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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

テコラ誕生⑦

2018-05-26 04:13:15 | 風紋


「わかった。弓の作り方くらいなら、教えてやる」
「ほんと?」
ネオは目を見開いて、サリクを見た。
「狩人組に入りたいなら、弓の作り方は基本中の基本だからな。今から覚えておいて損はない。入れなくても弓作りで協力できる」
「うん、うん!」

ネオは飛びつくようにその話に乗った。

ネオがサリクに習って、弓作りを熱心に覚えている話は、アシメックの耳にも入った。大人の男になりたくて、うずうずしているらしい、と、ある日シュコックがおもしろそうに彼に話したのだ。

「狩人組には入れそうか」
アシメックも笑いながら言った。
「サリクに言われて、見てはみたんだがね、ないとは言い切れない。もう少ししたら体が伸びてくる。骨組みなんか見ると、それなりに大きくなりそうな感じはするよ」
「シュコックがそう予想するなら、見込みはあるんだろう」

アシメックは、ネオの姿を思い出しながら言った。確かに、まだ細いが、何かものになりそうな雰囲気はする。おもしろいやつだ、とアシメックは思った。何かになりそうな気がする。注意して見ていこう。将来的に、何かがあるかもしれない。

族長というものは、男というものを常に見ていなければならない。村を守り、何とかしていけそうないい男がいれば、子供の時から押さえておかねばならない。アシメックもまたそうだった。前の前の族長は、アシメックが十五になる前から、いずれこいつは族長になると思っていたらしい。そういうことを思わせる何かが、アシメックにはあったのだ。

族長は村を守らねばならない。村のみんなの幸せを、守らねばならない。




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