパク質合成阻害薬、核酸合成阻害薬の3つに大きく分けるものがある。また、葉酸代謝阻害薬を加えて4つに分類することもある。



 
【1928年にフレミングが青カビの培養液から、その周囲の雑菌の生育を強く阻害する物質を発見してから、1938年にその成分(ペニシリン)が取り出されるのに成功し、1941年にペニシリンの感染症への治療実験が始められ、驚異的な成功が収められました。
 しかし、その後にペニシリンに対する耐性菌が現れ、ヒトが新たにその耐性菌を殺菌する抗生物質を開発(新たに発見)しても、すぐに新たな抗生物質にも耐性菌ができてしまうといういたちごっこが起きています。細菌対ヒトの戦いは続いており、耐性菌の問題は喫緊の課題となっています。】





 








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免疫(2)自然免疫 物理バリア ケラチン、クチクラ、粘膜など

2023-07-30 14:37:05 | 免疫
自然免疫の仕組み
1.物理バリア
(1)角質(硬タンパク質、ケラチン)
 脊椎動物(両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の外表面は、細胞骨格の材料であるタンパク質のケラチンが蓄積・死滅(角質化)して、強靭な物理的バリアとなっています。鳥の嘴や魚の鱗、牛の角などもこの角質化による硬質ケラチンでできています。
 角質化したケラチン(硬質ケラチン)は、水など多くの中性溶媒に不溶であり、またタンパク質分解酵素の作用も受けにくいようです。その強靭性は、ケラチンのアミノ酸にシスチンの含有量が高いため、そのジスルフィド結合(S-S結合)による網目状の結合によるものです。髪の毛や爪を燃やした時に、腐卵臭がしますが、それはシスチンの成分の硫黄のためのようです。

「角質(かくしつ)とは、硬タンパク質の一種であるケラチンの別称。皮膚バリア機能を担う角質からなる構造は、角層、または角質層、または角質細胞層と呼ばれる。
 ケラチン自体は上皮細胞の中間径フィラメントを構成するタンパク質であるため、動物の外胚葉、内胚葉を問わず上皮細胞に普遍的に見られる。脊椎動物の四足類、つまり両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類では表皮細胞が内部にこれを蓄積して死滅し、角質化という現象を引き起こすことで、強靭な集合体を形成する。これらの動物では皮膚の表皮の角質化が特に著しくなって形成された強固な器官を持つことが多い。たとえば鳥類やカメなどのくちばし、爬虫類や魚類などの表皮由来の鱗、哺乳類の角の中でもウシ科にみられるような洞角の角鞘の部分や、サイの角の全体は角質からなる。
 皮膚の特に表皮は皮膚バリア機能を果たしており、特に表皮がバリアとなり、表皮の最も外側では角質細胞層(角質層、角層とも)を強く構成している。角質層は、レンガに例えられる角質細胞と、セメントに例えられる細胞間脂質でできた壁のようなものでラメラ構造となっており、皮膚バリア機能は角質層の完全性によって保たれている。」

「ケラチン(独、英: Keratin)とは、細胞骨格を構成するタンパク質の一つ。細胞骨格には太い方から順に、微小管、中間径フィラメント、アクチンフィラメントと3種類あるが、このうち、上皮細胞の中間径フィラメントを構成するタンパク質がケラチンである。
 毛、爪等のほか、洞角、爬虫類や鳥類の鱗、嘴などといった角質組織において、上皮細胞は硬質ケラチンと呼ばれる特殊なケラチンから成る中間径繊維で満たされて死に、硬化する。硬質ケラチンは水をはじめとして多くの中性溶媒に不溶で、タンパク質分解酵素の作用も受けにくい性質を持っている。これは、ケラチンの特徴であるシスチン含有量の高い(羊毛で約11%)アミノ酸組成に起因している。ペプチド鎖(多数のアミノ酸が鎖状に結合したケラチンの主構造)はシスチンに由来する多くのジスルフィド結合(S-S結合)で網目状に結ばれている。なお、髪の毛や爪を燃やした際、不快な臭いが発生するのはこの硫黄分に起因する。
 粘膜などの角質化しない上皮細胞においてもケラチンは中間径繊維の構成タンパク質として重要な役割を果たしており、上皮組織のシート状構造はケラチン繊維によって機械的強度を保っている。」

「中間径フィラメント(ちゅうかんけいフィラメント、英: intermediate filament)は、細胞骨格を構成するフィラメントの一つであり、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの中間の太さ(約10nm)であることからこの名がついた。引っ張りに強く細胞に構造強度を与える。デスモソームを介して他の細胞との結合を形成し、組織強度を高めている。ほかに核膜の補強として核を囲む糞状の構造(核ラミナ)をなしている。細胞骨格の3つのフィラメントの中で最も丈夫で溶けにくい繊維である。
 中間径フィラメントには、ケラチンフィラメント、ニューロフィラメント、デスミン、ビメンチン、神経膠細線維性酸性蛋白質(GFAP)などがあり、細胞の種類によって、どの中間径フィラメントを持つかが決まっている(=細胞特異性がある)。」

(2)クチクラ、キチン
 植物の葉や甲虫の外骨格、卵の殻の表面(ザラザラした部分)、哺乳類の毛の表面などには、クチクラという「ワックス」や「クチン(ポリエステルのような高分子)」、「キチン質(多糖類)」で構成された膜があり、物理的バリアになっています。
 なおスーパーで売っている卵はお湯で殺菌洗浄しているので、クチクラ層が剥がれてツルツルになっています。
 キチン質(多糖類)は、節足動物や甲殻類の外骨格(外皮)・軟体動物の殻皮を覆うクチクラや、真菌類(カビ・キノコなど)の細胞壁などの主成分です。

「クチクラ(ラテン語: Cuticula)は、表皮を構成する細胞がその外側に分泌することで生じる、丈夫な膜である。さまざまな生物において、体表を保護する役割を果たしている。人間を含む哺乳類の毛の表面にも存在する。英語でキューティクル(Cuticle)、日本語で角皮ともいう。
 昆虫(特に甲虫)をはじめとする節足動物の場合、クチクラは外骨格を構成するうえ、軟体動物の殻や卵の表面を覆うザラザラした生体物質である。甲殻類ではキチン質という多糖類が主成分で蝋なども含有されている。
植物においては、表皮の外側を覆う透明な膜で、蝋を主成分とする。特に乾燥地や海岸の植物の葉ではよく発達する。また、いわゆる照葉樹林というのは、それを構成する樹木の葉でクチクラ層が発達し、表面が照って見えることに由来する。」

「クチン (Cutin) は、植物の地上部分の表面全てを覆う蝋であるクチクラを構成する主な2種類のポリマーのうちの1つである。もう1つはクタンであり、より化石としての保存性が良い。クチンはオメガヒドロキシ酸とその誘導体から構成され、それらはエステル結合で中間サイズのポリエステルポリマーを形成している。 」

「ワックスエステル(Wax ester)とは、蝋(ワックス)の化学的な表記。
炭素数10から12以上の長鎖脂肪酸と、同じく8以上の脂肪族アルコールがエステル結合した、長い鎖状の分子構造を持つ。
 栄養学的な脂肪、つまり長鎖脂肪酸が3価アルコールのグリセリンにエステル結合したトリアシルグリセロールと異なり、ヒトは消化できず油脂瀉下を引き起こすことがある一方、皮脂腺で作られる脂質の主成分でもある。」

「キチン (chitin) は直鎖型の含窒素多糖高分子で、ムコ多糖の一種。ポリ-β1-4-N-アセチルグルコサミンのこと。語源は古代ギリシアの衣服であったキトン(chiton)に由来し、「包むもの」を意味する。
 節足動物や甲殻類の外骨格すなわち外皮、軟体動物の殻皮の表面といった多くの無脊椎動物の体表を覆うクチクラや、カビ・キノコなど真菌類の細胞壁などの主成分である。
 このように天然物であるキチンはN-アセチルグルコサミンだけでなく、グルコサミンをも構成成分とする多糖であり、N-アセチルグルコサミンとグルコサミンの比はおよそ9:1といわれている。キチンは天然物であるが故に、その比は由来によって大きく異なるものと考えられるが、N-アセチルグルコサミンだけで構成されるキチンは存在しないと考えられる。」

「N-アセチルグルコサミン(N-アセチル-D-グルコサミン、GlcNAc、NAG)は、グルコースの2位ヒドロキシル基がアセチルアミノ基に置換された単糖である。化学的にはグルコサミンの2位アミノ基をアセチル化することで容易に調製できる。いくつかの生化学的機構にとって重要な物質である。
 GlcNAcは細菌の細胞壁の生体高分子の一部を構成している。そこではGlcNAcとN-アセチルムラミン酸 (MurNAc) が交互ユニットを形成しており、MurNAcの乳酸残基にテトラペプチドが結合している。この層をなしている構造はペプチドグリカンと呼ばれている。
 GlcNAcは、昆虫、甲殻類、線虫など脱皮動物の外被の基質を構成しているキチン質のモノマーでもある。 」

「グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)は、長鎖の通常枝分れがみられない多糖。動物の結合組織を中心にあらゆる組織に普遍的に存在する。狭義のムコ多糖。GAGと略される。 」


 
「植物葉の再外層は角皮(クチクラ)とよばれ、クチンやワックスなどの疎水性物質で覆われています…病原菌が懸濁された水滴は付着しにくいのです。」

京都大学 植物の葉のクチクラの構造を分子レベルで解明
「陸生植物の葉や茎の表皮は,クチクラ(cuticle)と呼ばれる脂質膜で覆われています。クチクラは, 植物を雨や乾燥,紫外線,病原菌や害虫から守る役割を果たすことで知られています。さらにクチクラは,植物が成長する際には組織同士が結合してしまうことを防ぐ潤滑剤としても働き,植物が生き ていくうえで欠かせない多機能な薄膜です。 これまでの研究によって,クチクラは「炭化水素のワックス」や「クチン」と呼ばれるポリエステ ルのような高分子,「多糖類」などで構成されていることが知られています。一方,クチクラはこれら 有機物が均一に混ざったものではなく,葉の表面からの深さによって構成物質が異なります。クチクラの内部( 表皮の細胞壁近く)は「クチクラレイヤー(cuticle layer)」と呼ばれ,多糖類に富むことが 知られています 図 1 左)。クチクラの外部 (表面近傍)は「クチクラプロパー(cuticle proper)」と呼ばれ,主にワックスとクチンで構成され,多糖類は存在しないと考えられてきました。クチクラプ ロパーよりさらに上部「 葉の最表面)には「クチクラ外ワックス(epicuticular wax)」と呼ばれるワックスの層があります。 クチクラの構造については未だ不明な点も多く,特に「「クチクラの外部に多糖類が存在するかどうか?」は論争が続いてきました。またクチクラに限らず,電池や医療材料などに用いられている有機 薄膜がもつ機能の起源は,薄膜内での分子の並び方( 分子配列)や,分子の向き(分子配向)に由来します。

本研究成果は,2019 年 4 月 24 日「 水)公開の Plant and CellPhysiology 誌に掲載されまし た。  

…偏光変調赤外反射吸収分光法を用いて,ヤセイカンランの葉のクチクラの赤外スペクトルを測定し たところ,キシランやキシログルカンといった多糖類(ヘミセルロース)に由来するピークが検出さ れました 。この結果は,これまで「クチクラの外部には多糖類は存在しない」という従来のクチクラの構造モデルの常識を覆すものです。さらに全反射減衰赤外分光法の結果から,クチクラ内部には別の種類の多糖類(ペクチン)が豊富に存在することが明らかとなり,「ヤセイカンランのクチクラ外部と内部とでは,存在する多糖類の種類が異なる」ことがわかりました 。 また、偏光変調赤外反射吸収分光法によって得られたスペクトルのピーク位置( 波数)やピークの 向き(上向き/下向き)を詳細に解析することで,クチクラ外ワックスの炭素鎖は規則正しい配列をしており( 結晶)、葉の表面に対して垂直に配向している(炭素鎖は葉の表面で立っている)など,クチクラの分子の配列・配向を分子の官能基レベルで世界で初めて明らかにしました (図 3,4)。
(引用終わり)」

(3)粘膜(気道や腸管など)目の表面を覆う涙など
 気道や腸管などの上皮層の粘膜や目の表面の涙も物理的バリアです。
 粘膜から分泌される粘液の成分は、一般的にムチンと言われる「糖タンパク質」と、糖類、無機塩類などからなります。分子量の大きなタンパク質を含む粘液では高分子ゲルの性質もあり、粘性が高いだけでなく弾性も持ち併せています。
 涙の成分はほとんどが水分で、残りはタンパク質(アルブミンやグロブリン、リゾチームなど)、リン酸塩などです。涙はまばたきによって目の表面に広げられ、目の表面を保護し、抗原物質や異物を洗い流したり、雑菌を抑制する働きがあります。また涙は抗菌成分のリゾチームにより化学バリアにもなっています。

「粘膜(ねんまく、mucous membrane)は、上皮細胞に覆われた外胚葉由来の上皮層である。吸収と分泌に関わる。さまざまな体腔に配置し、外部環境や内部臓器に面している。鼻孔、唇、耳、生殖器、肛門などあちこちで肌とつながる。
 粘膜や腺から分泌された濃い粘性の流体が粘液である。粘膜は体内において見られた場所を指し、全ての粘膜が粘液を分泌するわけではない。その表面がいつも粘液性の分泌物で濡れている柔性膜を称するときに限り、「粘膜」という呼称を用いる。位置的には中空性臓器の内腔表面に多い。粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板より構成される。」

「粘液(ねんえき、英語: mucus)とは、生物が産生し体内外に分泌する粘性の高い液体である。
 粘液を産生する細胞は粘液細胞、粘液を分泌する腺は粘液腺と呼ばれ、ほとんどあらゆる多細胞生物に存在する。単細胞生物でも粘液を分泌するものは多い。さらに細菌の莢膜物質を粘液と考える場合もある。
 粘液の成分は生物によって、また粘液細胞の種類によってさまざまであるが、一般的にはムチンと総称される糖タンパク質と、糖類、無機塩類などからなる。分子量の大きなタンパク質などを含む粘液は高分子ゲルとしての要素を備え、粘性が高いだけでなく弾性(ヌルヌル、あるいはネバネバした感じ)をも持ち併せる。
 脊椎動物の場合、消化管の内壁などに常時粘液に被われた表面があり、それらを粘膜と呼んでいる。」

「ムチンは動物由来の高分子糖タンパク質で,消化管・気道の粘膜上皮や唾液腺などで産生される粘液の主成分である。ムチンは分泌型と膜結合型に分類され,物理的バリアとしての粘膜保護や潤滑作用に加え,膜結合型では細胞質内への情報伝達機能にも関与している。ムチンのコアタンパク質をコードする遺伝子はMUCと表記され,現在ヒトでは20数種が見出されている。ムチンのコアタンパク質は,プロリン(>5%),スレオニン/セリン(>25%)に富んだタンデム反復構造を特徴とし,セリンあるいはスレオニンの水酸基にN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を起点としてガラクトース,N-アセチルグルコサミン(GlcNAc),フコース,シアル酸などから構成されるO-結合型糖鎖が高密度に付加されている。糖鎖末端には硫酸基が付加される場合もある。ムチン糖鎖は化学的性質から,糖鎖末端にシアル酸や硫酸化糖を配し負の電荷を有する酸性ムチンとフコースを配した中性ムチンに分類される。いずれにせよ,糖鎖は多いものではムチン分子量の80%に達しムチンの親水性を高めている。 
 ヒト消化管には約15種類のムチンが発現しており,これらのうち,分泌型ムチンはMUC2(小腸,大腸),MUC5AC(胃,大腸),MUC5B(唾液),MUC6(胃,大腸),MUC7(唾液)の5種で,いずれも杯細胞から放出され,MUC7を除き粘膜表面で粘液層を形成する。一方,膜結合型ムチンは消化管上皮細胞の頂端側に発現し,グリコカリックス(糖衣)を形成している。腸の主要ムチンであるMUC2は,杯細胞の小胞体で二量体(C末端のジスルフイド結合)を形成し,ゴルジ装置で糖鎖が付加された後,N末端のシステイン残基のジスルフイド結合により三量体を形成する。これらはムチン顆粒として細胞内に蓄えられ,開口分泌によって細胞外に放出される。MUC2は単量体でも約2.5 MDaの質量を持つ巨大分子で,細胞外では水和により100-1000倍の体積に膨潤して粘液層を形成する。この粘液層は,極度な物理的刺激や食事に伴う消化酵素・胆汁酸による化学的損傷から腸上皮を保護すると同時に,細菌・外来抗原に対する宿主防衛の最前線でもあり,物理的バリアのみならず,イムノグロブリンAやパネート細胞(小腸のみ)から放出される抗菌ペプチドの貯留槽となり,免疫的および化学的バリアとしても機能している。 」

「涙は、涙腺内の毛細血管から得た血液から血球を除き、液体成分のみを取り出したものである。通常の分泌量は1日平均2-3cc。涙の98%は水分で、タンパク質(アルブミンやグロブリン、後述のリゾチームなど)、リン酸塩なども含有する。一般的に弱いアルカリ性の液体である。
 分泌された涙液は目の表面を通過したあと涙点に入り、涙小管・涙嚢・鼻を経て、喉から再吸収される。ヒトの場合、量が多いと頬などに溢れ出て「涙を流す」「泣いている」と呼ばれる状態になる。
 涙はまばたきによって目の表面に広げられ、目の表面を保護するとともに抗原物質や異物を洗い流したり、雑菌を抑制する働きがある。
 涙の持っている抗菌成分はリゾチームという。このリゾチームは、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)を分解する作用を持つ。 」







































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免疫(1)自然免疫と獲得免疫 生物進化との関係

2023-07-21 15:15:31 | 免疫
 免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」があります。
1.自然免疫
 「自然免疫」は植物・菌類・昆虫・原始的な多細胞生物が持っている古くからある防御システムで、「獲得免疫」と比べると原始的であるかのようにも言われています。
 しかし「自然免疫」は、様々な抗菌物質(抗微生物ペプチドなど)やRNA干渉なども用いて行われており、そのシステムは相当巧妙にできています。まだ解明(発見)されてない自然免疫システムもあるようで、現在まだ研究中のものも多いようです。
 例えば医薬品の抗菌薬として用いられている「抗生物質」は、元々は微生物が他の微生物などを抑制するために編み出した化学物質であり、それをヒトが偶然発見して、借用しているものです。
 ほとんどの生物は貪食細胞としてのマクロファージを持っていますが、特に脊椎動物では進化して様々な血液細胞(白血球など)になり、ヒトなどでは「自然免疫」の主要な防御システムとなっています。
 なお「自然免疫」での病原体の認識の仕方は、病原体に共通する構成部分(例えば細菌のべん毛の一般的なタンパク質配列の一部など)を探知するパターン認識によりよるものです。このパターン認識は遺伝子レベルで識別されているため、生まれながらにして持っているものです。ヒトでは白血球がこのパターン認識能力を持っていると考えられてきましたが、研究が進んだことにより、ほぼすべての身体中の細胞にこの能力が備わっているということが分かってきました。

2.獲得免疫
 一方「獲得免疫」を持っているのは、脊椎動物だけです。閉鎖血管系の脊椎動物では、マクロファージから進化したと考えられる血液細胞(白血球・赤血球・T細胞・B細胞など)が発達しています。
「獲得免疫(主役はT細胞やB細胞)」は病原体を(パターン認識ではなくて)個別具体的な特徴(新型コロナウイルスならそれが固有に持つ構成部分)により認識して、それを抗体やキラーT細胞が攻撃し、またその個別具体的な特徴を記憶(少数のコピー細胞を残存)することができます。
 T細胞やB細胞が無限のようにいる病原体の個別具体的な特徴を認識できるのは、乱数製造装置のような仕方で、自己遺伝子をランダムに改変することができるシステムがあるからです。そのため病原体・自己細胞や食物などすべての個別具体的な特徴に適合する認識記号を持つ細胞を予め作り出して待ち構えています。遺伝子には乱数製造システムそのものの設計はありますが、生まれた後にそのシステムが稼働して獲得免疫を作り出します。その後に胸腺などで、自己の細胞や食物などの特徴を持つ認識細胞(獲得免疫)は不要なため(自己免疫反応を起こしてしまうため)、細胞死に至らせ、未知の病原体だけに対する迎撃態勢を敷いています。ただし近年の研究で、自己免疫反応を起こす獲得免疫はすべて排除されるのではなく、結構残存してしまうことが分かったそうです。
 なお脊椎動物では「自然免疫」と「獲得免疫」の両方を持っていますが、それぞれの免疫システムは連携して働いています。

「赤血球や血小板、好中球、マクロファージ(食細胞)、リンパ球など、体内には様々な血液の細胞が存在しますが、その進化的起源については不明な部分が多く、マクロファージはほぼ全ての動物にも存在することから、「マクロファージが起源であろう」と漠然と推測されてきただけでした。本研究では、マウスから単細胞生物にまで渡る広範な生物種の遺伝子発現状態を包括的に比較し、血液細胞の起源がマクロファージであること、その遺伝学的特徴が単細胞生物から保存されていることを突き止めました。
 
 
…脊椎動物において、赤血球や T 細胞などの多様な血液細胞がいかにして出現したのかの解明に挑み ました。赤血球や、巨核球、T 細胞、B 細胞では、CEBPが発現すると、もとの状態を失ってマクロファージ へと転換してしまいます。したがって、これらの血液細胞では、CEBPは抑制され続けなければなりません。 どうやって CEBPが抑制されているのかをマウスを用いて調べたところ、赤血球や、巨核球、T 細胞、B 細胞 に共通して、ポリコーム複合体 が抑制していることが明らかとなりました。マウスの血液細胞で、ポリコ ーム複合体の構成蛋白である Ring1A と Ring1B を欠失させてポリコーム複合体の機能を失わせると、赤血球、 巨核球、T 細胞、B 細胞において CEBPの発現が上昇し、マクロファージへと転換してしまうことがわかり ました。 
(引用終わり)」


「…驚くべき事実は、これらの種々の病原体センサー分子が、じつは白血球だけでなく、身体中のほとんどの細胞が発現いているということでした。」

「抗生物質(こうせいぶっしつ、英語: antibiotic)は、微生物が産生する、他の微生物や細胞に作用してその発育などを抑制する作用を持つ物質のことである。これまでに200種類以上の抗生物質が細菌感染症の治療と予防に広く使用されている。また、抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤の総称として抗生剤と呼ばれることもある。抗生物質は細菌に対して作用する抗菌薬として使用されるのみならず、真菌や寄生虫、腫瘍に対して用いられることもある。
…抗生物質を合成の観点から捉えると、抗生物質は放線菌などの微生物が、生存に必須な一次代謝産物を基に合成する二次代謝産物である。これまでに臨床的に使用されてきた抗生物質の約60%は放線菌に由来し、抗生物質は土壌から抗生物質を産生する放線菌のような微生物を分離することで発見されてきた。ほとんどの抗生物質は化学的に合成することが困難な構造を持つため、その生産は発酵によって成し遂げられる。また、発酵により産生した抗生物質はさらに化学的な修飾を加えることで、半合成の抗生物質として用いられることもある。このように生産された抗生物質はヒトの医療用途で治療・予防に使用されるほか、動物や植物に対して使用されることもある。」


「抗微生物ペプチド(こうびせいぶつペプチド;宿主防御ペプチド[しゅくしゅぼうぎょペプチド]とも呼ばれる)は、進化的に保存された自然免疫反応の1種として機能するペプチドの総称であり、あらゆる種類の生命で認められる。原核生物と真核生物の細胞には基本的な違いがあり、それは抗微生物ペプチドの標的の違いを表しているのかもしれない。これらのペプチドは薬効を持ち、広いスペクトルをもつ抗生物質であり、新規治療薬としての可能性を示している。抗微生物ペプチドはグラム陰性およびグラム陽性細菌(通常の抗生物質に耐性のある種を含む)、マイコバクテリウム属 (結核菌を含む)、エンベロープを持つウイルス、真菌、および濃度によっては哺乳類細胞でさえ殺すことが示されている。通常の抗生物質の多くとは異なり、抗微生物ペプチドは 免疫調節薬として機能することで免疫力を高めることができるようにみえる。 」

「抗菌ペプチドとは、名前から想像できるように「菌に抗(あらが)うペプチド」のことを指します。抗菌ペプチドは、タンパク質の最小単位であるアミノ酸が約十~数十個連なって形成されており、我々ヒトを含めた哺乳類や植物、昆虫などあらゆる多細胞生物に菌と戦うための生体防御の機能として備わっている物質です。ペニシリンに代表される抗生物質が菌のDNA合成を阻害したり、タンパク質の生成を阻害したりするのに対し、抗菌ペプチドは菌の細胞膜を直接攻撃することで殺菌作用を発揮します。その作用は、抗生物質のような耐性菌を生み出しにくいことから、有用性が着目されています。
 ヒトでは、外部と接触する皮膚や口腔、消化器、泌尿器など、ありとあらゆる部位で抗菌ペプチドが産生されており、菌の増殖を抑制することで生体と菌との共生関係の維持に大いに関係しています。抗菌ペプチドの減少や欠如が疾患と関係する事例もあることから、抗菌ペプチドが生体防御にとっていかに重要であるかがわかります。 」

「かつて、カエルの皮膚の切開手術をしていた科学者がいました。彼は、傷口に特別な処置をしないままカエルを飼育水中に戻しても、元気に生き続けることを経験的に知っていました(筆者も同じ頃、同じことに気付いていました)。ある時、その科学者はこのことを不思議に思い、ひょっとしたらカエルの皮膚には細菌の感染を抑制する物質が存在するのではないかという考えを持ちました(筆者も同じことを思いました)。そして彼は、ゼノパスの皮膚からMagaininという抗菌性を有する物質を、ペプチドとして単離することに成功しました。抗菌活性を有するペプチドが初めて単離された瞬間でした。 
…抗菌ペプチドの発見が何ゆえエキサイティングであるかというと、抗菌活性がペプチドの構造に由来するものであり、広い範囲の微生物に作用する点にあります。これが、ピンポイントで効く抗生物質と大きく異なる点です。私たち哺乳動物は異物の侵入に対し働く免疫系がよく発達していますが、カエルではあまり発達していません。まして我々と同じような免疫系をもたない生物もたくさんいます。このような生物では我が身を守る手段として、抗菌ペプチドが重要な役割を果たしています。 
 平たくいうと、抗菌ペプチドはカエルの体外に分泌されるとバネのようならせん状構造になり、またプラスの電荷を帯びます。ターゲットである微生物の細胞膜はマイナスに荷電しているので、両者は引き合います。加えて、これらのペプチドやタンパク質中に見られるらせん構造は、細胞膜中の脂質と馴染み、膜を突き抜け易い、という化学的な性質があるので、その結果、抗菌ペプチドが大量に集積した部分では、微生物の細胞膜に穴があく、というわけです。 」


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