モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

それぞれの秋、奈良倉山。粘菌も

2006-11-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
秋の連休初日は、次男と山梨県大月市と上野原市の境にある「奈良倉山」へ。今年は暖かいせいか紅葉の色づきはもうひとつですが、その分目にやさしく秋色の山行を楽しむことができました。前日の雨のお陰か粘菌も撮れたのは幸運でした。

今回のテーマは、5月1日に見つけた長作から奈良倉山への登りで、地形図にある破線とほぼ同じと思われる踏み跡を見つけたので、それを辿ってみようというものです。おそらく地形図の道はほとんど消えて無くなっているでしょうが、この山の地形は何度も登って頭に描けているので大丈夫ということでのチャレンジです。

どこかの記事で、最近の中高年の登山者は地図を持たない、あるいは読めない人が非常に多くなったということが書かれていましたが、特に登山道がしっかりせず、作業道や獣道も多く交錯する低山では、地形図の持参とそれを読みとる読解力が必須になってきます。だれがどういう意図でしたか分からない印だけを頼りに登るような登山は慎まなければならないと思っています。

今回のポイントは、右にトラバースして緩い尾根の高みにきたら、迷わず左へ直登するということでした。去年の4月10日に長男と下って唐突に無くなり迷った作業道の位置が分かっているので、そこまで辿りつければ後はいつも通りのコースを登るだけになります。実際辿ってみると思い通りの地形とコースでした。

奈良倉山から佐野峠への林道歩きでは、十文字峠から佐野峠に至る古道の痕跡がないかと森に入ってみたりしました。佐野峠手前の小ピークには大きな栗の木があるのですが、この尾根で初めて熊棚があるのを見ました。今年はドングリとブナが不作のようなので、栗の木を探していつもより広範囲にエサを探す必要があるのかもしれません。麓の集落には、だれも採らない鈴生りの柿の実が見られましたが、冬眠前の熊が食べに来るのではと危惧します。

旧佐野峠道は、登山地図にも描かれていませんが、地形図には破線が描かれています。現在は1170m峰北西面に巻き道があり、なおかつ道は地形図のように飯尾側ではなく長作側に下りています。しかも鶴川には粗末な丸太の橋があるのですが、ちょっと増水するだけで流されてしまい、大雨の後などは渡れない可能性もあります。そうなると1170m峰の手前まで戻って坪山から飯尾に下りなければなりません。今回はいつもよりわずかに増水していたので裸足になって川の中を渡ることになりました。それを一番楽しんだのは、ほかでもない息子でした。

巻き道の先には、最近伐採されヒノキの苗木が植えられたばかりの開けたところがあるのですが、そこからは今回登った奈良倉山の長い尾根と三頭山、その間の鶴峠の向こうには雲取山と眼下の深い谷という胸のすくような絶景が見られます。ヒノキの苗木が大きくなると見られなくなる景色ですから、楽しめるのもあと10年あるかないかでしょう。

旧佐野峠道は、地形図では本来1170m峰の頂上から飯尾側に下りる、七保と飯尾を結ぶ古道だったようですが、車社会になり更に松姫峠が完成してからは通る人もなくなったのでしょう。古道は、牛馬をひいて歩く道だったために急勾配の斜面でもジグザグに道は作られ、ある程度幅も広くこう配も緩やかに作られていました。道もいきものですから使われなければ、やがて遠い歴史の中に消えてしまいます。紅葉の昔道をたどりながらそんなことに思いをはせた一日でした。

奈良倉山-旧佐野峠道のフォトルポ
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする