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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

天然舞茸を発見! しかし喜び三割、悲しみ七割。その訳は…。クリタケ、ハタケシメジ。高貴な小紫の実(妻女山里山通信)

2021-10-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 天然マイタケを求めてとある山奥に入りました。道無き森を、最低でも往復3時間は歩かないといけません。知っているシロを数カ所めぐるからです。今年はキノコ狩りでの遭難が非常に多いのですが、原因は知らないルートを歩くからです。闇雲に歩き回るのは危険ですし効率が悪いのです。無駄な体力も使います。ただ今回は、やや遅すぎるかなと思いました。しかし、10月下旬に採れたこともあるので入りました。

 最初のシロへ。ここ何年も出なかった場所ですがありました。乾き始めていてカビてもいますが、掃除すれば食べられます。栽培ものと違ってずっしり重く香りが強烈です。尾籠な話で申し訳無いのですが、天然マイタケを食べた翌朝の便はもの凄く舞茸の香りがするのです。美味しそうな匂いのうんちって、これだけでしょうね。

 幹を90度回ったところに少し小さな株がありました。これも食べられます。そして、周囲の樹を探しましたがありませんでした。更に遠いシロもあるのですが、今回は体力も考えてパス。

 獣道すらない急斜面の森を長い距離歩きます。ミンミンゼミの鳴き声は消えました。わずかにツクツクボウシの鳴き声が聞こえます。土中の芋虫を求めてイノシシが掘り返した跡があちこちにありました。ここにもツキノワグマは出没します。ただ生息地はさらに6キロほど山奥で、今年は栗やどんぐりが豊作なので、この時期は出てこないでしょう。来るのは冬ごもりに入る前のクリスマスの頃です。

 やっと次のシロに到着。ガッカリです。結構いいサイズの株なのに老菌です。こうなるともう食べられません。

 その上には二株が。これももう駄目ですね。

 そして、幹の下側に回ると。もう溶けかかった株が二つ。結構大きな株です。残念無念。

 このコナラの巨樹の周りになんと五株もありました。1週間か10日前だったら全部採取できたかもしれません。全部取れたら七株になったわけです。そんなでしたら、もう森の中でブレイクダンス踊っちゃいますね(踊れませんが)。まあ仕方がないです。体調不良が続きましたから。今年出たこの樹からは、2〜4年は出ません。周囲の樹も確認しましたがありませんでした。

 少し、いやかなり気落ちして森を歩くと。おお!クリタケの株が。充分食べられます。クリタケと分かってはいるのですが、必ず噛んで確認します。もし猛毒のニガクリタケだったら、はっきり分かる嫌な苦味があります。普通はより黄色みが強いので分かるのですが、稀に栗色に近いものがあるのです。死亡事故もある毒キノコなので要注意です。クリタケの細胞は球形で壊れにくいので、一度冷凍するといいのです。旨味成分が多いキノコなので、ゴボウやニンジン、油揚げなどと炊き込みご飯にすると最高です。

(左)マルバフジバカマ。吸蜜していたはずのアサギマダラは、南へ旅立ちました。(右)有毒の蝮草の実。観賞用として育てる人もいます。毒草ですが、薬草としても用いられます。

(左)猛毒のヤマトリカブト(山鳥兜)。花粉も有毒なので、花の香りを嗅いだりしないように。(右)ミツバアケビの大きな実が落ちていました。食べるなら9月中旬過ぎですね。
アケビのブルーチーズ入りミソバーグ:オリジナルレシピです。味噌風味にブルーチーズを合わせたところが、まさにミソです。ミソとブルーチーズのはんなりとしたコクのある香りが漂ってきて食欲をそそります。

 この大きなギャップは、3本ぐらいのコナラが倒れてできたものです。倒木には、二、三年後にはウスヒラタケ、ヒラタケ、ナラタケ、ムキタケなどのキノコが発生するでしょう。手前のうねった幹は、山藤です。すぐ向こうに見える山藤に絡まれて倒れたコナラは、巻き付かれて10年ぐらい前に倒れたものです。山藤は、成長期には一日8センチも伸びます。大きなものは幹の直径が50センチを越え樹に巻き付いて葉で覆い、光合成をできなくし枯らしてしまいます。やがて山藤は枯れた樹と一緒に倒れギャップができるのです。その瞬間から色々な植物のニッチのせめぎ合いが始まります。

 今年は山栗が豊作です。ほとんどの栗は、タヌキやリス、イノシシなどの野生動物に食べられて空でした。栗拾いをするなら標高にもよりますが、9月中旬に来ないといけません。

 あるかなと思って立ち寄ったハタケシメジ(畑占地/畑湿地)のシロ。たった一株ですが大きなものがありました。幻に近いホンシメジに最も食味が近い非常に美味しいキノコです。ウラベニホテイシメジと同様に、毒のクサウラベニタケと間違えないようにすることが大事です。有毒のイッポンシメジもハタケシメジのような艶があるので要注意です。

 コムラサキ(小紫)がたわわに実をつけていました。小紫の枝は垂れ下がります。平安時代の女性作家「紫式部」を連想させる高貴な紫色が印象的です。本来は、「紫重実、紫敷き実(むらさきしきみ)」と呼ばれていたそうです。ただ不思議なことに、万葉集にも源氏物語にもこの樹木は登場しません。
「ムラサキシキブ 最も早く 実を持てど 最も早く 鳥の食い去る」昭和の歌人・土屋文明

 ムラサキシキブより実は小さいのですが、実はたくさんなるので華やかです。実は有毒ではありませんが甘みは薄く美味しくないので食用には普通しません。

 セイタカアワダチソウ(背高泡立草)で吸蜜するヒョウモンチョウの仲間。環境省が要注意外来生物リストに載せている植物で、都会の空き地から里山や耕作放棄地で見られますアレロパシーを持ち、根から周囲の植物の成長を抑制する化学物質を出しますが、最後は自分の出したそれで消えていきます。デトックス効果が高いので、薬草としても用いられます。

(左)マルバフジバカマでテングチョウが吸蜜していました。(右)ヤマツツジの残花。麓では最高気温が27度ぐらいになった様ですが、山中は24度ぐらいで快適でした。結局3時間半ぐらい藪山を歩きました。車に戻り、前回採ったクリタケとハナイグチの炊き込みご飯で作ったおにぎりを食べてから下山しました。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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