おれは、あの女が見たかっただけなんだ。
昨日のことを思い出しながら、オラブは思った。アロンダを見かけたあの日から、彼はあの美女が忘れられなかったのだ。カシワナ族の女とはまるで違う。目も顔も髪も、姿もまるで違う。なんであんなにきれいなのか。もっとよく見てみたい。
そういう思いに取りつかれた彼は、あれから何度か川を泳ぎ、ヤルスベ側の岸を見に行った。首尾よくアロンダに出会えることもあった。だが、会えない時の方が多かった。
美しいものというのは、一体何なのだろう。おれは醜い。たまらなく醜いんだ。カシワナ族の女なんて、おれを見るだけでぞっとして逃げるんだ。いやなんだ、あんなやつら。ぶすばっかりなんだ。でも、あの女は、なんであんなにきれいなんだろう。カシワナ族とは全然違うし、変な格好してるのに、なんできれいに見えるんだろう。
オラブは、あの女の正体が知りたかったのだ。美しさの正体が知りたかったのだ。だけど女はいつも、オラブを見ると逃げるように消えていく。
女はおれを見ると、みんな逃げる。
オラブはひとりで腹をかきながら、思った。いつもひとりでいる彼は、自分と話をするように、そういう思いを自分の中に書く。