オラブは何も考えず、のっそりと立ち上がった。そしてのろのろと洞窟を出た。外に出ると、梢を透く光が明るい。風はなく、ひやりとした空気はもう冬がそばにきていることを教えている。
オラブはぼんやりと風景を見ていた。何かが、昨日と違っているような気がした。
アシメックが何も言ってくれなかったということが、まだ心の隅にひっかかっていた。
かん高い鳥の声が聞こえた。あれはキジの声だ。捕まえればうまいだろうが、すばしこくてオラブにはできない。彼はチエねずみの巣がありそうな木を探した。
何本かの木の皮をはいでみたが、ネズミは見つからない。腹が鳴った。なんでもいいから食いたいが、体があまり動かない。
「こっちにきて」
ふと、声が聞こえた。女の声だ。まさかと思いつつ、オラブは顔をあげた。少し離れたところの木の陰に、きれいな女がいる。
アロンダ?