素晴らしいレースでしたね。隣村になる白馬村の渡部暁斗さんがノルディック複合ノーマルヒルで銀メダルです。今季のFISランキングが2位なので順当といえば順当ですが、ランキングの上位者が勝てないのが五輪。順当な結果ほど難しいものはないと言えます。
ノルディック複合の王者は、キング・オブ・スキーと呼ばれます。近代スキーの発祥の地は、ノルウェーのテレマーク地方。そうです、あの着地姿勢に名前を残していますね。モルゲダールに住むソンドレ・ノールハイムが生活の道具だったスキー板に、現在のようなサイドカーブを付け、ヒールをずらしにくくする締め具を開発しました。それまで平地を歩く道具だったスキーが斜面などの滑走性を高めて、テレマーク・ポジションと呼ばれるスタイルでのターンを生みました。
屋根に積もった雪を使ってジャンプを行う人も現れ、やがて、競技会に発展します。(刑罰が発祥というのは違います。刑罰にも使われたというのが適切な表現でしょう)
こういう踵が浮くスタイルのスキーをノルディック・スキーと言います。ジャンプという瞬発力を要するものと、クロスカントリースキーという持久力(運動量はマラソンを超えます)は両立しにくく、それゆえ、両方を高いレベルで戦うコンバインドは、まさにスキー王者を決めるものとしてその勝者へ大きな敬意が払われているのです。
20年前のリレハンメルのころは、まだ、ノーマルヒルレベルでしたが、荻原健司以来ジャンプのレベルアップが目覚ましく、今では、ラージヒルが当たり前になっています。そういう時代のメダルはいよいよ価値の高いものと言えるでしょう。
ちなみに、ノルウェーで始まったスキーはヨーロッパに広がり、アルプス地方でアルペンスキーに発展します。日本にスキーを伝えて組織的な指導を行った最初が、高田の金谷山ですが、そこでスキーを指導したのが、オーストリア・ハンガリー帝国の将校レルヒでした。そうですね。スキージャンプの若き五輪選手、清水礼留飛(れるひ)くんの名前はここからとられています。
レルヒは、オーストリアの人でしたが、その頃はまだその後のビンディングの大きな革新が熟成されておらずヒールフリーが可能でした。レルヒが最初に見せた滑走術も、テレマークポジションによるものでした。
この頃、スキー場でも、大きく膝を曲げて滑るテレマークスキーヤーを見かけますね。あれです。
スキー選手の活躍が、こうやってスキーの歴史をふりかえるきっかけになりました。スキーの楽しみが広がりつつありますが、もっともっといろいろな楽しみが気軽にできるようになるといいですね。