寂しくなったオラブは自然に、右の腰につけているはずの、ネズミの頭蓋骨に手をやった。だがそれはそこにはなかった。いつも、お守りのようにヒモをつけて腰にぶら下げていたのだが、どこかで失くしてしまったらしい。
だれも友達はいないオラブにとっては、ネズミが友達のようなものだった。木の皮の中に住んでいるチエねずみは、かなりいい養分になった。山にはたくさんいるし、そんなに苦労なく簡単に捕ることができる。
村のやつらと付き合わなくても、生きていけるんだ。ネズミを食えば、それほど飢えないですむ。ネズミを食うなっていう話は、親から何度か聞かされたことがあったが、もうそんなことを守る気持ちは、子供の時に捨てていた。
歯向かって生きることが、楽なのだ。誰にも謝らずにすむ。嫌な奴に馬鹿にされずにすむ。おれはこれでいいんだ。
盗んだ栗を噛みながら、オラブは洞窟の中で漫然と過ごしていた。季節はだんだん冬に傾いていく。そろそろ寒くなる。モカドから盗んだ鹿皮を、彼は肩にかけた。この冬はこれが重宝するだろう。
もちろんオラブは、その頃アシメックがヤルスベに出向いて、自分が怪我をさせた女に、小さくなって謝っていることなど何も知らない。