Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

8.6秒マシンガン

2015-02-23 23:05:45 | Weblog
 昼下がりのクラスルーム。男子は辺りを駆け回り、女子は大声でお喋りをする。まだ机の上に食器が並んだ生徒もいる。そのどれもがいつも同じようなメンバーで、そのどれもが昨日を鏡写しにしたような光景だ。

 そんな日常を打破すべく、ひとりの少女が散弾銃をぶっ放す。不意の銃声に刹那の静寂が刻まれたのち、嫌味の多い教師もいじめっ子の男子も一斉に逃げ惑う。まるで100m走のスタートのようだ。中には他の者を盾に自分の身を守ろうとする輩もいる。あのふたりは仲が良かったんじゃないのか。彼女はクラスメイトの人間関係を知悉していた。その相関図の中に自分の名前はなかったけれど。

 必死の形相は皆ブサイクだ。仮面を1枚剥いだとき、誰しもの容姿が醜くなる。性格も、学力も、運動神経も、全て関係ない。先天的な才能も、積み重ねた努力も、何もかもが水泡に帰す。今ここに新たな世界が始まる。なんという愉悦だろう。永遠の明日を人は誰も信じがちで、そして人は誰もあまりに夢見がちだから、理想を謳い願うほどにまた少し学び舎が傾いでゆく。

 彼女はなおも銃をぶっ放す。大好きなこの世界を作り直す、ただそれだけのために。空っぽになった教室。自分の机に置かれた花瓶に少女は1輪のチューリップを挿した。耳をそばだて春の息吹を感じれば、新しい世界が滲んで見えた。