Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

某事件について体験したこと・考えたこと Part3

2023-06-23 23:52:49 | Weblog

 竹下通りでの取調べの数日後、担当の刑事さんから電話があり、検察庁に行くよう指示を受けた。あらかじめ「検察の取調べがあるかも」と聞いていたので驚きはなかったが、いわゆる書類送検!?と思うと若干へこんだ。

 当日は乗り換えをミスってしまい、約束の16時ギリギリで霞ヶ関駅に到着。ま、東京地検のホームページに「B1a出口から徒歩3分」と書いてあるし、どうにか間に合うでしょ……と思いきや、歩けど歩けど建物に辿り着かず。賃貸物件の駅徒歩とかなら珍しくもないが、君らが詐欺るのはどうなのさ、と我が身を棚に上げて腹を立てる。

 それにしても霞が関という土地からは独特の威圧感を感じる。半端者の自分は明らかに群衆に溶け込めていない。カジュアルな服装で来たこともあるけれど、それだけではない気もする。

 ようやく検察庁に到着すると、入り口の門のところで守衛のおっちゃんに呼び止められた。自分や社長の名前を伝えるも、照会に手間取っているようで、大幅な時間ロス。「巨大の巨です」「大臣の臣ね」というやり取りが3回ほど繰り返された(笑)。
 中に入ってからも、手荷物検査を受けたり、空港の金属探知機のようなゲートを潜らされたり、変なバッジを付けさせられたりと、やたら段取りが多い。俺は慣れない場所で慣れないことをするのが病的に苦手だ。

 エレベーターの出口で迎えてくれた検事さんはとても朗らかで優しそうな女性だった。失礼ながら普通のおばちゃんというか、ステレオタイプの女検事とは程遠い感じ。
 事務官の女性は恐らく20代だったと思うが、お風呂上がりのような匂いがして、危うく興奮しそうになった。

 オフィスの一角のような場所で行われた取調べは、警察と同様、ショートメールに関する質問が中心。室内には担当検事と事務官以外にも数名いたが、こちらの会話に耳をそばだてている様子はなかった。
 ちょうど俺の正面に「在宅」「身柄」という紙の貼られた棚があって、透明人間になったら女湯の次に覗きたいなーと思った。

 いくら朗らかな女性検事とはいえ、さすが激ムズ試験を通ってきただけあって「○○攻撃は存在しないと分かっていたのに、被害者が病気とも思っていなかったと。矛盾してません?」とドキッとするようなことを聞かれた。
 一瞬狼狽したものの「病気でなくても猜疑心の強い人はいる。そういう人たちだと認識していました」と自分でも驚きの満点回答。

 その後は、調書の作成に苦労していたので助け舟を出すと「さすがライターさんですね」と褒めてもらうなど、和やかなムードで取調べは進んでいった。

 しかし1つだけ聞き捨てならない話を聞かされた。検察が俺を呼んだのは、Aが「サイト周りは全てMに任せていた」と供述しているからだという。
 まず断言しておくと、それはあまり正しくない。記事の些細な言い回しにまで赤ペンが入ることも珍しくなかったし、特に機嫌の悪い時は八つ当たりのように修正指示を出してきた。サイト運営の全権はAにあったというのが俺の認識だ。
 そもそもAは自分や会社への忠誠心を強めに求める人だったのだから、いざという時には自ら泥を被るのが道理ってもんじゃないのか。

 一方で「Aさんミスったな」と冷静に考える自分もいた。俺に全て任せていたというのは無理筋であって、過去のメールを漁ればすぐに嘘がバレる。俺が反証を挙げることだって容易い。
 だから自分がAの立場だったら「Mに権限を与えたら暴走した。私は窘めていた」くらいに留めたと思う。これなら反証を挙げるのは難しかったはずだし、憎きライターにかすり傷くらい付けられたかもしれない。

 ともあれ、ここが今日のハイライトだと思ったので、マスクの下で唇を噛み、1オクターブ低い声で「(サイト周りを全て任されていたというのは)事実と異なります」ときっぱり否定。我ながら姑息だと思うが、当時はとにかく必死だったのでお目こぼし願いたい。

 他で気になったのは、やたら「会社の人たちから連絡とか来てません?」と心配されたこと。そう言えば警察でも同じことを聞かれたっけ。「Aはすでに釈放されたのか?」「部下はキャッチ&リリースだったのか?」など色々想像したものの、真相は知る由もない。

 正直、べらぼうな熱量でAを追い詰めんとする警察に比べて、検察はどこか冷めているようにも感じた。少なくとも事件が大々的に報道されたことに対しては不快感を示していた。
 検事さん個人の気質などもあるにせよ、より法律に詳しい検察官にはAらの起訴が難しく感じられるのか?とこの時点では思ったりした。

 取調べが終わると調書や証拠品に押印していったが、何度押しても苗字の左半分がかすれてしまう……。
 検事さんには「ハンコが欠けてるんじゃないですか?」と言われたが、家で試すと問題なかったので、朱肉の問題か、緊張で手が震えていたかのどちらかだと思われる。

 検察庁を出たのは18時過ぎ。警察の取調べより短時間で終わり、まだ余力もあったので、ふと思い立って神宮外苑まで歩くことにした。
 しかし運動不足のアラフォーには割としんどい距離だったうえ、いちょう並木も緑強め。JKとおぼしき女の子がたくさんいて目の保養になったことだけが救いだった。



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