Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

ありすの部屋 #3 おにいたんの半生と反省(下)

2015-07-26 14:52:50 | ありす
偶然が紡いだストーリー?

ありす 滑り止めとはいえ、晴れて大学に入るわけだけど。
おにいたん 大学受験の失敗を引きずっていて、新しい生活へのモチベーションなんてないに等しかった。
ありす おにいたんは気持ちの切り替えが下手だから(笑)。
おにいたん 我ながらめちゃくちゃだと思うけど、入学式の日まで横浜のキャンパスで勉強するつもりでいた。でも実際は平塚のキャンパスでさ。
ありす えー!?
おにいたん そもそも仮面浪人の予定で下宿を考えていなかったからね。横浜でも新幹線の定期を買うつもりだったし、平塚ならギリ在来線でどうにかなるかなと。今にして思えばあんな長距離を4年も通ってバカだったとしか言いようがないけど。
ありす どうでしたか、平塚のキャンパスは。
おにいたん 「湘南平塚キャンパス」っていうから海が近いのかと思ったらすごい山奥だったんで拍子抜けした(笑)。
ありす 名前に騙されるパターン(笑)。
おにいたん 電車に乗っている時間は意外に負担じゃなかったけど、バスは座れないことも多くて大変だったね。道が混んでいると1時間近く立ちっぱだし。運よく座れたとしても途中で婆さんが乗ってきたりすると、俺は意外とそういう時に平気じゃないからさ(笑)。
ありす 予備校では友達ができなかったということだけど、大学ではどうだったの?
おにいたん サークルにも入らないし、友達も作る予定はなかった。まぁ正確には「作れない」だったのかもだけど。
ありす うん。
おにいたん だけど、最初に身体測定みたいなのがあって、その時に話し掛けてくる奴がいたんだよ。「絶歌」の著者なんだけど。
ありす 苗字がね(笑)。
おにいたん 無下に突き放すのもアレなんで、とりあえずふたりで講義に出たりしたんだけど、俺は最初から休みがちだったし、あいつからしたら不安だったんだろうな。ある日の体育の授業中に別の奴と話してた。
ありす そうなんだ。
おにいたん 俺は極度の人見知りだからさ。どうしようかって思うわけですよ。
ありす その輪に入るかどうかね。
おにいたん その時にどういう心境だったかは分からないけど、とりあえず近付いていった。胃をキリキリさせながら。
ありす 大袈裟な(笑)。
おにいたん で、しばらくは絶歌を間に挟んでの会話が続くんだけど、キャンパス内のマックに入ったら、あいつがトイレで席を立ったんだよ。
ありす うん。
おにいたん 俺は心の中で激怒したね。メロス並みに激怒しましたよ。
ありす なんで?(笑)
おにいたん 残されたふたりは初対面なわけよ? そんなん俺が一番苦手なシチュエーションだもの。今ならまだ平気だけど、当時はやっぱりダメだったから。
ありす 確かにね。
おにいたん また向こうも俺に負けず劣らずの人見知りだから。ただただ気まずい空気が流れた。
ありす なんか想像が付くよ(笑)。
おにいたん そこで非常にぎこちない会話を交わしたわけだけど、そいつが未だに付き合いのある友人なんだよ。「細雪」の著者。
ありす ああ、しょっちゅうケンカしていることでおなじみの(笑)。
おにいたん トムとジェリー(笑)。
ありす でもなんか感動的だな。偶然が紡いだストーリーじゃん。
おにいたん まぁ確かに(笑)。
ありす で、どうだったの? そのお友達の第一印象は?
おにいたん 香水の人っていうイメージしかない。
ありす また怒られそうなことを(笑)。
おにいたん あいつがずっとトイレに立ってたら消臭力とか要らないよ(笑)。
ありす だからやめなさいって。
おにいたん 大学に入ったのが2005年よ? もう10年の付き合いなんだからそれくらいのジョークはいいだろう。
ありす で、一緒に授業に出たり?
おにいたん 最初の頃、講義の課題の答えをあいつが教えてくれたんだけど、当時は車の教習所に通っていて、なかなか電話に出れなかったのね。それでも嫌な顔ひとつしなかったんで「ほんまいい奴やなぁ」と思った記憶があるよ。

自分自身を否定されても自分の書いた物を評価してもらえばいい。

ありす 他には何かある? 
おにいたん 英語の講義で一緒になった友達がいたんだけど、そいつがいつも指をフェラチオしていて正直引いた。
ありす フェラチオって(笑)。
おにいたん 爪を噛む奴はたまにいるけど、それとはまた違う感じ。
ありす そう(笑)。
おにいたん 彼は茨城出身だったんだけど、俺が「いばらぎ」と言ったら「いばらき!」って間髪入れず訂正してきた。
ありす 絶対に譲れない部分だったんだろうね(笑)。
おにいたん そいつと一緒に受けた英語の先生がバーリィっていう女なんだけど、ほんとに嫌な奴で。
ありす どんな風に?
おにいたん 「この大学はスポーツ推薦の学生ばかりでレベルが低い」とか平気で言うんだよ。
ありす 他になんか印象深かった授業はある?
おにいたん ぶっちゃけ俺は経済にも経営にも興味がなかったけど、文章表現法はなかなか楽しかったかな。
ありす ああ、いかにも好きそうですね(笑)。
おにいたん 講義の最後に文章を書かされて、優秀な作品が翌週みんなの前で紹介されるんだけど、俺は何度か選ばれたよ。
ありす さすが(笑)。
おにいたん あと、俳句入門っていう授業も優秀な句が紹介される形式だったんだけど、俺は数度選ばれたりした。
ありす ただの自慢話になってきてるぞ(笑)。
おにいたん その講義は絶歌と受けたんだけど、あいつに「俺のが選ばれたよ」と言ったら「どれ?」って聞いてくるんで教えたら「え!? それ、最初からいいと思ってた!!」って。
ありす うん(笑)。
おにいたん あいつは俺のことが嫌いだし、お世辞を言うとも思えないんで、そう褒めてもらったことがとても嬉しかった。
ありす 嫌われてるのはいいんだ(笑)。
おにいたん 俺は自分自身を否定されても自分の書いた物を評価してもらえばいいって考えだから。それは今でも変わらない。
ありす ちなみにその句は覚えてる?
おにいたん 「曇る窓 小さな画伯の 猫歩く」
ありす ほぉ。
おにいたん バスなどの曇ったガラスに子供が猫を描いているっていうね。
ありす まぁ風情はあるかな。
おにいたん ただ、季語がないよね。大丈夫だったのかなぁ(笑)。

自分が嫌われることさえ厭わず叱ってくれた。

ありす 細雪の人との思い出を聞きたいんだけど。
おにいたん すごい印象に残っているのが、うちの大学は周りに何もなかったからコンピュータ室で時間を潰すことが多かったのね。
ありす うん。
おにいたん ある日、絶歌がPCのログインパスワードを忘れたというんで、細雪が自分のパスを貸してやったんだよ。自分は講義に出るからって。
ありす そうなんだ。
おにいたん そしたらお気に入りとか見れちゃうけど、その中に細雪が密かに書いているブログがあった。
ありす まさか読んじゃったの?(笑)
おにいたん いや、絶歌が読もうとするから必死に止めた。「俺にも見せろ! 早くしろよ! あいつ戻ってきちゃうだろ!」って。
ありす 全然止めてねぇ(笑)。
おにいたん そこには「お金ない。バイトしなくちゃ。でも失敗しそうで怖い」的なことが書いてあって。
ありす 言っていいのかな、それは(笑)。
おにいたん 絶歌は「そんな奴だったとは」ってすごい驚いてたな。俺はそうでもなかったけど。
ありす おにいたんは意外に嗅覚の鋭いところがあるから。
おにいたん で、絶歌に「お前らそっくりだな」って散々笑われたんだよな。あいつがこっそりブログなんかやっているばかりに(笑)。
ありす ひどい逆恨み(笑)。そんな似た者同士の学生時代はどうだったの?
おにいたん 普通にお酒を飲んだり、カラオケに行ったり、一時期ボウリングにハマったな。あいつはユニークな投げ方をするんだよ。
ありす え、どんな?
おにいたん ボウリングって普通は牧田とか山中みたいな投げ方じゃん? でもあいつは十亀なんだよな。まぁいつか機会があったらYouTubeに動画を上げるよ(笑)。
ありす じゃあ今みたいにケンカしたりはしなかったのね?
おにいたん ケンカというか、これは完全に俺のミスだけど、あいつと合同企業説明会に行く約束をドタキャンしてしまったり。
ありす それはひどいな(笑)。
おにいたん 簡単に言うと連絡ミスなんだけど、まぁ言い訳はできないね。
ありす でもそういえばおにいたん「あいつは時間にルーズだ」とか愚痴ってなかったっけ?
おにいたん 俺はどうしようもないっすね。ほんとすみません。
ありす にも関わらず、お友達は就職活動をしないおにいたんの心配をしてくれたんでしょ?
おにいたん そうなんだよね。4年生になっても全然フラフラしてたんだけど、あいつはそんな俺を叱ってくれた。
ありす 感謝しなきゃね。
おにいたん でも当時は「うるせぇな。お前は俺の親かよ」と思ってた。あくまで「当時は」ね。
ありす うん。
おにいたん 詳しく話すのは初めてだと思うけど、ある日、俺がたまたまJRA職員の募集を見つけて応募しようとしたんだよ。そしたらあいつが「お前は自分の好きなことしかやろうとしないな」って。
ありす すごい的確なツッコミ(笑)。
おにいたん そう。図星だったんだよ。だからカチンと来て、そのあとあいつが話を振ってきても適当な返事しかしなかった。確か血液型占いの話だったと思うけど「そんなの当てにならねぇだろ」みたいな。
ありす 感じ悪い(笑)。
おにいたん それがふたりで学食に向かう途中だったんだけど、あいつも堪忍袋の緒が切れたようで「用事思い出した」ってそのまま帰っちゃった。
ありす 仕方ないね。
おにいたん そこからしばらくは距離を取ったんだけど、まだこの段階では俺も意地を張ってる部分があった。
ありす よっぽど悔しかったのね(笑)。
おにいたん それでも一応仲直りというか、久しぶりに話したその日に平塚の七夕祭りへ行った。
ありす へぇ。
おにいたん あの日は俺と絶歌があいつんちに泊めてもらったんだけど、部屋を片付けるからってずいぶん長く外で待たされたんだよね。一体何を隠していたんだろう(笑)。
ありす おにいたん、めっちゃ悪い顔してる(笑)。
おにいたん また普通に話すようになって、その後も同じように就職のことを言われてさ。そうなって初めて気が付いた。あいつは心から俺の将来を憂いてくれてるんだなぁと。
ありす ちょっと遅いけどね(笑)。
おにいたん 親切ぼかして心配するポーズだけ取るような奴は世の中にいくらでもいる。だけど、あいつは自分が嫌われることさえ厭わず叱ってくれたわけで、そんな奴とはなかなか出会えないと思う。
ありす うん。
おにいたん でも俺は「見つめ合うと素直にお喋りできない系男子」だから、絶歌に「あいつはほんといい奴」と吹き込んで、本人に気持ちを伝えようとした(笑)。
ありす 伝書鳩じゃないんだから(笑)。
おにいたん その結果「お前にとって細雪は特別な存在だけど俺のことなんてどうでもいいんだろ」とか言われて、本格的に嫌われてしまったという(笑)。
ありす あちゃー(笑)。
おにいたん 別に絶歌のことだって全然嫌いじゃなかったんだけどね。
ありす うん。
おにいたん ちなみにこの就活の時のことはあいつに対して3番目に感謝していることで。
ありす え、もっと他にあるの?
おにいたん 学生時代、鳥嫌いの俺のためにコンビニ前の鳩を蹴散らしてくれたのが2番目。
ありす いやいや……。
おにいたん 今年一緒に遊んだとき、カラスのいる道を一緒に迂回してくれたことを最も感謝している。
ありす きっと本心は違うと思われるのでどうか許してあげてください(笑)。

あの時の純粋な気持ちは忘れちゃいけないのかもだね。

おにいたん 2009年の3月はふたつの卒業が重なった。
ありす ひとつめは?
おにいたん 童貞の卒業。就活の最中に出会った女の子と浜松町のラブホに入ったんだよね。
ありす どんな女の子だったの?
おにいたん 結構なブスだったんだけど、この機会を逃したら一生やばいかもと思って強引気味に誘い込んだ。
ありす ブスって(笑)。
おにいたん ただ、性格はよさげだったし、すごい話も合ったし、また会えたらとは思うけどね。
ありす 数年前に「メアド変えました」的なメールが来たんでしょ?
おにいたん そう。でも散々迷った挙句、返信できなかった。自動で全員に送っただけかも知れないし、少し会っただけの男が返事したら「マジきもい」とか思われるんじゃないかと。
ありす 被害妄想がすごいな(笑)。
おにいたん 友達にまでメールを回されて俺は恰好の笑い者にされるんじゃないかと(笑)。
ありす もはや病気だな(笑)。
おにいたん で、ふたつめはもちろん大学の卒業式だけど、とても印象的な1日だったね。生涯忘れ得ぬほどに。
ありす おお。
おにいたん 細雪のご両親がいらしてたんだけど、お母さんの顔があいつと瓜ふたつなんだもん(笑)。
ありす 印象的ってそこかよ!(笑)
おにいたん 卒業式のことは正直覚えてないな。デジカメで撮った写真をまだもらってないから。
ありす そういうのはいいから(笑)。 
おにいたん 真面目な話、まぁなんだろうな。そりゃ俺だってね、うん。でもそれはやっぱりさ。
ありす おっしゃりたいことが全然分かりません(笑)。
おにいたん まぁいいじゃん。本当に大事なことは胸にしまっておきたいし。
ありす この日はお友達とふたりと過ごしたの?
おにいたん いや、女の子もふたりいて酒を飲んだりした。そのうちのひとりが絶世のブスでさ(笑)。
ありす 絶世の美女ならぬ(笑)。 
おにいたん その女の子が細雪のことを片思ってるのを知っていたんで、散々いじりまくって。今になってあの時のあいつの心情を考えるとちょっと笑えるけど。
ありす お別れの時はどうだったの?
おにいたん えっと、写真がないから……。
ありす 最後に平塚駅で別れるとき、ふたりとも泣いていたらしいね。 
おにいたん おい!
ありす だって自分で言おうとしないから(笑)。
おにいたん …………。
ありす この記事は別れた後の電車の中で書いたんでしょ?
おにいたん いま読み返すと面映ゆい感じだけど、あの時の純粋な気持ちは忘れちゃいけないのかもだね。

震災の時期だけは自分がニートである負い目が薄らいだ。

ありす で、迎えた4月1日。ニートになった日の話を聞きたいのだけど。「メロス失格」はこの日のことを書いたお話なんだよね?
おにいたん うん。
ありす 「携帯の着信履歴を眺めながら、僕は寝坊助な自分を恨んでる」ってとこの意味だけ分からないんだけど?
おにいたん あの朝に「いま話せる?」というメールが来たんだけど、俺は寝てて返事ができなかったから。
ありす 「恨んでる」っていうのは?
おにいたん あいつにすごい心配してもらったのに自分は何も返せてないっていう思いがあったからさ。少しでも力になってあげたかったんだよ。
ありす 優しいじゃん(笑)。
おにいたん あの頃と今とでは色々変わりすぎてしまって、今さらあいつが俺を頼ることなんてありえないのも分かってるけどさ。自分の中で「蟻のママなら蝶がパパ」はやりすぎだったという後悔もあったし、昔の気持ちを思い出して戒めにすると同時に、あいつへの感謝の意を示せたらいいかなと。
ありす なるほど。
おにいたん そういうピュアな動機で書いた記事だから、なんとか伝わってほしいと思ってる。
ありす で、仕事のない生活はいかがでしたか?
おにいたん 高校を辞めてから俺は脇道に逸れることに慣れちゃってるし、その前の春休みの自堕落な生活の延長みたいな感じで、特に変わったことはなかったよ。
ありす でも内面は違ったでしょ。
おにいたん それはそうだよ。家族の顔色を常に窺っていたし、夜中まで起きていても早めに電気を落としたりして。
ありす どゆこと?
おにいたん 「あの部屋、いつも遅くまで電気が付いてるけど、仕事とかしてないのかしら?」なんて思われるのが怖かった。
ありす そうなんだ。
おにいたん 何をしていても楽しめなかったし、やっぱり負い目はあったよね。それでいて一歩を踏み出すことへの恐怖は克服できなかったし、自分でも本当に辛かったよ。
ありす 自業自得だけどね(笑)。
おにいたん そんな日々が続いて、バイトさえやったりやらなかったりだったんだけど、2011年に地震があったじゃない?
ありす 東日本大震災ね。
おにいたん 俺自身、あの時は色々なことを考えさせられたし、被災地の惨状には胸が痛むばかりだった。
ありす うん。
おにいたん ただ、非常に不謹慎なことを言うようだけど、日本中が混乱に陥って、社会全体が麻痺して、あの時期だけは自分がニートである負い目が薄らいだ。
ありす 社会の混乱に上手く紛れられたってことね。
おにいたん 東北の数日後に静岡でもかなり大きい地震があったけど、おばあちゃんがうちに避難に来て、そのまま泊まっていったんだよね。
ありす うん。
おにいたん そのとき帰ってゆくおばあちゃんの背中を見ながら「うちに来るのはこれが最後かも知れないな」と思った。もちろん癌だということは知っていたけど、なんか思ってはいけないことは思ってしまった気がして、俺って昔からそういうところがあるんだよな。
ありす 実際、そこからほぼ1年後に亡くなったんだよね。
おにいたん その2日前にお見舞いに行った時はもう完全に喋れない状態だったけど、俺の顔を見るなり必死に何かを伝えようとしていた。自分の中でおばあちゃんが言わんとすることは理解したつもりだし、それは一生守っていかなきゃいけないと思ってる。

思い出の2010年クライマックスシリーズ。

おにいたん ニートの思い出と言ったら野球は切っても切り離せないな。
ありす ああ、おにいたんはホークスを応援していたんだよね。
おにいたん ちょっと馴れ初めの話をすると、大学を卒業した年の夏、確か7月くらいだと思うけど、突然リビングのテレビが壊れてしまって。ちょうど地デジがどうこう言われ始めた時期だったんで新しいテレビを買うことにした。
ありす 液晶テレビね。
おにいたん 地デジ化するには屋根にアンテナを立てる必要があるのだけど、なぜか親父がアンテナ嫌いなんだよね。見栄えを気にして。
ありす それは知らなかった(笑)。
おにいたん だからケーブルテレビに入ることになったんだけど、無料のチャンネルにJ sports ESPNというのがあって。それがホークスの主催試合を流しているチャンネルだった。
ありす うん。
おにいたん それでだんだんハマっていった。当時は川崎宗則がいて、彼はほんと面白い選手だったから。バッターボックスの中で反復横跳びをしたり、投手の牽制球で帰塁する時に腕立て伏せをしたり。
ありす へぇ。
おにいたん あとは攝津ね。あの年はまだ入団したばかりでリリーフをやってたんだけど、とにかく凄まじい制球力だった。キレのある直球がコース一杯に決まるからバッターは見逃し三振が当たり前なんだよ。シンカーもよかったけど、俺は左打者のインローに投げるストレートが好きだった。
ありす なるほど。
おにいたん その攝津が投げるのが7回で、8回に登板するのがファルケンボーグですよ。彼の真っ直ぐは確か157km/hくらい出ていたけど、大谷あたりと比べても破壊力が違ったね。
ありす あの大谷投手より!
おにいたん 去年からクローザーをやってるサファテもすごい投手だけど、それともまた少し違う感じで。サファテの真っ直ぐが「ビュン」だとするとファルキーは「ドスン」。身長が2mくらいあって高いところから投げ下ろす感じ。
ありす なるほど。
おにいたん ちなみにファルケンボーグの娘は俺と同じ誕生日なんだよね。出産に付き添うためチームを離れたからよく覚えてる。
ありす 7回8回と来て、9回は?
おにいたん 馬原も悪い投手ではないけど、そこまで熱っぽく話す要素もないっていうか(笑)。まぁバファローズで頑張ってくれたら。
ありす なんかドライだな(笑)。
おにいたん そうこうするうちビジターの試合も観たいからってことでBSCSの契約をして、そのあとホークス戦がFOX SPORTSというケーブルに用意されていないチャンネルに引っ越したのを機にスカパーへと移行した。
ありす 思い出に残ってる試合とかある?
おにいたん 2010年のクライマックスシリーズじゃないかな。
ありす ああ、優勝したのに日本シリーズに行けなかったという。
おにいたん 里崎あたりが「下剋上」とか言い出してさ。杉内を引っ張りすぎたり、大隣を早く下げたり、継投も失敗だったと思うから、とにかく悔しい気持ちしかなかった。
ありす でも翌年は日本一になったんだよね?
おにいたん そう。1年前のことがあるから喜びもひとしおで。
ありす 優勝の要因は?
おにいたん 前年の失態を目の当たりにした孫オーナーが本気を出したから(笑)。内川や細川が入ってきたのがこの年だった。
ありす へぇ。
おにいたん と言いつつ、内川は故障がちだったし、細川もエースの杉内とは一度もバッテリーを組まなかったんだけど。その内川の穴を松田や松中が埋めたのが大きかったんじゃないかな。
ありす そうなんだ。
おにいたん そういえば今年松田って結構ホームランを打っているらしいじゃない?
ありす うん。
おにいたん 2011年というと最もボールが飛ばなかった時期で、しかも当時はホームランテラスなんてなかった。そんな最悪の条件下での25本塁打は誇れるはずだし、たまに福岡の解説者でも「松田は本質的に中距離ヒッター」とか言う奴がいるけど、俺はそんなことないと思うんだよな。
ありす この頃のホークスについて語らせると止まらなくなっちゃうね(笑)。
おにいたん それだけ依存していたんだろうね。てことは最近熱が冷め気味なのは健全と言えるのかも知れない。
ありす そうだね。
おにいたん 俺は競馬に対しても上がり下がりを繰り返して今があるし、完全に野球を観なくなることはないと思うけど。
ありす 一旦好きになっちゃうとね。
おにいたん 最近不調とはいえ、柳田あたりはやっぱり見ていて楽しい選手だしね。俺としてはなるべく早くアメリカに行ってほしいけど。ああいうフィジカルモンスターがMLBで通用するのか、すごい興味があるから。
ありす なるほど。
おにいたん そしたら外野の席がひとつ空いて江川君にお鉢が回るかも知れない(笑)。

この間柄がどこまでも続けばと思ってる。

ありす そういえば細雪の人とまた付き合うようになったのっていつ?
おにいたん PS3を買って間もない時期だったから2012年の頭じゃないかな。警官を辞めて、しばらくフリーターをやっていたそうだけど、また仕事が見つかったのを機に。
ありす そうなの。
おにいたん そこから紆余曲折を経て現在に至る、みたいな。
ありす 雑な説明(笑)。ところでお友達はなんで警察を辞めたの?
おにいたん 言えるわけないだろ。そもそも俺だってはっきり聞いたわけではないし。
ありす 友達なのに何も知らないのね(笑)。
おにいたん でもおおよそは分かってるから。こんな感じかなぁってのは。
ありす ああ、そう。
おにいたん この感じが大事なんだと思うよ。全て話さなくてもという、この感じ。
ありす なるほど。 
おにいたん よく「愛してる」という言葉を強要する女がいるけど、言わなきゃ感じられない愛なんて所詮その程度のものなんだと思う。
ありす まぁね。
おにいたん そういう意味では俺たちは互いを真の意味で愛でているのだと思う。
ありす おお。 
おにいたん ひとつだけ本音を言うならば、俺はあいつのことをすごい尊敬してるよ。自分の武器みたいなものを全く生かせなかった人間だけど、彼はそれができているから。
ありす そうだね。
おにいたん やっぱり今の俺があるのは彼のおかげだって思う部分もあるし。だからこそ仕事が決まったことも真っ先に報告した。
ありす なるほど。
おにいたん 俺は予備校生の頃までが人生の底で、そこから少しずつ上向いてきた感覚があるからさ。そういう意味では静岡駅をふたりで歩いたことは相当に感慨深い出来事だった。ましてや予備校の前まで通っちゃったし。
ありす 「通っちゃった」じゃなくて「通らせた」が正解でしょ(笑)。
おにいたん 本当に色々あって、お互いがお互いの悪いところを知り尽くしているはずだけど、にも関わらずまた遊んだりするのはとても値打ちあることだし、この間柄がどこまでも続けばと思ってる。
ありす そうだよね。
おにいたん それに性格だって絶歌の言うように似通った部分はあるのかもだと思う。
ありす うん。
おにいたん そしてついには顔まで似てきてしまった。
ありす ガールズバーで言われたらしいね(笑)。
おにいたん てことは俺もあいつのお母さんにそっくりということになる。
ありす それは違くね?(笑)
おにいたん つまりあいつは俺の介護をする義務がある。
ありす だから違うっつーの(笑)。
おにいたん そんな親子同然の友人にひとつだけお願いがあります。 
ありす なんでしょう。
おにいたん これからうちのトイレに立ち続けてもらいたい。
ありす いい加減にしなさい(笑)。

あとがき。

ありす 幼少期からの思い出を語ってもらったわけだけど、どうですか、今の心境は。
おにいたん ただただ疲れた(笑)。
ありす そりゃそうだろうけどさ(笑)。
おにいたん 頑張って話したつもりだけど、読み返してみると意外と漏れちゃってるね。中耳炎の治療が辛かった話とか、歯医者で麻酔が効かないままに抜歯された話とか。天野君の電話代が10万円を越えたっていう話とか(笑)。
ありす トークの流れもあるし、そのくらいは仕方ないでしょ。
おにいたん どうしてもひとつだけ話しておきたいことがあるんだけど。
ありす どうぞ。
おにいたん 家族で旅行に出掛けたのは中2の時が最後で、4人で諏訪湖近くの旅館に泊まったんだけど、当時は包茎予防のためにおちんちんの皮を常時剥いておいたのね。でもかなり強引に引っ張っていたから、亀ちゃんの下で皮がパンパンに腫れて、しかもそこが膿んじゃって、パンツの布に張り付いてしまったんだよ。温泉に入るとき、なかなかパンツを脱げなくてすごい困った。
ありす なぜそれをわざわざ話そうと思ったのかしら(笑)。
おにいたん ちょっと真面目な話をすると、今まで俺は高校時代を境に人格が変わったものと思っていたのね。
ありす うん。
おにいたん でも食べ物の好き嫌いとか、昔から全く変わっていない部分もあって、逆にそれが新鮮に思えたりした。
ありす なるほど。
おにいたん 30年生きてきて、1日1日、ほんの些細な変化を繰り返して今があるわけだよね。それを改めて実感したし、自分の周りにいる人たちには深く感謝したいと思う。
ありす そうだね。
おにいたん 俺は決して完璧な人間じゃなくて、躁鬱は激しいし、失言も森喜朗ばりに多い。
ありす 自覚あったのね(笑)。
おにいたん そして今回の対談にも際どい表現が含まれているのかも知れない。
ありす 際どいどころじゃないでしょ(笑)。
おにいたん そういった諸々のことをお詫びしつつ、立派な30才になれるよう頑張ります。すみませんでした。
ありす ありすからもごめんなさいです。この人が次にまた何か変なことを言ったら、あたしが責任を持って「射精後もしごき続けるの刑」に処します。
おにいたん それ、一番辛いやつじゃんか……。


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