Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

STAND BY ME?

2015-08-18 19:14:07 | Weblog
 やっと帰った故郷には今やトカゲの姿すらなく。夏の風に幼き声を這わせ、世界はいつも遥か遠く、夕立が作った水面にあの日の自分を探す。

 いつの日から人は振り返ることを覚えるのだろう。ここまでの道のりさえ今となっては不確かだけれど、脳裏に浮かぶその笑顔はどれもいと恋しくて。きっと涙も流したはずなのに、セピア色のスクリーンが映す景色は凄惨な過去すらも美しく挿げ替えてしまう。

 幾つになっても僕はまたお留守番の君の元を訪ねてしまう。たとえ胸が痛むと知っていようとも、いっそまたその優しさに甘えるかのように。決して忘れまいと誓った矢先の過ちをそっと詫びながら、そんな後悔を何万回繰り返せば僕は大人になれるのか。

 気付けば年を取りすぎてしまった自分がいる。衒いのない日々に帰る術などありゃしもなくて、不完全な運命に抗うこともできぬまま、本当は今だって世間を見返してやりたいはずなのに。そんな人生に手を振り、心の鍵をきつくロックして、僕は僕を諦めてしまうのか。

 流れる雲が次々に僕を追い越してゆく。時は流れて70才になったとき、まだ隣に居てくれたらなんて。ぶかぶかの靴をマジックテープで留めて、もう二度と転ぶことのないように。そんなことを想いつつ、日記帳をめくる指先に秋を探せば、消えゆく青春が滲んで見えた。


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