「時間が取れるならこのコースをもう一度。」
ずっとそう思ってました。
前回下北半島に行ったのは、久慈から尻屋崎へ向かい、そこからむつに出て野辺地、青森から東北道で宮城に帰るコース。
今回は尻屋崎から久慈へ南下する逆コースです。
尻屋崎を出ると、県道6号線を少し戻って248号線、国道338号線にぶつかったらさらに南へ。
青い空と松林の中を走り続けて、あーモウ海も見えないよ、とつぶやく頃にぐぐいと海沿いへ出る事になります。
で。白糠漁港という小さな港町があるんですが。
仙台を出る前に、このあたりの道路についてあるヒトと話した際(どんだけコアな話かとw)、白糠漁港のあたりの道路案内の表示が分かりづらいという話が出ました。
むつに行こうとすると、違う方向に連れて行かれちゃうんだそうです。
マップを見れば、三沢方面から白糠を通るすると、そのまま338号線を行けばむつに出ます。たぶんそのヒトの経由地の都合でそういうルートになったのかもしれませんが、県道7号線に左折して冷や水峠を越えて陸奥湾側のはまなすラインに出ることもできます。
前回、牛は尻屋崎を目指していたので迷った覚えはありませんでしたが、それまである程度の道幅があったはずの338号線は、ここ白糠漁港にさしかかるととたんに狭隘な道に変わっちゃうんです。
その狭さと峠道が印象深くて、牛も覚えてんだ。
そういう道って、余計に歴史を感じさせるもんです。
昔は牛馬が通っていたであろうその道。
ただ走り抜けるだけなのに、不思議と脳裏に焼きつく風景。
マップを見てるだけで何気ない風景が鮮やかによみがえってくる、その不思議な感覚を味わえるから、牛はこうやって旅の反芻を続けちゃうんですよね。
牛の壊れた記憶の中で、唯一信頼できるものに違いないから。
そう、記憶の中によみがえる事といえば。
おそらく338号線に出て間もなくだったはず。
どこまでも続くような片側1車線を牛のインプレッサwが軽快に走っていると、一台のバイクが後ろにつきました。
柔らかな曲線がバックミラー越しに見えます。
まったりソロツー?地域住民?旅路を急ぐロングツーリング?
牛はほんの少しアクセルを踏み込みます。
車間があくならそのまま前を。
同時に加速するなら道を譲るために。
インプレッサwの排気音が心地よく響いても、2輪のヒトはほぼ同じ車間を保ったままでした。
牛は左にウィンカーをあげながら静かにアクセルを戻します…と、2輪のヒト、加速。
鮮やかにインプレッサwを追い抜いてゆくその時に、彼はヒラリと片手を上げていってくれました。
その瞬間。
あの映像。
アスファルトと空と太陽と、視界の端を流れ過ぎてゆく木々の陰、バイクの排気音。
「追い越し際の斜め後ろ」が一番美しいのだと話したことをふと思い出し。
全てが輝いて、牛の瞳に陽が当たって、モウ小さく見える2輪のヒトを見送る時、やわらかに微笑んでいる自分に気づいてちょっとテレてみたりして。
牛、本当に好きなんだぁ。
車もバイクも、本当に好きなんだぁ。
写真に残せない、絵にも書けない、あの一瞬を知っているという幸せ。
それを噛み締めながら、何度も反芻しながら、やっぱり牛は走って行きたいです。
願わくは、全ての旅人が、無事にその先へとたどり着けますように。