かまかす。

2008-06-09 01:01:18 | 日記・エッセイ・コラム

「よぐかまかして飲まいん」

お分かりになるだろうか。
よくかき混ぜて飲みなさいよ、の意味である。
「かき混ぜる」を「かまかす」もしくは「かます」という方言は、東北地方や北海道でみられるらしい。
コーヒーに砂糖をいれたら、よく「かます」必要があるし、インスタント味噌汁を作る時は、よぅく「かまかして」飲まないと、最後の方が酷くしょっぱいのである。

牛の知り合いの間でよく話題にのぼる訛り、方言、言いまわしはいくつかあるが…「ゴミなげる」、「ねっぱす」、「車であるく」、そしてこの「かまかす(かます)」。
普段何気なく使っているけど、わからんと言われてちょっと考えると、なるほどわからないに違いない。

牛は方言や訛りの学術的な分類はさっぱりわからないし、それほど激しく訛っているわけでもない。
「田舎のじーちゃんばーちゃんの話もそれなりに聞き取れる」程度である。

牛の両親は、宮城県内の出身であり、特に牛は母方の言葉…宮城県北のコトバにどっぷりと浸かって育ってきた。
牛母は普段、親戚以外のヒトと話すときはむちゃくちゃキレイな言葉遣いなのだが、親戚と話しはじめるやいなや、ものすごい勢いで宮城県北訛りになるのだ。
それは見事なスイッチで、小学生の頃からとても感心していたものだった。
…何で親戚以外だと訛らないのだ?と。
そんなわけで牛母は「(比較的)標準語」と「宮城県北訛り」のバイリンガルである。
(比較的とつけたのは、標準語の概念がはっきりしないため。)

そして牛父は県南のヒトだった。
彼が話していたのはいわゆるズーズー弁というやつで、やたら濁点がついたり、「すつずンなったらすす食いさいぐべ」=「七時になったら寿司食べに行こう」というような、聞きなれないヒトにとっては非常に難解な訛りである。
常に訛っているわけではなかった…と言いたい所だが、おそらく県外のヒトからすれば、フルタイムズーズー弁だったに違いない。

結果。牛は、それほど堪能ではないものの、宮城県内の南北の訛りが入り乱れた言葉を話すことになった。
普段はそれほど訛っている自覚は無い。しかし関東方面の友人からすると確実に訛っているらしい。
そして興奮したり感情的になったり、特に怒ると訛りがきつくなるのだ。

さらに、自分でも良く分からないのだが、どうやら牛の話しかたに含まれているのは、宮城県の訛りだけではないようなのだ。
母方の祖母は山形県鶴岡市、いわゆる庄内の出身で、「~だの。」という語尾に代表される、とてもやわらかい印象の訛りのヒトだった。
ばーちゃんの言葉も牛の父母の言葉も、ほどよくミクスチュアされていて、当然自然に身につけたものであるから、自分の発する言葉のどの部分がどこの訛りなのかなんて、わかるはずもない。

加えて、若い頃に職場の寮(あえて寮と言う)で同室だった同期の子が青森県の田舎館村出身だったのもあって、わずかに津軽弁も混ざることがある。
津軽弁ってすごく強い。
印象に残るどころか、こっちまで感化されてしまう程に強い。
「んだっきゃ」、「んだはんで」、「んだズ」とかいう言葉がふいに出ると、自分でも「しまった、言っちゃった」と思うのである。

強いといえば関西の言葉。
幸い、大阪出身の友人の言葉にはそれほど影響は受けなかった。
(それでも一時期真似できた事があったがw)
北の言葉を使う者にとって、西の言葉はなじみがなさ過ぎるせいだろう。

自分のバックボーンを想う時、言葉はとても象徴的なものの一つである。
牛は生まれてこのかた、ずっと宮城県内で生きてきた。それなのに、ふと口をついて出る言葉に庄内風味を感じると、とても感慨深い。だだちゃ豆の地の記憶は、牛にもほんの少しだけ引き継がれている。
外出先で耳にした、年配のおっさんの言葉の濁り具合が激しくて驚くが、気づくと完璧に聞き取ることができている。県南の風は牛の心にも吹いている。

そして、フレッシュネスバーガーでハモンセラーノサンドをテイクアウトしようとしたら、「生ハムを使用してますので…生ものなのでお持ち帰りはできないんです」といわれた瞬間。

「なぬすや!」

…と叫びそうになったのをぐっとこらえて、「ええっ!そうなんですかぁっ?!」と言ったのだが、店内に響き渡る程デカい声になってしまったのは、きっと無理をしたせいに違いない。

今日は、「フレッシュネスバーガーの店内で大きな声出しちゃって恥ずかしかったぁ♪」という話でした。終わり。

ちなみに。
冒頭で例に挙げた「かまかす」。
牛家にはこの言葉から生まれた独特の固有名詞がある。

幼い頃、牛兄が好きだった(と思う)「森永 コンデンスミルク」。
冷蔵庫の中にはいつもコンデンスミルクがあったように記憶している。
パッケージに、妙にリアルながらかわいらしい牛の絵が描いてあったはずだ。
当時の牛家では、たしかアレをお湯で薄めるか何かしてたのだと思うのだが、「牛の絵のコンデンスミルクにお湯を入れてかまかす(かき混ぜる)」という行為そのものが、

牛の絵→牛→モーと鳴く→モーちゃん
かまかす→かまかまする

という変遷を辿った結果、

「森永コンデンスミルク」=「モーちゃんかまかま」

と呼ばれることになったのだ。
モーちゃんかまかま。
かわいい。なんてかわいらしいんだろう。
「かまかす」という言葉が存在しなかったら、「かまかま」という幼児語は産まれなかったに違いない。
牛的には、森永に、コンデンスミルクの商品名を「モーちゃんかまかま」に変更すべきではないかと提案してやりたいくらいだ。
誰もわかんねぇ(笑)

…激しくどうでもいい話になってまったなや。
んでまずおみょうぬづ。