2012.07.04 : 原子力発電・防災対策特別委員会での佐藤議員の質疑記録。
■大飯原発断層問題
◯佐藤委員 きのうの原子力安全・保安院の意見聴取会を、私も傍聴してきた。肝心の話が報告されなかったので、少し残念であったが、杉山委員も、大飯原発の資料が出されていないのは納得いかない、関西電力のデータは不適切だ、学術的に問題があると厳しく批判しておられた。それに対して、原子力安全・保安院は、資料がそろえられるものから順に議論してもらう、大飯原発については、当時の顧問会の資料、トレンチの図を入手した、関西電力に言って、議事録などをそろえているなどと意見聴取会では答えていたが、終わった後の記者会見では、関西電力から出てくる資料がまだ提供されていないと述べたと報道されている。
大飯3号機が再稼働、4号機も次にという、関西電力にとって大事な時期に安全性を覆すような議論をしてほしくないという思惑があって、資料提供がなされなかったのではないかというような報道もある。
いずれにしても、関西電力がきちんと国の委員会に間に合わせるように資料を提供しなかったというのは、原子力安全・保安院も不満に思っているようであるが、県はどういう認識であるか。
◯原子力安全対策課長 事業者がどういう資料を出すか、もしくは原子力安全・保安院としてどういう資料で説明するかは、国の問題としてとらえているので、しっかりとした議論ができるような資料でやるべきだとは思っている。
◯佐藤委員 原子力安全・保安院も破砕帯が直下にある場合には、建物にどう影響を与えるのか、しっかりと検討してほしいとわざわざ言い添えているので、先ほどから部長はいろいろ答弁されているが、新しい知見とかそういう言葉尻の問題ではなくて、実際にそれが影響を与える破砕帯なのか活断層なのかということをきちんと調査をしていくということが、大飯原発だけではなく、美浜原発、高浜原発、あるいはもんじゅにしても、非常に重要になってくると思う。だから、新しい知見ではないと打ち消してしまうのではなくて、これだけ専門家も熱心に議論を始めているわけであるから、県としても厳正な調査を求めていく立場に立つべきではないのか。
◯原子力安全対策課長 昭和60年から昭和62年にかけて、破砕帯の部分を掘り下げて、どういう形状を示しているのかを当時の経済産業省の顧問、原子力安全委員会二次審査委員が、現地に行って断面を見た上でボーリング結果を含めて審査をしている。一つの審議としてはその時点ではしっかりとやられている。これを6月10日の県原子力安全専門委員会で、委員に確認していただいた。今回、福島原発の事故等があって、地震に対するいろんな知見、新たなこともあるので、念には念を入れてということで、破砕帯の議論を原子力安全・保安院として進めていると理解している。
◯佐藤委員 私やほかの議員、東洋大学の渡辺教授の指摘は、当時の審査の材料も含めて、全面的にやられていたのかという疑問があるということである。だから、現地調査も含めて改めてやるべきではないかと指摘するのである。国の審査がもうそれでいいということになると次の進展はないので、当時の審査資料あるいは議論に落ちている点がないか見ていく必要がある。だから、原子力安全対策課長が言われるように、当時の審査が厳正に行われていると言ってしまえば、もんじゅも大丈夫、美浜原発も大丈夫となってしまうわけで、それぞれいろいろ新たなデータ、新たな知見が出されている。また、当時の資料でも、今の知見に照らせばいろいろとまた新たな発見もあるということで議論が始まっているわけなので、県としてはしっかり押さえていくべきではないか。
◯原子力安全対策課長 県は昭和60年代の安全審査のときにどういうところをしっかり見たかということを確認しているし、破砕帯の形状なりその上にある地層についてもどういうものであるか、県原子力安全専門委員会の専門家も当時の資料をしっかりと見て議論してもらっている。ただし、それをどう見るか、様々な専門家の意見もあるので、国としては評価を固めるということで、すべての発電所の敷地の中にある破砕帯に対する対応をしっかり整理して議論している。まずは過去の審査資料をしっかり見て、必要なら敦賀原発のように調査を行うプラントも出てくるかもしれないが、そういうことで審議を進めていると理解している。
◯佐藤委員 なぜ原子力安全・保安院が大飯原発の問題の議論を再度しなければいけないかということになったかというと、新たな知見、新たな指摘等が出てきて、それを過去の議事録とか過去の検証だけでは否定し切れなくなったからである。過去の審査内容、資料だけで、東洋大学の渡辺教授の意見を否定できるだけの材料がそろっているのであれば、わざわざ意見聴取会で再議論する必要はない。やはり県としても謙虚に受けとめていかないといけないと思う。
実際、きのう議論になったのは、もんじゅ、美浜原発、高浜原発のことで関西電力や日本原子力研究開発機構の説明を聞いていても、結論は変動地形上問題ないという結論がとうとうと繰り返されている。しかし、やっぱりサイトの近くには微小地震のモニタリングが必要だとか、大きな破砕帯だけではなくて新しい時代に動いたものはチェックしておかなければいけないとか、破砕帯に連続性がないと切り捨てるのは問題だとか、何人もの専門家から厳しい意見が出されており、関西電力や日本原子力研究開発機構の調査で万々歳なんていうのは一人もいない。
福井県は県民の安全第一と掲げているわけであるから、そういう立場に立って、いろんな点できっちり検証し直すために、野田委員も指摘されたように、県原子力安全専門委員会にも必要なメンバーも加える、例えば問題を指摘している渡辺教授も特別に参考人もしくは特別委員に加えて調査してもらうことぐらいはあって当然ではないか。
◯安全環境部長 今回の原子力安全・保安院の調査は、破砕帯をどう扱うかについて、様々な意見の学者がおり関心事であるので、再度、全国の扱いについて、当時の結論が科学的になされているか、疑問はあるかについて念のためチェックする趣旨であると聞いている。ただし、敦賀原発と東通原発については既に改めての調査を指示しているので、調査も含めながらやっていく。もんじゅ、美浜原発については、断層の近くにあるということで、特別なチェックをする。大飯原発を含めたほかの全国の原発については、当時の審査書類を集めたうえで念のためもう一度チェックする。そこで疑問点等があれば、対応すると聞いている。
◯佐藤委員 もう一度要求するが、県原子力安全専門委員会がまとめた報告書に、新しい材料、新しい対応が出てくれば、県委員会としても検討する旨のくだりがあったと思う。今回、原子力安全・保安院の意見聴取会で審議をやると言っているわけであるから、県原子力安全専門委員会としても、きっちりやるべきである。その際、問題を指摘している専門家を参考人にして調査などを当然やるべきである。
◯安全環境部長 野田委員にも答えたが、県原子力安全専門委員会は、国の審査等をデータまで求めて確認し、科学的、合理的であるということであれば、ダブルチェックで終るが、やはりおかしい、または新たな証拠が出るのであれば、国に報告するのが当然のことだと思う。
◯佐藤委員 私は県原子力安全専門委員会としても審議中に、批判的な研究者を参考人として呼んで意見を聞くぐらいの検証をしていただきたいと言った。先ほどから名前を出している東洋大学の渡辺教授は、決して原子力反対派の学者ではないので、県原子力安全専門委員会として議論に加わってもらうことを考えるべきではないか。
◯原子力安全対策課長 地質の見方は専門家によりいろいろあると思う。だから、原子力安全・保安院の意見聴取会の中で専門家同士でいろいろ議論されることが第1だと思う。県は専門家の意見を踏まえて、国はどう判断したのかをしっかりと議論すべきものである。今回の大飯原発に対する指摘も、県原子力安全専門委員会で議題として取り上げて、原子力安全・保安院から説明を受けた。専門家の考え方を踏まえて議論しており、県原子力安全専門委員会にという必要性は現時点では特に考えていない。
◯佐藤委員 納得いかない。再度求めておく。
■ヨウ素剤
◯佐藤委員 厚生常任委員会で福祉保健部長の答弁も聞いたし、野田委員の質問も聞いたけれども、2月定例会で地域医療課長は、各戸配布もあるし、それから配布の細分化、例えば役場に配布をする、あるいは公民館、避難所、小学校単位で配布をするといったように、幾つものところで配布をするなど、漏れなく配布できるような体制の構築が必要と答弁している。答弁を後退させないでほしい。所管部は違うけれども、やはり原子力防災ということで県民に責任を持つということをお願いしたいがいかがか。
◯安全環境部長 福祉保健部からは、配布をどうするか、実効性を持たすことについていろいろ検討しているが、まだ課題があるように聞いている。ただ、備蓄についてはふやすと、ここまでは今、暫定措置でこうするということであり、そこから踏み込んだことについては、私のほうからは御答弁できない。
◯佐藤委員 厚生常任委員会の答弁でもいろいろヨウ素のショックのこととか、部長は答弁されていたので、そういうことをあわせて言えば、2月議会での地域医療課長の答弁では軽度のもので約1000分の1、死亡に至るものは約100万分の1ということであるから、福井県の人口は100万人未満だから、県民全員飲んだとしてもおそらく死亡に至るケースはないということであるから、積極防災でやっていただきたいということを要望しておく。
■再稼働問題、原子力防災
◯佐藤委員 今回の大飯原発の再稼働にあたっては、知事が総理に求めて、記者会見があったわけだが、ある意味それが国民に火をつけて、先週は官邸前で15万人とも20万人とも言われる厳しい再稼働をやめろという国民の声が響いた。マスコミでも報道され承知だと思うが、これほど二分されている。国論二分という言い方もあるけれども、再稼働されてなお国民の怒りがおさまらない状況をどのように感じているのか。
◯安全環境部長 原子力に関しては、さまざまな御意見、国民の声があるということは、そのとおりだと思う。ただし、原発は日本経済のため、産業の振興のために必要だと考えているので、安全を第一に確保した上で基幹電源として必要であると思っている。
◯佐藤委員 これまで国、県の原子力行政の推進は、国民合意というのを大きな前提として掲げていたが、それが崩れかかっているという状況をどのように認識されるのか。
◯安全環境部長 崩れかかっているかどうかについては、コメントできないけれども、原発がこれまで、エネルギーの面から大きく日本経済を支えてきたことは紛れもない事実である。今後の日本のエネルギー政策をどうしていくか、しっかりと原発の役割を国民に説明していくことが必要であるし、それを県として国に求めている。
◯佐藤委員 午前中も各委員からいろいろ厳しい意見もあったが、再稼働、原発政策そのものは見直さなければいけないと思っている。
県は県原子力安全専門委員会をつくって、工学的な安全性の問題を積極的に国に提言し、ある意味では暫定的な基準をリードして作らせてきた。
一方で避難にかかる暫定措置等々、原子力防災分野については、積極的に国に対して提案してこういうのをつくるべきだというリードはほとんどなかったように思う。原発そのものの安全性を向上させるということと、万一の場合のそういう防災対策、避難の計画というのは、県民からすればセットだと思うのであるが、なぜ県は一方では強くリードし、一方では国に対する具体的な働きかけを余りしなかったのか。
◯安全環境部長 順番としては、まずは原子炉の安全というのが最優先ということで、さまざまな経験を生かしながら国に責任を持ってやってもらうということである。
原子炉の安全、次に万一事故が起こった場合の制圧、その後、原子力防災となるが、これについては、現在の法令でも国が責任を持つということになっており、今回の事故を踏まえて、国でどのように基準を定め、また、どのような方策をとっていくのか、早く示すように求めている。
◯佐藤委員 まずは、原発そのものの安全対策、次に原子力防災、住民避難は二の次だということになると、これはどうしても人命軽視、県民の安全軽視ということにもなって、結局再稼働優先だという流れだったと思ってしまう。やはり県として、原発の安全の問題も県原子力安全専門委員会で議論すると同時に、県民の原子力防災避難計画というのは、しっかり国に責任持ってやらせないといけないと思う。
なぜおおい町や高浜町の住民が京都なり近くの府県に逃げることができないのか、なぜ県内避難だけしかないのか、どうしても矛盾のある計画になってしまっている。
◯安全環境部長 人命軽視であるとか、矛盾は一切ないと思っている。
当初から言っているように、原子力に向き合って暮らすというのが立地地域の紛れもない事実であって、万一の原子力防災に関しては、我々の考え方は原子炉に近いところから対策を講じるべきということは当初から変わっていない。
国へは対策をきちんと求めているが、まだ示されてない中で、まず県でできることからやっていくということで、原子炉に近い立地、隣接の市町の暫定的な措置に取り組んだ。
これさえも、実効性のあるものにするにはまだまだであって、これからまず対策を十分にやるというのが、今考えている骨子である。
◯佐藤委員 部長の認識でも、まだまだと言われたけれども、実効性はどうかというと、これはなかなか大変なことだろうと思う。
従来の防災計画、住民への周知徹底等と今回の計画、周知徹底等で住民への周知の仕方はどのように変わったのか。
◯危機対策監 今回定めた暫定措置は、避難される市町の方々、受け入れる市町の方々でいろいろ協議をして定めたものである。
当然市町でこういったものを定めたと周知してもらっていると思っているし、周知については県としてもやっていきたい。周知のやり方については、特に今までの防災計画などと変わっているわけではないと思っている。
◯佐藤委員 これまでは避難所が設定されたり、バスで迎えに行くからどこどこに集合するというような、避難の具体的な仕組みがつくられ住民参加の訓練がやられていたと思う。東日本大震災のときにも、津波のときにはてんでに逃げてとにかく助かれという「津波てんでんこ」という言葉が有名になったけれども、今回の計画は、いわば原子力災害のときにはそれぞれ車で逃げなさい、「原子力災害てんでんこ」ということである。
◯危機対策監 てんでんこということではなく、まずは県の防災計画があって、市町が定めている防災計画がある。加えて、今回、暫定的な措置を定めたということで、実際に原子力災害が起きたときには、そういった仕組みの中でてんでにではなくて、どういう範囲の人はどういうふうにどこに避難するということをちゃんと住民に伝えて、それに基づいて具体的な現行の防災計画などをもとにして動いているという仕組みになっている。
◯佐藤委員 福島原発の事故のときには、いろいろな報告書が出ているが、その中の浪江町長の報告には、「国道6号は陥没して通れなかった。福島第一原発に近づく288号はもちろん使えない。結局避難に使用できる道路は国道114号しかなかった。」とある。仮に車で逃げるにしても、事故を起こしているかもしれない原発に近づいて逃げることもあるということである。いくら福井市へ逃げろ、越前市へ逃げろと言われても、大きな地震に伴って災害が起こったときには、道路が正常に機能しないことだってある。だから、原発災害マニュアルには、とにかく歩いてでも走ってでも逃げろというのもあるくらいである。工夫された計画かもしれないが、実際、機能するかというと、大きな地震と原子力災害と、今回のように地震と津波と原子力災害、いろいろな複合災害を考えたときに、これが機能するのか。
◯危機対策監 今回はまずは足元から固めなければいけないということで、地区隣接住民の避難先を県内に設けるということで対応をしている。
佐藤委員が言うように、避難するときに原発に近づく避難はどうかという感情的なことは確かにあると思う。それについて、市町の住民に説明し理解してもらっているのは、原発の災害については、福島の例を見ても、事故が起きて、外部の放射線量が高くなるまでには、ある程度の時間があった。そうであれば、早く情報を周知して避難体制をとれば、県内への避難は現実的な対応としてはある。ただし、今回決まった暫定措置については、これからも市町と協議をして、より実効性のあるものにしていく努力を続けていかなければならないと思っている。
◯佐藤委員 これまでは、避難所に県の健康福祉センターから運び込んで、そこでヨウ素剤を配布するというスタイルだった思うが、それぞれが自家用車で逃げるという避難方法になると、ヨウ素剤はどこで渡すのか。
◯危機対策監 それもまさにこれからの課題ということで、今後、健康福祉部と相談してやっていこうと考えている。
◯佐藤委員 住民からすれば、ヨウ素剤をどこでもらえるかわからないということになるわけだ。ヨウ素剤は放射線を浴びる数時間前に飲むのが一番いいと言われていて、ある程度吸い込んだ後では遅いということである。
それから、国の報告書でも、福島原発の事故の場合は50キロメートルぐらいが放射性の強いガスが通過する範囲として想定されているわけであるから、重複配備をきめ細かくやる、またはヨーロッパみたいに各戸配備をやる、とにかくセットでないとこれまでの防災訓練よりも後退するのではないか。
◯危機対策監 少なくとも、健康福祉部ではこれまで以上に拡大して備蓄することについては決めているので、後退ではないと思っている。ただ、今回決めた暫定措置の方法の避難を前提にしたときに、どのような形で住民にヨウ素剤を渡すのかは、今後の課題であると思う。
◯佐藤委員 津波の場合は生き延びれば命が助かるわけだが、原発事故の場合は生き延びても、放射性ヨウ素を吸い込むなど危険がさらにプラスアルファとなるので、余計難しい。だから、こういうことを考えておいて漏れのない計画にしなければいけない。努力はされているけれども、住民から見ると、いきなり福井市へ逃げろといっても地理をよく知らない人も多いだろう。あまり現実的でないかもしれないが、ヨウ素剤はどこかの国道のゲートで、マラソンの給水所で選手に渡すようにできないかとか、ちゃんとセットで示していかないといけないと思う。
◯危機対策監 お示した暫定措置は、現在、少なくとも立地、隣接市町の住民が具体的にどこの避難所に逃げるのか、そこを決めたのであって、それを知らせることは、住民の安心につながるし、今後の対策のもとにもなるものだから意義のあることだと思っている。ただ、まだ詰めていかなければいけない課題もあり説明していかなければいけないと思っている。
◯佐藤委員 2月議会の予算特別委員会委員長報告で、原子力広報安全等対策事業については、従来の光の部分のPRのみでなく、福島原発の事故で明らかとなったことを明確にして、正しい知識を得られる広報事業となるようにということで、附帯決議がついたがどのようにされているか。
◯原子力安全対策課長 広報については、敦賀にある「あっとほうむ」という原子力広報のセンターでやっている。まず、「あっとほうむ」の来館者に対して福島原発の事故調査や除染であるとか、そういった情報を積極的に提供するため、入口のホールでパネル展示等を継続して実施している。
もう一つは、広報誌を通じたものであり、今回の安全基準の問題であるとか、県の対応であるとか、県原子力安全専門委員会の報告書などを県民に十分にわかってもらえるような内容を予定している。
◯佐藤委員 来館者からもらったのだが、すごく分厚い資料が入っている。ざっと目を通したが、福島原発の事故の調査、現況、除染の状況が書かれていない。資料には、この冊子は2008年に制作したもので、福島原発の事故については原因究明中であり、適切な時期に改訂するというシールが張ってあるだけで、従来のものをそのまま配っている。
また、福島原発の事故の後、新しくつくったという放射線を学ぼうというQ&A資料を見ても、福島原発の事故の被害は全く書かれていない。むしろ、放射線の被害について、世界の平均は1人当たりの自然放射線は2.4ミリシーベルトと日本の数値1.5ミリシーベルトより高い値をわざわざ書いている。福島原発の事故のことも書かれていないし、どれだけ福島県民が苦しんでいるかも書かれていない。福島原発の事故を受けて方向、体制が変わったとはとても言えないと思うがどうか。
◯原子力安全対策課長 先ほど言ったのは、「あっとほうむ」の展示館のロビーのところに情報を出しているということで、お持ちのパンフレットについては、昨年、放射線に関する中学生向けの知識集として新たに作成してものである。その中で取り上げた数値は、高いところという意図的なものではなくて、文部科学省などの公的なものの表示を参考にしてつくったものであって、県内の原発の環境放射線の状況はあっとほうむ等で表示して解説しているので、県民からもわかりやすいという評価をいただいている。
◯佐藤委員 パネル展はわかったけれども、県民に配付している資料に改善の跡がないということを言っている。文部科学省の資料はちゃんと世界平均値と日本の平均値と両方載せている。なぜ県の資料は高い平均値しか載せないのか、そういうことも含めて恣意的なつくり方をしているのではないのかと問題にしている。
◯原子力安全対策課長 恣意的なつくり方をしているものではない。福島原発の事故がどういう状況かは、刻々と変わるということで、県の広報誌で取り上げるのではなく、あっとほうむで展示パネルという形で出していて、安全性を誇張してパンフレットをつくっているわけではないことは理解してほしい。
◯佐藤委員 教育委員会では、教師用として簡単な福島原発の事故後の経過というのをつくって配付している。そんなに金がかかるわけでないわけだろうから、福島原発の事故の状況と対策とか、そういうのを書いていれることぐらいはできるのではないか。むしろ、広報誌「あっとほうむ」では、県の対策でこういう技術的な事故の中間取りまとめをして、県内の原発も安全になるというPRが先行しているわけである。県の原発再稼働に向けたスタンスがそのまま出ると、2月議会で指摘された光と影の両方をちゃんと伝えるということにならない。予算特別委員会でわざわざ委員長報告にまで盛り込まれたことを、重く受けとめていないのでないか。
◯安全環境部長 決してそのようなことはない。議論のあったころから、直ちにできることということで取り組んでいる。
資料についても、どのようなものをつくるか検討をしている。
◯佐藤委員 チェルノブイリ事故の後にも、ひどい事故が起こったということをちゃんと目に見える形で、常に知らせていくことが大事ということを言った。まして今回は日本でこういう事故が起こって、まだこれだけたくさんの人が苦しんでいるわけだから、原発により大変なことになるという実像を、正確に、県民、とりわけ子供に知らせ伝えていくということは、県の仕事だと思う。そこはきっちりやっていただきたいということで再度要望する。
◯原子力安全対策課長 原子力を扱う我々としては、原発には、さまざまな危険性、放射線の問題等があることを正しく理解してもらうため、広報に努めたい。原子力の領域には光と影という部分があり、一方的に安全だと言っているつもりはなく、放射線をこういう形で監視して、数字はこうだと出しているし、危険度という問題では、この程度の被曝をすればこうなるというわかりやすい形で広報していきたい。
■大飯原発断層問題
◯佐藤委員 きのうの原子力安全・保安院の意見聴取会を、私も傍聴してきた。肝心の話が報告されなかったので、少し残念であったが、杉山委員も、大飯原発の資料が出されていないのは納得いかない、関西電力のデータは不適切だ、学術的に問題があると厳しく批判しておられた。それに対して、原子力安全・保安院は、資料がそろえられるものから順に議論してもらう、大飯原発については、当時の顧問会の資料、トレンチの図を入手した、関西電力に言って、議事録などをそろえているなどと意見聴取会では答えていたが、終わった後の記者会見では、関西電力から出てくる資料がまだ提供されていないと述べたと報道されている。
大飯3号機が再稼働、4号機も次にという、関西電力にとって大事な時期に安全性を覆すような議論をしてほしくないという思惑があって、資料提供がなされなかったのではないかというような報道もある。
いずれにしても、関西電力がきちんと国の委員会に間に合わせるように資料を提供しなかったというのは、原子力安全・保安院も不満に思っているようであるが、県はどういう認識であるか。
◯原子力安全対策課長 事業者がどういう資料を出すか、もしくは原子力安全・保安院としてどういう資料で説明するかは、国の問題としてとらえているので、しっかりとした議論ができるような資料でやるべきだとは思っている。
◯佐藤委員 原子力安全・保安院も破砕帯が直下にある場合には、建物にどう影響を与えるのか、しっかりと検討してほしいとわざわざ言い添えているので、先ほどから部長はいろいろ答弁されているが、新しい知見とかそういう言葉尻の問題ではなくて、実際にそれが影響を与える破砕帯なのか活断層なのかということをきちんと調査をしていくということが、大飯原発だけではなく、美浜原発、高浜原発、あるいはもんじゅにしても、非常に重要になってくると思う。だから、新しい知見ではないと打ち消してしまうのではなくて、これだけ専門家も熱心に議論を始めているわけであるから、県としても厳正な調査を求めていく立場に立つべきではないのか。
◯原子力安全対策課長 昭和60年から昭和62年にかけて、破砕帯の部分を掘り下げて、どういう形状を示しているのかを当時の経済産業省の顧問、原子力安全委員会二次審査委員が、現地に行って断面を見た上でボーリング結果を含めて審査をしている。一つの審議としてはその時点ではしっかりとやられている。これを6月10日の県原子力安全専門委員会で、委員に確認していただいた。今回、福島原発の事故等があって、地震に対するいろんな知見、新たなこともあるので、念には念を入れてということで、破砕帯の議論を原子力安全・保安院として進めていると理解している。
◯佐藤委員 私やほかの議員、東洋大学の渡辺教授の指摘は、当時の審査の材料も含めて、全面的にやられていたのかという疑問があるということである。だから、現地調査も含めて改めてやるべきではないかと指摘するのである。国の審査がもうそれでいいということになると次の進展はないので、当時の審査資料あるいは議論に落ちている点がないか見ていく必要がある。だから、原子力安全対策課長が言われるように、当時の審査が厳正に行われていると言ってしまえば、もんじゅも大丈夫、美浜原発も大丈夫となってしまうわけで、それぞれいろいろ新たなデータ、新たな知見が出されている。また、当時の資料でも、今の知見に照らせばいろいろとまた新たな発見もあるということで議論が始まっているわけなので、県としてはしっかり押さえていくべきではないか。
◯原子力安全対策課長 県は昭和60年代の安全審査のときにどういうところをしっかり見たかということを確認しているし、破砕帯の形状なりその上にある地層についてもどういうものであるか、県原子力安全専門委員会の専門家も当時の資料をしっかりと見て議論してもらっている。ただし、それをどう見るか、様々な専門家の意見もあるので、国としては評価を固めるということで、すべての発電所の敷地の中にある破砕帯に対する対応をしっかり整理して議論している。まずは過去の審査資料をしっかり見て、必要なら敦賀原発のように調査を行うプラントも出てくるかもしれないが、そういうことで審議を進めていると理解している。
◯佐藤委員 なぜ原子力安全・保安院が大飯原発の問題の議論を再度しなければいけないかということになったかというと、新たな知見、新たな指摘等が出てきて、それを過去の議事録とか過去の検証だけでは否定し切れなくなったからである。過去の審査内容、資料だけで、東洋大学の渡辺教授の意見を否定できるだけの材料がそろっているのであれば、わざわざ意見聴取会で再議論する必要はない。やはり県としても謙虚に受けとめていかないといけないと思う。
実際、きのう議論になったのは、もんじゅ、美浜原発、高浜原発のことで関西電力や日本原子力研究開発機構の説明を聞いていても、結論は変動地形上問題ないという結論がとうとうと繰り返されている。しかし、やっぱりサイトの近くには微小地震のモニタリングが必要だとか、大きな破砕帯だけではなくて新しい時代に動いたものはチェックしておかなければいけないとか、破砕帯に連続性がないと切り捨てるのは問題だとか、何人もの専門家から厳しい意見が出されており、関西電力や日本原子力研究開発機構の調査で万々歳なんていうのは一人もいない。
福井県は県民の安全第一と掲げているわけであるから、そういう立場に立って、いろんな点できっちり検証し直すために、野田委員も指摘されたように、県原子力安全専門委員会にも必要なメンバーも加える、例えば問題を指摘している渡辺教授も特別に参考人もしくは特別委員に加えて調査してもらうことぐらいはあって当然ではないか。
◯安全環境部長 今回の原子力安全・保安院の調査は、破砕帯をどう扱うかについて、様々な意見の学者がおり関心事であるので、再度、全国の扱いについて、当時の結論が科学的になされているか、疑問はあるかについて念のためチェックする趣旨であると聞いている。ただし、敦賀原発と東通原発については既に改めての調査を指示しているので、調査も含めながらやっていく。もんじゅ、美浜原発については、断層の近くにあるということで、特別なチェックをする。大飯原発を含めたほかの全国の原発については、当時の審査書類を集めたうえで念のためもう一度チェックする。そこで疑問点等があれば、対応すると聞いている。
◯佐藤委員 もう一度要求するが、県原子力安全専門委員会がまとめた報告書に、新しい材料、新しい対応が出てくれば、県委員会としても検討する旨のくだりがあったと思う。今回、原子力安全・保安院の意見聴取会で審議をやると言っているわけであるから、県原子力安全専門委員会としても、きっちりやるべきである。その際、問題を指摘している専門家を参考人にして調査などを当然やるべきである。
◯安全環境部長 野田委員にも答えたが、県原子力安全専門委員会は、国の審査等をデータまで求めて確認し、科学的、合理的であるということであれば、ダブルチェックで終るが、やはりおかしい、または新たな証拠が出るのであれば、国に報告するのが当然のことだと思う。
◯佐藤委員 私は県原子力安全専門委員会としても審議中に、批判的な研究者を参考人として呼んで意見を聞くぐらいの検証をしていただきたいと言った。先ほどから名前を出している東洋大学の渡辺教授は、決して原子力反対派の学者ではないので、県原子力安全専門委員会として議論に加わってもらうことを考えるべきではないか。
◯原子力安全対策課長 地質の見方は専門家によりいろいろあると思う。だから、原子力安全・保安院の意見聴取会の中で専門家同士でいろいろ議論されることが第1だと思う。県は専門家の意見を踏まえて、国はどう判断したのかをしっかりと議論すべきものである。今回の大飯原発に対する指摘も、県原子力安全専門委員会で議題として取り上げて、原子力安全・保安院から説明を受けた。専門家の考え方を踏まえて議論しており、県原子力安全専門委員会にという必要性は現時点では特に考えていない。
◯佐藤委員 納得いかない。再度求めておく。
■ヨウ素剤
◯佐藤委員 厚生常任委員会で福祉保健部長の答弁も聞いたし、野田委員の質問も聞いたけれども、2月定例会で地域医療課長は、各戸配布もあるし、それから配布の細分化、例えば役場に配布をする、あるいは公民館、避難所、小学校単位で配布をするといったように、幾つものところで配布をするなど、漏れなく配布できるような体制の構築が必要と答弁している。答弁を後退させないでほしい。所管部は違うけれども、やはり原子力防災ということで県民に責任を持つということをお願いしたいがいかがか。
◯安全環境部長 福祉保健部からは、配布をどうするか、実効性を持たすことについていろいろ検討しているが、まだ課題があるように聞いている。ただ、備蓄についてはふやすと、ここまでは今、暫定措置でこうするということであり、そこから踏み込んだことについては、私のほうからは御答弁できない。
◯佐藤委員 厚生常任委員会の答弁でもいろいろヨウ素のショックのこととか、部長は答弁されていたので、そういうことをあわせて言えば、2月議会での地域医療課長の答弁では軽度のもので約1000分の1、死亡に至るものは約100万分の1ということであるから、福井県の人口は100万人未満だから、県民全員飲んだとしてもおそらく死亡に至るケースはないということであるから、積極防災でやっていただきたいということを要望しておく。
■再稼働問題、原子力防災
◯佐藤委員 今回の大飯原発の再稼働にあたっては、知事が総理に求めて、記者会見があったわけだが、ある意味それが国民に火をつけて、先週は官邸前で15万人とも20万人とも言われる厳しい再稼働をやめろという国民の声が響いた。マスコミでも報道され承知だと思うが、これほど二分されている。国論二分という言い方もあるけれども、再稼働されてなお国民の怒りがおさまらない状況をどのように感じているのか。
◯安全環境部長 原子力に関しては、さまざまな御意見、国民の声があるということは、そのとおりだと思う。ただし、原発は日本経済のため、産業の振興のために必要だと考えているので、安全を第一に確保した上で基幹電源として必要であると思っている。
◯佐藤委員 これまで国、県の原子力行政の推進は、国民合意というのを大きな前提として掲げていたが、それが崩れかかっているという状況をどのように認識されるのか。
◯安全環境部長 崩れかかっているかどうかについては、コメントできないけれども、原発がこれまで、エネルギーの面から大きく日本経済を支えてきたことは紛れもない事実である。今後の日本のエネルギー政策をどうしていくか、しっかりと原発の役割を国民に説明していくことが必要であるし、それを県として国に求めている。
◯佐藤委員 午前中も各委員からいろいろ厳しい意見もあったが、再稼働、原発政策そのものは見直さなければいけないと思っている。
県は県原子力安全専門委員会をつくって、工学的な安全性の問題を積極的に国に提言し、ある意味では暫定的な基準をリードして作らせてきた。
一方で避難にかかる暫定措置等々、原子力防災分野については、積極的に国に対して提案してこういうのをつくるべきだというリードはほとんどなかったように思う。原発そのものの安全性を向上させるということと、万一の場合のそういう防災対策、避難の計画というのは、県民からすればセットだと思うのであるが、なぜ県は一方では強くリードし、一方では国に対する具体的な働きかけを余りしなかったのか。
◯安全環境部長 順番としては、まずは原子炉の安全というのが最優先ということで、さまざまな経験を生かしながら国に責任を持ってやってもらうということである。
原子炉の安全、次に万一事故が起こった場合の制圧、その後、原子力防災となるが、これについては、現在の法令でも国が責任を持つということになっており、今回の事故を踏まえて、国でどのように基準を定め、また、どのような方策をとっていくのか、早く示すように求めている。
◯佐藤委員 まずは、原発そのものの安全対策、次に原子力防災、住民避難は二の次だということになると、これはどうしても人命軽視、県民の安全軽視ということにもなって、結局再稼働優先だという流れだったと思ってしまう。やはり県として、原発の安全の問題も県原子力安全専門委員会で議論すると同時に、県民の原子力防災避難計画というのは、しっかり国に責任持ってやらせないといけないと思う。
なぜおおい町や高浜町の住民が京都なり近くの府県に逃げることができないのか、なぜ県内避難だけしかないのか、どうしても矛盾のある計画になってしまっている。
◯安全環境部長 人命軽視であるとか、矛盾は一切ないと思っている。
当初から言っているように、原子力に向き合って暮らすというのが立地地域の紛れもない事実であって、万一の原子力防災に関しては、我々の考え方は原子炉に近いところから対策を講じるべきということは当初から変わっていない。
国へは対策をきちんと求めているが、まだ示されてない中で、まず県でできることからやっていくということで、原子炉に近い立地、隣接の市町の暫定的な措置に取り組んだ。
これさえも、実効性のあるものにするにはまだまだであって、これからまず対策を十分にやるというのが、今考えている骨子である。
◯佐藤委員 部長の認識でも、まだまだと言われたけれども、実効性はどうかというと、これはなかなか大変なことだろうと思う。
従来の防災計画、住民への周知徹底等と今回の計画、周知徹底等で住民への周知の仕方はどのように変わったのか。
◯危機対策監 今回定めた暫定措置は、避難される市町の方々、受け入れる市町の方々でいろいろ協議をして定めたものである。
当然市町でこういったものを定めたと周知してもらっていると思っているし、周知については県としてもやっていきたい。周知のやり方については、特に今までの防災計画などと変わっているわけではないと思っている。
◯佐藤委員 これまでは避難所が設定されたり、バスで迎えに行くからどこどこに集合するというような、避難の具体的な仕組みがつくられ住民参加の訓練がやられていたと思う。東日本大震災のときにも、津波のときにはてんでに逃げてとにかく助かれという「津波てんでんこ」という言葉が有名になったけれども、今回の計画は、いわば原子力災害のときにはそれぞれ車で逃げなさい、「原子力災害てんでんこ」ということである。
◯危機対策監 てんでんこということではなく、まずは県の防災計画があって、市町が定めている防災計画がある。加えて、今回、暫定的な措置を定めたということで、実際に原子力災害が起きたときには、そういった仕組みの中でてんでにではなくて、どういう範囲の人はどういうふうにどこに避難するということをちゃんと住民に伝えて、それに基づいて具体的な現行の防災計画などをもとにして動いているという仕組みになっている。
◯佐藤委員 福島原発の事故のときには、いろいろな報告書が出ているが、その中の浪江町長の報告には、「国道6号は陥没して通れなかった。福島第一原発に近づく288号はもちろん使えない。結局避難に使用できる道路は国道114号しかなかった。」とある。仮に車で逃げるにしても、事故を起こしているかもしれない原発に近づいて逃げることもあるということである。いくら福井市へ逃げろ、越前市へ逃げろと言われても、大きな地震に伴って災害が起こったときには、道路が正常に機能しないことだってある。だから、原発災害マニュアルには、とにかく歩いてでも走ってでも逃げろというのもあるくらいである。工夫された計画かもしれないが、実際、機能するかというと、大きな地震と原子力災害と、今回のように地震と津波と原子力災害、いろいろな複合災害を考えたときに、これが機能するのか。
◯危機対策監 今回はまずは足元から固めなければいけないということで、地区隣接住民の避難先を県内に設けるということで対応をしている。
佐藤委員が言うように、避難するときに原発に近づく避難はどうかという感情的なことは確かにあると思う。それについて、市町の住民に説明し理解してもらっているのは、原発の災害については、福島の例を見ても、事故が起きて、外部の放射線量が高くなるまでには、ある程度の時間があった。そうであれば、早く情報を周知して避難体制をとれば、県内への避難は現実的な対応としてはある。ただし、今回決まった暫定措置については、これからも市町と協議をして、より実効性のあるものにしていく努力を続けていかなければならないと思っている。
◯佐藤委員 これまでは、避難所に県の健康福祉センターから運び込んで、そこでヨウ素剤を配布するというスタイルだった思うが、それぞれが自家用車で逃げるという避難方法になると、ヨウ素剤はどこで渡すのか。
◯危機対策監 それもまさにこれからの課題ということで、今後、健康福祉部と相談してやっていこうと考えている。
◯佐藤委員 住民からすれば、ヨウ素剤をどこでもらえるかわからないということになるわけだ。ヨウ素剤は放射線を浴びる数時間前に飲むのが一番いいと言われていて、ある程度吸い込んだ後では遅いということである。
それから、国の報告書でも、福島原発の事故の場合は50キロメートルぐらいが放射性の強いガスが通過する範囲として想定されているわけであるから、重複配備をきめ細かくやる、またはヨーロッパみたいに各戸配備をやる、とにかくセットでないとこれまでの防災訓練よりも後退するのではないか。
◯危機対策監 少なくとも、健康福祉部ではこれまで以上に拡大して備蓄することについては決めているので、後退ではないと思っている。ただ、今回決めた暫定措置の方法の避難を前提にしたときに、どのような形で住民にヨウ素剤を渡すのかは、今後の課題であると思う。
◯佐藤委員 津波の場合は生き延びれば命が助かるわけだが、原発事故の場合は生き延びても、放射性ヨウ素を吸い込むなど危険がさらにプラスアルファとなるので、余計難しい。だから、こういうことを考えておいて漏れのない計画にしなければいけない。努力はされているけれども、住民から見ると、いきなり福井市へ逃げろといっても地理をよく知らない人も多いだろう。あまり現実的でないかもしれないが、ヨウ素剤はどこかの国道のゲートで、マラソンの給水所で選手に渡すようにできないかとか、ちゃんとセットで示していかないといけないと思う。
◯危機対策監 お示した暫定措置は、現在、少なくとも立地、隣接市町の住民が具体的にどこの避難所に逃げるのか、そこを決めたのであって、それを知らせることは、住民の安心につながるし、今後の対策のもとにもなるものだから意義のあることだと思っている。ただ、まだ詰めていかなければいけない課題もあり説明していかなければいけないと思っている。
◯佐藤委員 2月議会の予算特別委員会委員長報告で、原子力広報安全等対策事業については、従来の光の部分のPRのみでなく、福島原発の事故で明らかとなったことを明確にして、正しい知識を得られる広報事業となるようにということで、附帯決議がついたがどのようにされているか。
◯原子力安全対策課長 広報については、敦賀にある「あっとほうむ」という原子力広報のセンターでやっている。まず、「あっとほうむ」の来館者に対して福島原発の事故調査や除染であるとか、そういった情報を積極的に提供するため、入口のホールでパネル展示等を継続して実施している。
もう一つは、広報誌を通じたものであり、今回の安全基準の問題であるとか、県の対応であるとか、県原子力安全専門委員会の報告書などを県民に十分にわかってもらえるような内容を予定している。
◯佐藤委員 来館者からもらったのだが、すごく分厚い資料が入っている。ざっと目を通したが、福島原発の事故の調査、現況、除染の状況が書かれていない。資料には、この冊子は2008年に制作したもので、福島原発の事故については原因究明中であり、適切な時期に改訂するというシールが張ってあるだけで、従来のものをそのまま配っている。
また、福島原発の事故の後、新しくつくったという放射線を学ぼうというQ&A資料を見ても、福島原発の事故の被害は全く書かれていない。むしろ、放射線の被害について、世界の平均は1人当たりの自然放射線は2.4ミリシーベルトと日本の数値1.5ミリシーベルトより高い値をわざわざ書いている。福島原発の事故のことも書かれていないし、どれだけ福島県民が苦しんでいるかも書かれていない。福島原発の事故を受けて方向、体制が変わったとはとても言えないと思うがどうか。
◯原子力安全対策課長 先ほど言ったのは、「あっとほうむ」の展示館のロビーのところに情報を出しているということで、お持ちのパンフレットについては、昨年、放射線に関する中学生向けの知識集として新たに作成してものである。その中で取り上げた数値は、高いところという意図的なものではなくて、文部科学省などの公的なものの表示を参考にしてつくったものであって、県内の原発の環境放射線の状況はあっとほうむ等で表示して解説しているので、県民からもわかりやすいという評価をいただいている。
◯佐藤委員 パネル展はわかったけれども、県民に配付している資料に改善の跡がないということを言っている。文部科学省の資料はちゃんと世界平均値と日本の平均値と両方載せている。なぜ県の資料は高い平均値しか載せないのか、そういうことも含めて恣意的なつくり方をしているのではないのかと問題にしている。
◯原子力安全対策課長 恣意的なつくり方をしているものではない。福島原発の事故がどういう状況かは、刻々と変わるということで、県の広報誌で取り上げるのではなく、あっとほうむで展示パネルという形で出していて、安全性を誇張してパンフレットをつくっているわけではないことは理解してほしい。
◯佐藤委員 教育委員会では、教師用として簡単な福島原発の事故後の経過というのをつくって配付している。そんなに金がかかるわけでないわけだろうから、福島原発の事故の状況と対策とか、そういうのを書いていれることぐらいはできるのではないか。むしろ、広報誌「あっとほうむ」では、県の対策でこういう技術的な事故の中間取りまとめをして、県内の原発も安全になるというPRが先行しているわけである。県の原発再稼働に向けたスタンスがそのまま出ると、2月議会で指摘された光と影の両方をちゃんと伝えるということにならない。予算特別委員会でわざわざ委員長報告にまで盛り込まれたことを、重く受けとめていないのでないか。
◯安全環境部長 決してそのようなことはない。議論のあったころから、直ちにできることということで取り組んでいる。
資料についても、どのようなものをつくるか検討をしている。
◯佐藤委員 チェルノブイリ事故の後にも、ひどい事故が起こったということをちゃんと目に見える形で、常に知らせていくことが大事ということを言った。まして今回は日本でこういう事故が起こって、まだこれだけたくさんの人が苦しんでいるわけだから、原発により大変なことになるという実像を、正確に、県民、とりわけ子供に知らせ伝えていくということは、県の仕事だと思う。そこはきっちりやっていただきたいということで再度要望する。
◯原子力安全対策課長 原子力を扱う我々としては、原発には、さまざまな危険性、放射線の問題等があることを正しく理解してもらうため、広報に努めたい。原子力の領域には光と影という部分があり、一方的に安全だと言っているつもりはなく、放射線をこういう形で監視して、数字はこうだと出しているし、危険度という問題では、この程度の被曝をすればこうなるというわかりやすい形で広報していきたい。