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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ショック! ネオニコ空中散布のない茶臼山は、昆虫と花の天国(妻女山里山通信)

2014-08-03 | アウトドア・ネイチャーフォト
 前回記した通り、茶臼山へやって来ました。といっても麓の中尾山温泉から登るとか、茶臼山自然植物園の下から登るとかではなく、尾根上にある信里小学校のところから入って、旗塚の駐車場に車を停めて、ほぼトラバースという楽ちんコースです。なんやかんや忙しく、3月の初旬に大雪の残る時に登って以来でした。

 登山道に入って驚きました、2、3m置きに、所によっては1m毎に足元からヒグラシが飛び立つのです。昨夕あたりに羽化して、ゆっくりと翅を広げ、朝になって翅を乾燥させて飛び立つのを満を持して待っていたのでしょうか。私の足音で次々と飛び立って行きました。しかし、中には乾燥が不十分で飛び立てないものもあり、そういう個体は、すぐにじっとして姿を隠します。そんな草陰に隠れた1匹を見つけました。捕まえて顔面を接写後逃しました。
 羽化したてのセミの羽は、白っぽい薄青緑色です。人間や動物の血は、鉄分を含む赤血球中のヘモグロビンで赤く見えますが、それ以外の生物では薄青色の血(体液)の方が多いのです。これは銅成分を含むヘモシアニンのためです。

 次に発見したのは、これも羽化したてのアブラゼミでした。こちらもまだ飛べないようで、簡単に手で捕獲できました。ひっくり返して腹を見ると、赤い小さなタカラダニの幼虫がいました。タカラダニのついたセミは、子供にとって貴重な宝なので、この名が付いたという説や、セミが宝を持っているように見えるからという説があるそうです。アブラゼミという名前の由来は、その鳴き声が天ぷらを揚げる音の様だから。
 蝉といえば、奥の細道の松尾芭蕉が詠んだ「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」が最も有名ですが、万葉集にも詠まれています。
「ひぐらしは 時と鳴けども 恋ふらくに たわやめ我(あれ)は 定まらず泣く」〔詠人不知 万葉集 第10 1982〕
(ひぐらしは時を決めて鳴くけれども、恋のせいでか、弱い私は時を定めず泣いてばかりいます。)

 セミの中でもヒグラシは、漢字で書くと「蜩」「茅蜩」「秋蜩」「晩蝉」「日晩」「日暮」と色々あるように、その物悲しい鳴き声からか万葉の昔から日本人好みの昆虫でした。俳句では秋の季語ですが、実際はニイニイゼミなどと同じく梅雨から鳴き始めます。季節的には秋のセミではありません。
しかし、カナカナカナと鳴く薄暮の森に佇んでいると、不意にとてつもない寂寥感に襲われます。どこか物悲しいヒグラシの鳴き声は古代から日本人の琴線に触れるものがあったのでしょう。古代中国の敗残兵の末裔が、故郷を偲んで落涙したのでしょうか。虫の鳴き声を左脳で聞くのは日本人(ポリネシア人も)の特性です。他国の人には音にしか聞こえないそうです。虫の音であり、虫の声ではないのです。
 万葉集の中に蝉の歌は10首ありますが、ヒグラシが9首。もう一首は単に蝉と書かれています。

 森を抜けて棚田に出ると、そこは花や蝶の楽園でした。ノアザミで吸蜜するキアゲハ。ノアザミは花の下の総苞が粘るので秋のノハラアザミと区別できます。ダイミョウセセリが翅を広げて休息中。大名とつくだけあって風格があります。ジャノメチョウがアカツメクサで吸蜜中。

 ミヤマチャバネセセリがアカツメクサに。丸い頭部と大きな目が愛らしい。次はツバメシジミ。妻女山山系にもたくさんいたシジミチョウですが、ほぼ絶滅状態です。それどころか、十数種類もいたシジミチョウの全てが壊滅状態です。千曲市による猛毒のネオニコチノイド系農薬の空中散布が原因だと蝶の研究家のTさんは断言しています。ミドリヒョウモンもアカツメクサで吸蜜。

 こちらもミドリヒョウモン。次は、オンブバッタではありません。交尾中のミヤマフキバッタです。写真を撮ろうと近づくと、大きなメスがオスを背負ったまま、茎の周りを逃げるようにニジニジと回転するのです。なんだかオスをおんぶして逃げる様子が可笑しくて思わず笑ってしまいました。

 湿気の多い茶臼山は、あちこちに夏キノコがたくさん発生していました。ほとんどが不食か毒キノコですが。夏キノコの同定は、似たようなものが多く大変です。まず見つけたのは、小ぶりの猛毒ドクツルタケのような真っ白なキノコ。シロタマゴテングタケでしょうか。やはり猛毒です。真ん中はドクツルタケかと思いましたが違うようです。右は茶臼山でよく見るカブラテングタケでしょうか。それともシロタマゴテングタケの幼菌でしょうか。いずれにせよ不食です。

 これもテングタケ科のキノコです。おそらくコテングタケモドキの幼菌でしょう。毒キノコです。真ん中は、可食のオニイグチモドキ。これは食べたことがありますが、特に美味しいキノコではありません。右は栃木県人垂涎のチチタケ。乳茸と書くように傷つけると白い粘着く乳液を出します。とても美味しい出汁が出るキノコで、肉質が固くボソボソしていますが、ナスと炒めてうどんや蕎麦のつゆにすると絶品です。放射能汚染で、栃木県や群馬県のものはもう食べられないでしょう。長野県も犀川以北のものや軽井沢辺りのものは危険です。その他の地域のものも必ず除染して、過食は避けるべきです。
【信州の里山】キノコの汚染と除染について 』除染方法も記しましたが、完全ではありません。チェルノブイリでも、ベリー類とキノコの汚染が最も酷いものでした。高汚染地のものは、絶対に食べるべきではありません。東電は、郷土料理や日本の伝統文化を根こそぎ破壊しました。

 棚田へ下りる路で、紫色に輝くオオセンチコガネを見つけました。糞や腐肉を餌にするいわゆる糞虫で、森の掃除屋さんです。種類や地域個体群によって紫、緑、藍色、金色などの色彩変異がありますが、どれも糞虫などと呼ぶのはもったいないほど美しい甲虫です。
 小さな溜池の縁にムギワラトンボがいました。シオカラトンボですが、メスと若いオスはムギワラトンボと呼ばれます。他にはオニヤンマも舞っていました。茶臼山は、妻女山と違い棚田や溜池があるので、空梅雨でも虫達は元気です。なによりネオニコの空中散布がないことが、生態系を豊かにしています。

 湿った森の中に足を踏み入れると、倒木に粘菌(変形菌)を発見しました。所々小さな塊が盛り上がっているので、どうやらモジホコリ科ススホコリ属のキフシススホコリのようです。原形質流動を起こして盛んに成長しているところです。原形質流動は秒速1ミリ以上で、これは生物としては極めて速いものです。



 棚田の周囲には色々な花が咲き乱れていました。左からカワラナデシコ、ウツボグサ、ヤブカンゾウ。他にはハルジオン、ヤマホタルブクロ、ドクダミ、マツヨイグサ、ハナニガナ、クサフジ、キキョウ等々。ヤブカンゾウやカンゾウの蕾は金針菜といって中華料理の高級食材です。タンパク質、ビタミンA、B、C、リン、ほうれん草の20倍 の鉄分などミネラル成分も豊富です。炒めものや天ぷらで。不眠症、鬱症、自律神経失調症、貧血、健脳等に効くそうです。私も畑の縁で栽培しています。ニッコウキスゲの仲間です。

 茶臼山のアルプス展望台から見た山布施の山村風景。中央やや左に鹿島槍ヶ岳の雪渓が見えます。ここからは見えませんが、鹿島槍の北東に「カクネ里」と呼ばれる、その昔平家の落人が隠れ住んだ(下流の鹿島集落の先祖か)と言われる大きな谷があります。そこに氷河があるのではということで、この9月から調査が始まるそうです。もし氷河であれば、国内では4カ所目、信州では初となります。観光資源として期待されているそうですが、麓からは道路どころか登山道も通じていないので、現在は一般の人が辿り着くのは不可能です。右上にトンボが写っているのが分かりますか。オニヤンマです。ネオニコ空中散布のない茶臼山は、妻女山と違って昆虫と花の天国でした。

必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

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★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。

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