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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

信州の里山の奥深くにある海を超えて旅をする蝶・アサギマダラの楽園(妻女山里山通信)

2021-09-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 信州の里山の奥深くにあるアサギマダラの楽園を訪れました。自然保護の観点から場所は記せません。アサギマダラ(浅葱斑)は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶です。成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ海を渡って移動します。数千キロもの移動をするため、全国でマーキングをして調査をしています。アニメ『鬼滅の刃』にも登場して話題になりました。

 秋になると普通に全国の山で見られます。私の経験では、東京の高尾山、神奈川の陣場山、信州の烏帽子岳、米子大瀑布上の渓流、戸隠の自然園など。私がフォームフィールドとしている妻女山山系でも毎年見られます。

 アサギマダラと言われるのは翅の白い部分が浅葱色を帯びているからです。黒から茶色にかけてのコントラストが綺麗です。前翅の中程は半透明で透けて向こうの景色が見えます。この透明の程度は個体によってかなり異なります。1番目と4番めのカットを比べていただけるとよく分かると思います。非常に興味深いことです。フジバカマの群生地に百頭以上が乱舞していました。まさにここはアサギマダラのパラダイスです。
 この個体は、後翅下部に黒斑があるのでオスです。これは性標で、メスにはありません。オスはこの性標に性フェロモンを蓄えていて、尾部のヘアペンシルをここにこすりつけて、性フェロモンを移しとります。

 浅葱色というのは、薄い葱の色という意味で、日本の伝統色の名前です。翡翠色、江戸紫、群青色、銀鼠などは聞いたことがあると思いますが、瓶覗とか高麗納戸、甚三紅とかは聞いたことがないと思います。日本の伝統色にもっと興味を持っていただけると嬉しいです。
和色大辞典:これ以外に地方名もあります。何気なく使っている俗語もあります。古代の色名が変化したものも。色名は文化です。

 幼虫はガガイモ科のキジョラン、カモメヅル、イケマ、サクラランなどを食草とし、卵は食草の葉裏に産みつけられます。幼虫も成虫も体内に食草由来のアルカロイド系毒物質をもち捕食されるのを防いでいます。

 吸蜜に来ていたのはナミホシヒラタアブの様です。

 飛翔2500キロというのは、台湾や香港、中国本土まで飛ぶということです。そのせいでしょうか、激しく羽ばたくのではなく、上昇気流を上手に使ってしなやかに舞う姿が印象的です。





 松本出身の世界的芸術家、草間彌生さんの服を纏っているように見えるお洒落な蝶です。


 このアサギマダラの胴体なにか可怪しいですね。なんでしょうと調べましたが分かりません。で、もしやと思い「アサギマダラ 産卵シーン」で検索すると出てきました。これはメスで交尾を終えて卵を内包している個体です。フジバカマなどで吸蜜し、ガガイモ科キジョラン属の常緑のつる植物のキジョラン(鬼女蘭)に卵を産み付け、幼虫は越冬します。ただガガイモは信州の里山にもあるのですが、キジョランの北限は東京なので、これらのメスはまもなく南下して産卵するのでしょうか。6月に飛来したメスが長野県内で産卵しているのが確認されたそうですが。産み付けられた植物はおそらく新芽が山菜のイケマ(牛皮消)でしょう。その卵は夏には羽化して産卵し、その子供達が晩秋に南下するのでしょうか。まだまだ分かっていないことも多い様です。

 アサギマダラのサイトは非常に多いのですが、中でもこの2つのサイトは情報が豊富でよくまとまっていると思います。
白山の自然史36 白山のアサギマダラ:特に最後の「アサギマダラの生活史」は、まだ不明な点もあるものの、非常に興味深いものです。
驚異の飛翔2500キロ アサギマダラの神秘


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本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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