前福井県議会議員 さとう正雄 福井県政に喝!

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前進座「左の腕」

2009年05月31日 | Weblog
   先日、前進座の「左の腕」「江戸城総攻」を国立劇場で観劇した。「左の腕」は南座で7年ほど前に見ているから二度目となる。
「左の腕」は松本清張の原作であり、清張生誕100年記念の上演。とともに主役の中村梅之助の舞台生活70年の記念ともなっている。題名の由来は「左腕に入れられる入れ墨は前科者の印」からとっている。

  かつて村上敏明氏は清張原作と前進座劇についてつぎのように書いている。
 ・・・・・・・「無宿とは江戸時代の戸籍帳簿の人別帳から削除されてしまった者…のことである.…それゆえ、無宿人別帳という帳簿はない.松本清張が作家になって数年後に書いた「無宿人別帳」は、戸籍薄から除外された無宿者に対して、温かい眼をもって、かれらのうしなわれた戸籍をふたたび作るようなつもりで書いたと思える無宿者銘々伝のような短編集の総称であり清張の造語である。戸籍のないかれらに戸籍を復活してやろうという気持からそう題したと思われる。銘々伝といっても江戸時代を通しては何方、何十万、あるいは何百万人もいたと思える無宿者だから、その一人一人を書くわけにはいかない.…犯罪をおかして人別帳から削られた男たちの生き方が、(清張の作品では)その数十人に典型化されていて、江戸時代中期から幕末に至る無宿者の縮図を見る思いがする。」と加太こうじは記している。前進座の「左の腕」の舞台では、中村梅之助が演じる無宿者卯助をとりまく庶民の眼は、あたかも清張の眼でもあるようだった。」・・・・・・・・・


 松本清張自身が「庶民の哀歓をにじませた世話物に仕上がった」と書いているが実感だ。
梅之助の鮮やかな演技を堪能したし、河原崎國太郎の松葉屋・女主人の色気も秀逸だった。松葉屋使用人「おきみ」を初役で演じた上沢美咲も素直な感じがうまくでていて良かった。

    前進座をはじめてみたのは、学生時代の名古屋。「怒る富士」。体が震えた。
    今回の「左の腕」「江戸城総攻」もふくめて前進座の演目には、生き様を演じ、こういう時代に、「ああ良かった。明日からまた頑張るか」と励ましあうような空間があるのではないか。

 さて、前進座は「清張は劇場の大恩人」と書いている。座が非常に困難な時に海音寺潮五郎、水上勉らとともに「応援団」をつくったのだという。
生誕100年記念として、秋には「或る『小倉日記』伝」が上演されるという。機会があれば観たいものです。

また、福井県内では敦賀市でファイナル公演の一環として、三浦綾子原作「銃口」の上演が7月に有志で企画されています。