モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

里山巡り。鏡台山、妻女山、天城山。ジコボウ、ハタケシメジ、クリタケ、ウスヒラタケ、ムキタケ、アラゲキクラゲ(妻女山里山通信)

2022-10-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 秋晴れの週末は久しぶりに鏡台山へ。旧埴科郡の中央に位置する里山で、標高は1269.1m。大きな山体なので拙書では、7コースを。大峯山からの2コース、妻女山や象山からのコースを合わせると10コース以上になります。また、長野県立歴史館をスタートとして、森将軍塚古墳から五一山脈を五里ヶ峰へ。沢山峠から鏡台山へ。北へ戸神山脈を鞍骨山へ。天城山から斎場山、薬師山から歴史館に戻ると約20キロのトレランコースができます。これも拙書の地図をつなぐと分かるようになっています。要注意箇所も記しています。

 林道芝平樽滝線の三滝沢上から見る北アルプス白馬三山の雄姿。眼下に長野と松本を結ぶ長野自動車道。向こうは西山の里山。その向こうは、犀川左岸に連なる里山。拙書では、虫倉山や大姥山を紹介しています。西山地区は、白金にもある超有名店のロンディネッラがあったり、世界的なミュージシャンのスタジオがあったり、美味しいベーカリーやカフェ、絶品手打ち蕎麦の店が点在します。特におすすめはイノシシや鹿、熊などのジビエ。道の駅やレストランで買えたり食べられます。信州新町の道の駅やムサシヤ、さぎり荘でいただける稀少なサフォークのジンギスカンは絶品です。猟師の友人に鹿肉1キロもらったこともありました。信州恐るべし(笑)。

 急登を息を切らして左下に見える真っ暗な森に入ります。なんということでしょう。何にもありません。昨年はチャナメツムタケやクリタケ、ナメコを大量に採ったのに。ニオウシメジやホンシメジを採ったこともあります。山は生き物です。毎年同じ様なわけにはいきません。山は思った以上に乾いていました。

 クサギ(臭木)の実。キノコがないならマタタビの実を採ろうと思ったら、実が全くついていません。

 標高1000m以上では色々な紅葉が始まっています。

 樽滝。右上に滝があります。右の階段で10分足らずで滝に登れます。鏡台山は熊の生息域で私も何度か遭遇したことがあります。拙書では、「猫にマタタビ、月の輪熊に石油」というエッセイで詳しく紹介しています。単に熊鈴をつければいいというものではなく、季節によって対処法も変わることも記しています。

 ウルシの仲間のヌルデ(白膠木)。ヌルデ(白膠木)の葉には虫コブ(ヌルデミミフシ)ができます。外はフェルト状で柔らかく、中は空洞。アブラムシがたくさんいます。 タンニンの含有量が多く、乾燥品を五倍子といい、染め物では空五倍子色(うつふしいろ)とよばれる伝統色として用いられます。古くはお歯黒などにも使われました。
「足柄の 吾を可鶏山の かづの木の 吾をかつさねも かづさかずとも」(詠人知らず) 万葉集(巻14)東歌 *カヅノキ(可頭乃木)=ヌル

 イタドリ(虎杖)の花。海外では有害帰化植物になっています。タデ科の多年生植物で、東京の野川沿いとかでも普通に生えています。すかんぽという山菜。サプリメントもあります。

 三滝の一の滝。濡れて青く光る岩が美しい。拙書の鏡台山の記事では、氷瀑の一の滝を紹介しています。十年で一度見られるかどうかの貴重な美しい氷瀑です。

 帰りに妻女山展望台へ。西山の茶臼山と右奥に虫倉山。光背に北アルプスの白馬三山。眼下の長芋畑ではつる壊しが始まっています。乾いたら燃やします。その炎と煙が秋の風物詩。黄色く見えるのは耕作放棄地に咲くセイタカアワダチソウ。耕作放棄地が増えています。農業は防衛の最も重要なもの。世界の農業大国は、日本とは比べ物にならないほど農業に税金を注ぎ込んでいます。工業製品を売って農産物は輸入すればいいという自民党の政策は時代遅れ。安全で確実に農産物を得るには、税金をつぎ込み若い営農者や営農企業を育てる以外に道はありません。危機的状況では都会の市民は餓死するしかないでしょう。在京時代はベランダで野菜を育てたり、近所の無人販売の有機栽培の野菜にお世話になりました。東京は実は農業が盛んなんです。

 翌日は曇り空。松代方面の眺め。霧が覆っています。気温は12度。朝は川中島の霧で視界は100mもありませんでした。もっと冷え込むとホワイト・アウトして視界が全くなくなります。フォグランプも効きません。

 どれぐらいぶりでしょう。旧道を歩きます。崩壊して獣道になっています。30年前にはこの上の林道は無くて、長男が6ヶ月の時に両親と妻と4人でキノコ狩りに来て通った道です。その時は、ムラサキシメジを120本採りました。動画も残っています。妻が母に教わりながら手打ちのキノコうどんを作りました。ここを歩く人は私以外もう誰もいません。

 クリタケを発見。4株ほど採れました。この色なら猛毒のニガクリタケとは噛んで味見しなくても判別できます。ニガクリタケなら最悪死にます。

 倒木にムキタケを発見。猛毒のツキヨタケと見分けないといけませんが、ツキヨタケは標高1000m以上なので、この里山にはありません。

 獣道を塞ぐクヌギの倒木。ここにもムキタケがありました。くぐったり跨いだりしてなんとか通過。倒木は非常に増えています。台風やドラスティックな気象で、ダウンバーストが発生したりするからです。巨木でも根本が細かったり急斜面にあったり、ダウンバーストの通り道だったりすると、あっけなく倒れます。

 そんな倒木にウスヒラタケ。和洋中華なんにでもアレンジ可能な旨い食菌です。何株も採れました。

 別の倒木にアラゲキクラゲ。普通のキクラゲより高級品です。キクラゲは栄養価が高いので、特に女性にはおすすめです。

 全草が猛毒のヤマトリカブト。特に根っこは極めて猛毒です。昔は、口減らしや暗殺に用いられたといいます。現在では、体内に成分が残留するのですぐに判明します。若葉のころに山菜のニリンソウと間違えないことが大事。よく隣り合って群生しています。

 ある場所にハタケシメジの群生地があります。小汚いのでキノコ狩り初心者はまず採りませんが、意外にベテランのはずの高齢者も同定できずに採らないことが多いのです。しかし、幻のホンシメジに最も近く非常に美味しいキノコです。袋いっぱい採れました。

 帰路に見つけたこのキノコ。3本採りました。最初幻のシロシメジかと思いました。傘の上に灰褐色の色があればスカンクの臭いのシロノハイイロシメジで食べられません。以前この近くで傘の直径が15センチ。根本が5センチのシロシメジを採ったことがあります。匂いをかぐとシロノハイイロシメジではありません。でもシロシメジが出るには早すぎます。やや紫味を帯びているのでムラサキシメジか?違いますね。やはり幻のシロシメジかと。これだけ別にすまし汁にしてみます。それで同定できます。結果は、幻のシロシメジでした。煮るとぬめりが強くシメジらしい濃い味がします。

 ジコボウ(ハナイグチ)、ハタケシメジ、地大根、松代一本葱の味噌粕汁。味噌は仲間と作ったもの。七味唐辛子は父が生前たくさん作っておいてくれたもの。材料費は100円もかかっていません。バックの手ぬぐいは、昔東京の科博で南方熊楠展の際に買い求めたもの。絵は彼が描いた粘菌(変形菌)です。味噌や酒粕の力はもの凄いものです。昔、ホテルオークラのエンタープライズの社長をしていた義父に、毎年北海道のエゾシカの肉が送られて来ました。ある年、どうも血抜きが甘かった様で、ワインやリンゴ、玉葱に漬け込んでもどうにも臭みが強くて不味い。私がひらめいて信州味噌に漬け込んで焼いてみたら、これがビンゴ! 美味しくいただけました。味噌の力はもの凄いと実感しました。

 採れたキノコ。40センチを超えるボウルに満杯です。熱めの塩湯に浸けてから流水でゴミを親指の爪で削ぎ落としていきます。キノコの種類ごとにジップロックに分けて冷蔵、冷凍します。けっこう大変です。妻女山里山デザイン・プロジェクトの昼餉や冬の鍋や煮込みうどん、正月のお雑煮などに使います。里山のありがたい滋味、恵みです。ただ、福島第一原発の事故で拡散した放射能により、現在でも高汚染されたキノコがあります。長野県でも軽井沢や佐久地域のキノコは基準を超えています。菌根菌は特に危険。福島第一原発の事故の放射能汚染は、十万年も続くのです。それで病気になり死んでも、国はなんの保障もしてくれません。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 妻女山の奥山へキノコ狩りに... | トップ | 「妻女山 紅葉と歴史のハイ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アウトドア・ネイチャーフォト」カテゴリの最新記事