仙台空港にて

2011-12-19 07:37:52 | 飛行機

震災直後は情報がなくて、とにかく何が起きているのかを把握したい一心であらゆるテレビのニュースと新聞とネットの画像を見ていたけれど、3ヶ月を過ぎた頃からそういったものを見るのが辛くなりました。
実際の現場ならなおさら。
それでも、現実からは逃げられません。
今もまだ荒れ果てたままの海沿いの風景は、あの日の記憶を忘れさせてはくれません。

2機の飛行機の写真があります。
仙台空港で被災した、SAT‐「仙台エアロバティックチーム」の機体です。

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「荒浜で多数の遺体発見」
「大槌町、陸前高田町ともに連絡がとれず」
「仙台空港は中2階まで浸水」

3月11日、渋滞の車列の中、実家を目指していた私が聞いたラジオのニュース。
仙台市中心部にいた私は、自分と家族を何とかする事に必死で、三陸沿岸部で何が起きていたかなんてまだよくわからなかった時です。

街の明かりが消えたあの真っ暗な夜、あちこちでアスファルトから吹き出す水。
そんな中で耳を疑ったニュース。
たぶんインプレッサwのステアリングを握っていなければこらえ切れなかったと思います。
実家にいた猫のどみっさんと母も、友人たちも心配だったけれど、そのニュースを聞いて何が起きているかを想った時。

いつも訪れていたあのハンガーにいた方々は。
空港駐車場にお勤めのあの人は。
そしてあの機体は。
あれほど絶望的で辛い事もなかった。
願うしか、祈るしかできなくて、そして声を上げて泣く事しかできなかった。
なんてバカなんだろ。泣いたって何にもならないのに。
私には何にもできないのに。

その数週間後、私は上の写真の事実を確認することになります。
そして無事だった人たちについてと無事ではなかった人についての知らせを、少しずつ、少しずつ知り始める事になります。
それから、仙台空港の周辺でも沢山のかたが命を落とされたことも。

あれから9ヶ月。
今日は報告とお知らせとして。
先日、仙台空港2Fにあるショウケースに、SATの展示を行ってきました。

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Pitts Special S2Bと、FA200の模型、写真その他が展示されてます。
想い出を詰め込んだ夢のガラスケースとなりました。

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古い時代の六連星のエンブレムをつけていたエアロスバル。
もちろん私も大好きだったけれど、sabiさんが注ぐ並々ならぬ愛情には私も勝てなかった(笑)

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そして私が心から、精一杯、愛してやまなかったこの美しい、空飛ぶ金魚…Pitts。
初めて乗せてもらえた時の感動は忘れられなくて。
毎週のように仙台空港に通ったっけ。
この世界、大地、空はこんなにも美しいのだと、まだ見ていたいと、まだ私には生きて見たいものがあるのだと実感することができたんだった。

敷き詰めてあるパラシュートは、Mikeさんが実際に使用していたものです。
機体の中に置かれたまま海水に浸かってしまったので、回収してきてから可能な限り洗って乾かして。
もう使えないものだけど、私にとってはPittsの形見のようなもの。

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あの津波で命を落とされた方々の事を思えば、飛行機なんてどうでもいい物かもしれません。
それでも、この2機は今までずっと私の支えでした。
日常のさまざまな出来事に翻弄されても、週末にこの2機の姿を見る事ができるのが嬉しくて楽しくて。
MikeさんとIさんが飛び立つのを見送って、そして迎える事ができるのが嬉しかった。
sabiさんが嬉しそうにPittsを磨くのを見るだけで楽しかった。
あのハンガーで、私も一緒に居させてもらえる事が奇跡みたいに大切だった。

その後、FA200はその形を失い、Pittsは母国アメリカへと旅立っていきました。
最後のお別れができなかったのは今でも悔しいけど(←まだ根に持ってる)、旅立つ前に私の手で泥を流して、キレイに洗い上げてあげることができたのがせめてもの救いです。
エンジンカウルの中から、大量の泥と松ぼっくりが3個も出てきたけどね。

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こうやって見ていると、いろんな事が思い出されます。
それは悲しい事じゃなくて、いままでこの2機のおかげでどれだけ素敵な週末を過ごして、そして毎日をどんなに大切にする事ができたか、そんな想い出です。

仙台空港にお立ち寄りの際はぜひご覧くださいね。
2階、出発ロビー国際線側にあります。

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こんなに真っ赤で楽しいショウケースはこれ一つだけなのですぐわかります!

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展示にあたって、お立会いいただいた空港職員の方 、大変ありがとうございました。
そして体調がよろしくなかったMikeさん、突貫作業お疲れ様でした。

改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に。
「これで終わりにはしない」、その想いを胸に。
今まで続けてきたこの旅を、私はまだ止めたりしない。
愛するエンジンと、エンジンの継承者たちをそっと見守るために。

それは人の夢だから。
夢見ては叶えて来たものだから。
だからきっと、これから先のためにも必要なものだから、ね。


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