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モーツァルトの歌劇6:《フィガロの結婚》 K.492

2009年04月04日 | モーツァルト
ウィーンのブルク劇場で1786年5月1日、モーツァルトが30歳の時に初演。
ウィーンでは期待したほど人気を得られなかったものの、当時オーストリア領だったボヘミア(現在のチェコ)の首都プラハの歌劇場で大ヒットした。
原作は、ボーマルシェの喜劇三部作の第二部『フィガロの結婚、またはばかげた一日』(1784)。第一部は後年の1816年にロッシーニが作曲し、オペラ『セビリアの理髪師』になっている。
この戯曲のテーマはずばり、階級闘争で、召使いたちが機知を働かせて領主をやりこめるという風刺の効いた作品。初演の際には、ウィーンの権力者たちが上演禁止令を出して不快を露わにしたが、この窮地を救ったのは、モーツァルトのオペラをいくつも手掛けた台本作家のダ・ポンテだった。彼は、問題箇所を巧妙に削除しながら原作のもつ毒を残し、オペラ史上屈指の優れた台本を書き上げたのである。そして何よりも、モーツァルトの華麗な音楽が、登場人物たちの浅ましさや貪欲を、愛すべき人間性へと昇華させていったのである。



あらすじは、
18世紀末、スペイン・セビリャ近郊のアグアスフレスカス住むアンダルシアの大法官、アルマヴィーヴァ伯爵邸内での一日の出来事である。
結婚を控えたフィガロとスザンナ。だが、彼らの雇い主アルマヴィーヴァ伯爵は、こともあろうにスザンナを我がものにしようと企んでいる。一方、伯爵夫人ロジーナは夫が自分に目を向けてくれないことを嘆く日々。だが、伯爵は小姓のケルビーノが夫人の浮気相手ではないかと疑ったりも。また、かつて好きだったロジーナを伯爵に嫁がせたフィガロを未だに根に持っているバルトロが、スザンナとの結婚を妨害し、フィガロと彼に好感を持つマルチェリーナとを結婚させようとやってくる。ところが、ふとしたことがきっかけで、マルチェリーナとバルトロがフィガロの実の両親だったことがわかる 。
フィガロとスザンナの結婚式の夜。まだ諦めていない伯爵は、スザンナから逢瀬の手紙を受け取り、喜び勇んでやってくる。ようやく目的達成に近付いたと思いきや、フィガロと夫人(実はスザンナ)の密会を目撃し、激昂。しかし、スザンナの服を着た夫人が現れ許しを請うと、ようやくすべてを悟った伯爵は自らも夫人に謝り、大団円となる。

上演時間は約2時間50分



<私の好きなアリア>
第1幕第6曲アリア「自分で自分がわからない」(ケルビーノ)
   少年のうわずった激しい気分を良く表している、男役のメゾソプラノが歌うところがいい。
第1幕第8曲「若い娘たちよ、花をまけ」(合唱)
   フィガロと召使たちがやって来て伯爵に感謝の歌を歌う。
第1幕第9曲「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」(フィガロ)
   フィガロがケルビーノに兵隊さんの生活はつらいので、もう女性の間を飛び回ることは出来ないが、
   元気で士官しな、と皮肉に歌う有名なアリア。
第2幕第10曲「愛の神よ、照覧あれ」(伯爵夫人)
   夫の愛が遠のいたことを嘆くアリア。クラリネットの響きが感傷をさそう。
第2幕第11曲「恋とはどんなものかしら」(ケルビーノ)
   スザンナのギターに合わせて歌う有名な歌。
第3幕第19曲「楽しい思い出はどこへ」(伯爵夫人)
   「戴冠式ミサ」K.317のソプラノ・ソロ「アニュス・デイ」とそっくりの美しいメロディである。
第3幕第20曲二重唱「夕べの風がやわらかく」(スザンナ、伯爵夫人)
   手紙の二重唱として知られる。女声のハーモニーが美しい。
第4幕第27曲「とうとう嬉しいときが来た」(スザンナ)
   スザンナが幸福な愛のときを夢見て歌う、いわゆる「バラのアリア」として有名である。   

<この演奏を聴く> DVD
<決定盤>

指揮ジョン・エリオット・ガーディナー、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
演出ジャン・ルイ・タマン
伯爵(ロドニー・ギルフリー)、伯爵夫人(ヒルヴィー・マルティンペルト)、
スザンナ(アリソン・ハグリー)、フィガロ(ブリン・ターフェル)、ケルビーノ(パメラ・ヘレン・スティーヴン)
パリ・シャトレ座 1993年6月
影絵風の背景と、衝立で組み立てられた屋敷だけの簡素なセットであるがなかなか洒落ている。簡素な舞台が、簡明でキビキビした古楽の響きとよく融け合っている。特に大人の色気を醸し出しているスザンナ役のハグリーが理想的なスザンナを演じており、この舞台を引き立てている。大変素晴らしい舞台と演奏である。
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<歴史的名盤>

ジョン・プリッチャード指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
演出ピーター・ホール
伯爵(ベンジャミン・ラクソン),伯爵夫人(キリ・テ・カナワ)、スザンナ(イレアナ・コトルバシュ),フィガロ(クヌート・スクラム),ケルビーノ(フレデリカ・フォン・シュターデ)
グラインドボーン音楽祭 1973年収録。
本来の時代設定による演出で、伝統的な重厚さを感じる。
キリ・テ・カナワの伯爵夫人は気品があり風格が漂う。スザンナ役のコトルバシュは美しく魅力的だ。
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<その他>

ザルツブルグ音楽祭2006年のデータ
指揮ニコラウス・アーノンクール、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
演出クラウス・グート
伯爵(ボー・スコウフス),伯爵夫人(ドロテア・レシュマン)、スザンナ(アンナ・ネトレプコ),フィガロ(イルデブランド・ダルカンジェロ),ケルビーノ(クリスティーネ・シェーファー)
ザルツブルグ モーツアルト劇場 2006年7月22日-26日
モダンな舞台と黒っぽい衣装の演出が、どうもこのオペラにマッチしていない。
注目のネトレプコも色気が乏しい。天使の少年が出てくるのはアイデアだが。
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指揮ルネ・ヤーコプス、コンチェルト・ケルン  演出ジャン・ルイ・マーティノティ
伯爵(ピエトロ・スパニョーリ),伯爵夫人(アネット・ダッシュ)、スザンナ(ローズマリー・ジョシュア),フィガロ(ルーカ・ピサローニ),ケルビーノ(アンゲリカ・キルヒシュラーガー
シャンゼリゼ劇場(フランス) 2004年6月21日の公演のライブ
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指揮ニコラウス・アーノンクール、チューリッヒ歌劇場管弦楽団・合唱団
演出ユルゲン・フリム
伯爵(ロドニー・ギルフリー),伯爵夫人(エヴァ・メイ)、スザンナ(イザベル・レイ),フィガロ(カルロス・ショーソン),ケルビーノ(リリアーナ・ニキテアヌ)
チューリッヒ歌劇場 2002年収録
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ダニエル・バレンボイム指揮,ベルリン国立歌劇場管弦楽団・ベルリン国立歌劇場合唱団
トーマス・ラングホッフ演出
伯爵(ロマン・トレケル),伯爵夫人(エミリー・マギー), スザンナ(ドロテア・レシュマン),フィガロ(ルネ・パーペ), ケルビーノ(パトリシア・リスレー)
1999年6月9日 ベルリン公演
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