Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

ありすの部屋 #3 おにいたんの半生と反省(中)

2015-07-25 22:05:06 | ありす
俺は友達にも最低限の容姿を求めるから。

ありす おにいたんの高校は進学校だったんだよね?
おにいたん 別にもっと上はあるくらいのレベルだけどね。中学時代に宿題をサボりまくったせいで、テストの点数の割には内申点が芳しくなかったし。
ありす ライオンズの高橋朋己と同じ学校なんだっけ?
おにいたん いや、同じ系列校ではあるんだけど、こっちの方が進学に特化した高校だったから。校舎も離れていたし。
ありす なんか嫌味な言い方(笑)。
おにいたん いやいや、朋己ちゃんは大好きだから。最近俺が見るとなぜか打たれるんだけど(笑)。こないだ秋山君の記録が止まった試合とか。
ありす で、いかがでしたか、高校生活は。
おにいたん うちの高校は中高一貫で、エスカレーターで上がって来た奴(内部)と俺のように高校から入った奴(外部)が半々くらいだったのね。
ありす うん。
おにいたん エスカレーター組はエスカレーター組ですでに人間関係が構築されているわけだろう。その中に入っていくのが最初は面倒に思えた。
ありす なるほど。
おにいたん で、初っ端のオリエンテーションの時に外部の奴が話し掛けてきたんだよ。「友達になろう」って。
ありす よかったじゃない。
おにいたん でもそいつの容姿がいかにも不潔っていうか、いるじゃない、そういう奴。俺は友達にも最低限の容姿を求めるから彼のことはシカトした(笑)。
ありす ダメだよ(笑)。
おにいたん まぁでもすぐに友達はできたし、初めは外部で固まってたけど、そのうち内部の奴とも打ち解けていった。
ありす よかった(笑)。
おにいたん 最初の1ヶ月は東名のスクールバスで通学してたんだよ。うちはインターの近くにあるし、学校もそうだったから。
ありす 珍しいケースだろうね、それは。
おにいたん でも友達がみんな電車だったんで、すぐそっちに変えちゃったけどね。

あの高校は色々ズレてるところがあった。

ありす お勉強の方はどうだったんだろう。やっぱり義務教育とは違う?
おにいたん 私立だから定年退職した爺さんが講師として教えたりするんだけど、そいつらのせいで俺は勉学に挫折した。
ありす 先生のせいにしちゃダメでしょ(笑)。
おにいたん いや、ほんとにひどかったんだって。初めての数学の授業が間々田っていう気弱そうな爺さんだったんだけど「1次関数がモーニング娘だとするなら2次関数はイヴニング娘」って説明をしたんだぜ。
ありす 確かにそれは難しいな(笑)。
おにいたん そいつは離任式の挨拶でも訳の分からんことを言いまくってさ。みんなバカ受けして式の雰囲気がぶっ壊れて、やむなく校長が「静かに聞きなさい」って諭すんだけど、教師も全員笑ってるから収拾が付かなくなっちゃっていたね。
ありす そうなんだ(笑)。
おにいたん そして最後はなぜか「再見(サイチェン)」という中国語で締め括った(笑)。
ありす すごい(笑)。 
おにいたん そういや夏休みには勉強合宿てのがあったな。
ありす 勉強合宿!?
おにいたん 西湖の近くにある施設に缶詰めにされて、3泊4日でひたすら勉強。
ありす 大変そう(笑)。でも友達と一緒に過ごせばむしろ楽しいのかな。
おにいたん いや、楽しかねぇよ。すごいストイックな合宿だもん。トランプを持ち込んだ奴がガチで説教を食らっていたほどに。
ありす 厳しいな(笑)。
おにいたん そんな中で勉強したって実になるわきゃないんだよね。途中から疲労困憊てな感じだったし。
ありす まぁ確かにね。
おにいたん 正直あの高校は色々ズレていたね。
ありす というと?
おにいたん 大学受験に必要な英単語がおよそ4000語って言われているけど、学校で最初に買わされた単語帳が8000語だったんだよ。 
ありす 2倍(笑)。
おにいたん 人間って高すぎる山を見ると気持ちが萎えちゃうじゃん。相手が強いほど燃えるサイヤ人気質の奴も中にはいるのかもだけど、少なくとも俺はそうじゃねぇから。
ありす そうだよね。
おにいたん 俺も早慶レベルまでは問題を解いたけど、手応えとしては4000で十分だったよ。たとえ知らない単語が混じっていたって前後から推察することくらいできるし。あんまりマイナーな単語を覚えたところで、そういうのには注釈が入っているんでさ。
ありす うん。
おにいたん 英文の読解で最も大事なのは副詞節を切ってSVOCに分解すること。単語なんて最低限で構わない。ということに俺は浪人してから気付いたんだけど、高校時代はなんとなくモヤモヤしながら英語を勉強していたね。
ありす 勉強中の人がこの記事を読むことがあるかも知れないから、もう少しアドバイスをもらえる?
おにいたん 英語って語学だから結局感覚でしかないんだよね。「切れ目」を意識しながら繰り返し読み込むこと。俺はテキストの英文にひたすら斜線を引くだけの勉強法だったよ。

24時間ずっと競馬のことを考えていても全く飽きなかった。

ありす 他に何かある?
おにいたん そういえば校庭に鹿が出たことがあったな。
ありす ああ、山奥だから(笑)。
おにいたん 俺は本質的に目立ちたがり屋だから鹿を触りに行ったりして。内心ドキドキしつつ。
ありす 野生は少し危ない(笑)。
おにいたん 馬券を買い始めたのもこの時期だな。初めてウインズ横浜に行ったのはアグネスデジタルが天皇賞を勝つ前日。2001年の10月27日か。
ありす へぇ。
おにいたん その日のスワンSを1点勝負で仕留めた。ゴッドオブチャンスとタイキトレジャーのワイドに5000円入れて。いま調べたら6.4倍付いたみたいだね。
ありす 3万弱の儲けか。
おにいたん 最初はひとりじゃ不安だからクラスメイト(≠友達)と一緒に行ったんだけど、そいつが連れてきた知り合いが超キモイおっさんだったんだよね。宮崎勤みたいな顔でさ。
ありす まぁ競馬ファンだから。
おにいたん キモイだけじゃなくて性格も悪くて、俺の身長を延々いじってきたりして。
ありす おにいたんはチビだから(笑)。
おにいたん 俺もムカついたから、明くる日、学校でそいつの悪口を言いまくってやったんだけど、それが本人の耳に入ったようで。赤い字で「○○君。君は私の悪口を言っているそうだが、今すぐやめないと君や君の家族の安全は保障されないぞ」と書かれたわら半紙をクラスメイトを通じて渡してきた。
ありす 怖い(笑)。
おにいたん まぁやめなかったけど。そんなキチガイに屈したくないから。
ありす そういう気の強さは今と変わってないのね(笑)。
おにいたん 今でこそ金のためだけに競馬をやっている感じだけど、あの頃は純粋に馬を愛していたな。24時間ずっと競馬のことを考えていても全く飽きなかった。
ありす ところでおにいたんが競馬にハマったきっかけは?
おにいたん 中学の時に中古でプレステ版のダビスタを買ってそこからだね。スペシャルウィークやセイウンスカイあたりもギリ見てるよ。

火種を作ったのはKやNかも知れないけど、それに油を注いでいるのはお前自身だ。

ありす そして2年生に進級してからは?
おにいたん 色々あったけど、今まで散々書いてきたからいいんじゃない? あまり思い出したくもないし。
ありす いや、全て網羅することに意味があるわけですよ。
おにいたん GWくらいの時期だったかな。天野っていう一番仲のよかった友達がいじめに遭ったんだよ。しかもいじめている側もあろうことか俺の友達でさ。
ありす 最悪の板挟みだね。
おにいたん しかもヤツは電話魔だったから。学校から帰って来るとすぐに携帯が鳴って夜の7時過ぎまで話して、晩飯と風呂を済ますとまた掛かってきて今度は夜中まで話す、みたいな。
ありす ハードスケジュールだな(笑)。
おにいたん それが毎日だからね。自分の時間がないのがまずストレスだし、話の内容だって決して楽しくはないわけだろう。
ありす そりゃそうだ。
おにいたん 俺自身が参っちゃった部分もあるし、それにあいつもちょっと異常だと思ったからさ。ある日、たまたま電車でふたりになったんで諭してあげたんだよ。
ありす なんて言ったの?
おにいたん 「火種を作ったのはKやNかも知れないけど、それに油を注いでいるのはお前自身だ」って。
ありす うん。
おにいたん これはあくまであいつのことを想って言ったんだよ。精神的に煮詰まっているように見えたし、ちょっと考え方を変えないと辛かろうと思ったから。
ありす 分かるよ。
おにいたん 一方で「もう少し言い方を考えるべきだったかな?」という気持ちもあって。だから家に着いてすぐメールをした。「言いすぎた。ごめん」って。
ありす 返信は?
おにいたん なかった。その日は電話も掛かってこなかった。
ありす ああ……。
おにいたん 翌日は学校にも来なかった。
ありす 登校拒否だ。
おにいたん もう朝から生活指導室に呼ばれて事情聴取ですよ。体育の篠原って奴による。
ありす そういう時ってなぜか体育教師が出てくるよね(笑)。
おにいたん 話は逸れるけど、あいつも大概のクズだったな。
ありす というと?
おにいたん 保健の授業で、教科書に水俣病の患者の写真が載ってたのね。うちのクラスに日本とベルギーのハーフがいたんだけど、そいつに対して「この写真、お前にそっくりだな」って。
ありす すごいな(笑)。
おにいたん 確かに彼はちょっと気持ち悪くて、俺も「フォレストガンプ」って呼んでたんだけど。
ありす ハーフならみんなかっこいいわけじゃないのね(笑)。
おにいたん で、俺は篠原にひとしきり経緯を伝えたにも関わらず、そこで反省文を書けって言われたんだよ。
ありす 反省文!?
おにいたん かっこつけて言うわけじゃないけど、俺は自分が特別なことをしたとは思ってない。友達が傷付いている時に手を差し伸べるのは当たり前のことだし。本当はいじめている側を説得すべきだったけど、そっちとの関係が壊れるのを嫌ってそれをしなかったわけで、そういう部分では負い目もあった。
ありす うん。
おにいたん ただ、反省文はねぇだろうと。ここは俺の中で記憶があやふやで、書いたバージョンと書かなかったバージョンがあるんだけど。
ありす 本当はどっちなの?
おにいたん たぶん書いたんじゃないかな。
ありす どんなことを書いたの?
おにいたん それは別にいいだろ。もう覚えてないし、わざわざ思い出す必要もない。
ありす いや、ごめん。
おにいたん 10代の一番多感な時期にこういうことがあるとやっぱり精神的に荒れてしまう。
ありす うん。
おにいたん ただでさえ当時は鼻持ちならない若者だったけど、自分の中で完全に箍が外れちゃって、髪を派手に染めて登校したりして。
ありす まぁそれくらいなら普通の高校生でもあることだけどね。
おにいたん うちの高校は異様に校則が厳しくて、携帯を学校に持ち込んだら親を呼び出されるほどだった。
ありす 私立だからね。
おにいたん だから染髪なんてもってのほかで。そんなことは百も承知だったんだけど、もうどうにでもなれって思っていたから。
ありす どうにでもなれ(笑)。
おにいたん 案の定、学年主任に呼びつけられた。岩崎っていう苗字で、生徒からは「タル」って呼ばれてたんだけど。丸っこい体型だったから。
ありす 面白いあだ名だね(笑)。
おにいたん 倫理の教師で「ベジータ」と呼ばれている奴もいたな。由来は髪型(笑)。
ありす M字ハゲってことね(笑)。 
おにいたん そんで岩崎は毎朝下駄箱の入り口に立っていたんだけど、俺を見るなり「昼休み科学室に来い」と。
ありす 髪を染めていることに気付いて?
おにいたん まぁそうだろう。でも俺は「え、なんで?」って。
ありす いきなりタメ口(笑)。
おにいたん すると岩崎は「いいから来い」。俺は「説明しろよ」と返して、しばらく押し問答が続いた。
ありす 結局行ったの?
おにいたん 行ったよ。楽しいことが起こりそうだと思ったから。
ありす 楽しいことは起こりましたか?(笑)
おにいたん 部屋に入るなり「お前、生意気なんだよ!」って思い切り首を絞められた。
ありす 今の時代だったら大問題だな(笑)。
おにいたん まぁ俺もかなり挑発したわけで別にいいんだけどさ。ただ、あれは本気だったな。マジで殺されるかと思ったもん(笑)。
ありす でも根底には学校への不信感があったんでしょ?
おにいたん そう。だから教頭にも強く当たったし、担任のG先生には本当にひどいことを言ってしまった。
ありす そこは伏せ字なのね(笑)。
おにいたん 英語の先生なんだけど、旦那さんが外人で珍しい苗字だから(笑)。でもあの人は本当に親切だったな。俺が生意気ばかり言っても全部受け止めてくれたし、もしまた会う機会があったら土下座して謝りたい。
ありす そう思える人がひとりでもいてよかったね。
おにいたん それは本当にそう。あの頃は俺もかなりぶっ壊れていたからさ。皆勤賞で登校してはいたけど、昼休みとかにふと面倒になってそのまま帰っちゃったり。
ありす 問題にならなかったの?
おにいたん それで怒られたことはない。恐らくグルーシーが間に入ってくれていたんじゃないかな。
ありす 名前言っちゃった(笑)。
おにいたん 決して大袈裟ではなく、担任があの人じゃなかったら俺は自殺していたかもだと思う。
ありす うん。
おにいたん ある日、チャリで坂を下りている時に、俺はブレーキも掛けずにそのまま交差点へと突っ込んだ。
ありす えー!? 車は通らなかったの?
おにいたん 通っていたら俺は今ここにおらんだろうよ(笑)。自分としては別に死のうとは思ってなかった。ただ、友達に裏切られたこと、学校との折り合いが悪かったこと、全てが積み重なって、無意識のうちに自殺を企てたんじゃないか。

あの頃の俺はとにかくひとりになりたかった。

ありす おにいたんの中で辞めることを決めたのはいつ?
おにいたん 夏休みの間、ずっと色々考えていて、きっかけは分からないけど、ふと「もういいかな」って思った。川上憲伸がノーヒットノーランを達成した日だった。
ありす 2002年の8月1日か。
おにいたん その前からそういう気持ちはあったに違いないけど、ここで逃げたら天野と一緒だという葛藤もあって。
ありす 中退はスムーズだったの?
おにいたん いや、やっぱり自分の一存で決めれることじゃないから。親とも学校とも嫌ってほど話し合いを重ねた。俺自身、今後のことは深く考えていない部分があって「別に大検でも受ければいいんだろ」くらいの感じだったし。
ありす パパとママにはこれまでの経緯を話したの?
おにいたん 辞めるからには話さざるを得ないだろう。そりゃ俺だって本当は嫌だったけどさ。
ありす どんな反応だった?
おにいたん 「もう少し頑張ったらどうだ?」と。
ありす そう。
おにいたん 今ならあの人たちの気持ちも分かる。高校なんてほとんど義務教育だからドロップアウトは息子にとってもハンディになるし。嫌な話だけど、親の側からしても世間体の心配はあったのかも知れない。
ありす うん。
おにいたん でも俺はもう全く周りが見えないような状況だったから。親さえも味方じゃないのかと思えば、精神的に追い込まれて、ある日、とんでもないヤケを起こしてしまった。
ありす それは深く聞いていいの?
おにいたん 俺の中ではもう終わったことだけど、まぁいいでしょ。聞かされる方だってアレだろうし。去年の初め、ブログ用に動画を作ったとき、そのヒントになるような画像を使った記憶があるけど。
ありす 分かった。
おにいたん あの頃はよく海に行った。缶チューハイとポテチを持って。今の時代、こんなことをブログに書いたら炎上するのかもだけどさ。
ありす だいじょぶだよ。このブログにはコメント欄がないから(笑)。
おにいたん 海ってひたすら波音だけが響くから一切の雑音がシャットアウトされて心地いいんだよね。あそこは波乗りジョニーではなく真夏の果実的な海だから。
ありす 分かりやすい(笑)。
おにいたん あの頃の俺はとにかくひとりになりたかった。足繁く海に通ったことも、無意識のままに自殺を図ったことも、狙いとしては全く同じだったのかも知れないね。

通信高校なんて所詮はいじめられっ子の掃き溜めなんだよね。

ありす そして通信高校に転入するわけだけど。3年の頭からということいいのかな?
おにいたん そう。たぶん通信のシステムを知る人なんていないだろうから説明するけど、レポート・スクーリング・テストの3本をこなすことでひとつの単位が取得できる。
ありす なるほど。
おにいたん 俺の場合、進学校らしきところに2年間通ったおかげで、文科省が定める必要単位はほとんど取得済みだった。言い忘れたけど、最初の高校は土曜も午前だけは授業があったくらいだから。
ありす そう。 
おにいたん だから本来はちょろいはずだし、レポートも教科書が虫食いになっているだけの簡単なものなんだけど、結局俺は小学生の頃から家で勉強する習慣がないんでね。
ありす そのレポートはどうやって提出したの?
おにいたん 専用の封筒に15円分の切手を貼って投函するだけ。合格なら次のレポートが送られてくるし、ダメならもっかいやり直し。
ありす そうなんだ。
おにいたん さっきも言ったように基本は教科書を写すだけなんだけど、習字を書いて送ったことがあった。
ありす へぇ。
おにいたん お手本をなぞって出してやったんだけど、どうせバレねぇだろって思うじゃん。こっちもバカじゃないから微妙にずらしたり、そこら辺はきちんと計算していたし。
ありす うん(笑)。
おにいたん でも見る人が見ればやっぱり分かるようで。
ありす そうなんだ(笑)。
おにいたん 「写すことも練習法のひとつではあるが、これはレポートなので君の力で書いてみよう」って。めっちゃ嫌味っぽい言い方なんだよ。
ありす 悪いのはおにいたんでしょ(笑)。
おにいたん まぁね(笑)。
ありす スクーリングっていうのは?
おにいたん 日曜に沼津のとある高校の教室を借りて授業を受けるんだけど、現代文とかは普通と全然変わらない。自分の選んだ単位の授業を受けて、終わったらさっさと帰る。
ありす 大学と一緒だね。
おにいたん 体育の授業もあったんだけど、あれはちょっとショッキングだったな。
ありす というと?
おにいたん 最初に出席した時にドッジボールをやったんだけど、体育館がシーンとしてるの。みんなやる気もなくて俺が張り切っているように見えちゃうくらいだった。
ありす レベル高いな(笑)。
おにいたん 通信高校なんて所詮はいじめられっ子の掃き溜めなんだよね。あんな空気に染まるとダメだと思ったから、それ以降、体育はウォーキングの日を選んで出るようにした。
ありす テストっていうのは?
おにいたん レポートを何枚か出してスクーリングもこなすと受けれるようになるんだよ。飛鳥時代を終えたらそこのテストを受ける、みたいな。確かこっちから申し込む形だったんじゃないかな。
ありす 会場はスクーリングと一緒?
おにいたん うん。俺は勉強なんかしないから何度も落ちていたけどね。
ありす でもおにいたんはいわゆる高3だったんでしょ。まがりなりにも大学進学を考えているような人がそれじゃいけないと思うんだけど。
おにいたん 歴史は日本史も選べたのになぜか世界史を取っちゃったから。今は分かりやすい例として日本史の話をしたけどさ。
ありす 大学受験は日本史だったよね?
おにいたん そう。我ながらデタラメだと思うよ(笑)。
ありす あとは話し足りないこととかある?
おにいたん 通信にも卒業式があるんだけど、スクーリングとは違う場所で、駅からのアクセスも悪かったから、親父の運転で乗っけてってもらったの。で、早めに着いちゃったんで車で少し待ってるんだけど、会場にしょーもねぇチンピラみたいなのがたむろしてたんだよね。
ありす 通信高校の客層は両極端だから(笑)。
おにいたん で、それを見た親父が「あんな連中と一緒にされて悔しいだろうけど必ず見返してやれ」って。
ありす へぇ。
おにいたん 親父とは普段全然話さないだけに、すごく印象に残っているよ。
ありす 未だに見返せてないって話もあるけど(笑)。
おにいたん うるせーよ(笑)。

ライバルは他の受験生ではなくサンエイサンキューだった。

ありす 通信高校を卒業して、翌年は大学生になられたんですか?
おにいたん 知ってるくせに(笑)。
ありす ちょっと話は遡るけど、そもそも通信高校時代は受験勉強をしたの?
おにいたん 一応赤本は買ったよ。ほんと買っただけだけど。
ありす ダメじゃん(笑)。
おにいたん そもそも俺は高2の途中から全く勉強してないんだぜ。受かるわけないだろ。
ありす というわけで浪人時代の話を聞きたいんだけど。
おにいたん 予備校へ入って、最初にみんな集まって心得みたいなものを聞かされるんだけど、話していたのが結構偉い人だったらしいのね。テューターがすごくピリピリしていてさ。
ありす へぇ。
おにいたん そのお偉いさんの話の最中に寝てる奴がいたんだよ。そしたらめっちゃ怒鳴り始めて。俺はとんでもないところに来てしまったなと(笑)。
ありす 修羅場を経験しているおにいたんがそう思うんだから相当だね(笑)。
おにいたん 「朝起きたら大声で志望大の名前を三度唱えろ!」とかさ、俺は内心「バカじゃねーの」って。
ありす おにいたんがいかにも嫌がりそうな(笑)。
おにいたん まぁそいつの顔を見るのはそれっきりだったんだけど。その日、いきなりテストを受けたのね。
ありす うん。
おにいたん その結果を見て驚いたね。150人くらいの中で下から3番目とかなんだもの。
ありす ひどい(笑)。
おにいたん さすがの俺も焦った。今までの人生でそこまで落ちたことはなかったから。高校を辞める直前の定期テストは悲惨だったけど、そんなのノーカウントだと思っていたし。
ありす まぁね。
おにいたん で、そこから1ヶ月半は必死に勉強した。すると自分でも驚くほどに成績が上がったんだよ。
ありす おお。
おにいたん でもそれは俺にとって必ずしもプラスではなかった。
ありす どゆこと?
おにいたん 俺はやっぱり自分に甘いからさ。勉強しなくなっちゃったんだよ。
ありす 油断しちゃったのね。
おにいたん 授業なんてほとんど出なかったし、たまに出てもずっと寝てた。
ありす その光景が目に浮かぶよ(笑)。
おにいたん 予備校のある静岡駅に着いたあと、ふと思い立って川崎競馬場まで行ってしまったり。
ありす こらこら(笑)。
おにいたん ちょうどその日はジャパンダートダービーっていうレースが大井競馬場であってさ。
ありす うん。
おにいたん その場外発売が川崎競馬場で行われていて。大井まで行くのはしんどいけど、川崎ならどうにかなる距離だから。
ありす そうだね。
おにいたん アクイレジアを頭に固定してアジュディミツオーを消した馬券を買ったんだけど、お金を入れてマークシートを突っ込んだ時にほんの一瞬だけ目を逸らしたら、いかにも地方競馬場って感じのオヤジが近付いてきて、俺の馬券を持ち去りやりがった。
ありす あら。
おにいたん 本当は追わなきゃいけないんだけど、こっちも未成年だっていう負い目があるからさ。
ありす 泣き寝入るしかない。
おにいたん しょうがねぇからもっかい馬券を買い直すんだけど、肝心のアクイレジアが来ないっていうね(笑)。
ありす やっぱり神様は見ているんだよ(笑)。
おにいたん 夏の大事な時期にも模試をサボって桜木町へ行っちゃったり。札幌記念の日だったんだけど、洋芝が合いそうなサドラー(ローエングリン)とカーリアン(バランスオブゲーム)の馬単裏表を買ったら、ファインモーションが差してきやがった。
ありす 神様はいつもおにいたんを監視してくれている(笑)。
おにいたん 当時は家でも競馬のゲームばかりやっててさ。時々思い出したように勉強はするんだけど、ゲームをやりながらなんだよね。
ありす ゲームをやりながら!?
おにいたん ダビスタってレース中は何もすることがないからちょうどいいんだよ。その間に日本史のテキストを少し読んだりして。
ありす どう考えても身に付くとは思えない勉強法だな(笑)。
おにいたん 俺にとって当時のライバルは他の受験生ではなくサンエイサンキューだった。
ありす ほんとしょうがないな(笑)。
おにいたん 受験までに通史はやり終えたけど、文化史は潔く捨てたよ。
ありす 全然潔くないから(笑)。
おにいたん あとは古文も一切やらなかった。元々苦手だったこともあるけど、そこまで手が回らなかったから。
ありす ひでぇな(笑)。
おにいたん そんで現代文なんて勉強する必要はないじゃん。日本人が日本語の文章を理解できない方がおかしいんでさ。
ありす どうだろう(笑)。
おにいたん 要するに俺が勉強したのは日本史の一部と英語だけ。
ありす 省エネだね(笑)。
おにいたん それでいて自分なりには成績も上がったから、正直世の中を舐め腐っている部分があったのかも知れないね。

「俺は天才だから」てのが拠りどころだった。

ありす 予備校では友達とかできたの?
おにいたん やっぱりさ、高校をああいう形で辞めて、まだ全然引きずってるわけ。
ありす うん。
おにいたん だから友達はできなかった。最初はみんなバラバラだからいいけど、次第にグループができてくると居心地が悪いことこの上ない。
ありす そうだろうね。
おにいたん すると余計に気分が落ちてしまって。
ありす ああ……。
おにいたん そんなある日、高校時代に仲の良かった女の子に話し掛けられた。「○○君だよね?」って。こっちは全然気付かなかったけど、向こうはずっと俺のことが気になっていたようで。
ありす チャンスじゃない。
おにいたん でも俺は満足に返事すらできず逃げるように帰ってしまった。
ありす あちゃー。
おにいたん その時に初めて「俺もうダメだな」って思った。一生このまま塞ぎ込んで生きてくんかなと。
ありす ショックだったんだ。
おにいたん なんかもう人生がめちゃくちゃでさ。こんなはずじゃなかったのにって思うんだけど、もはや自分だけの力ではどうにもならなくて。しかも当時はブログなんてやってないから吐き出す場所もない。
ありす そうだね。
おにいたん 辛うじて「俺は天才だから」てのが拠りどころだった。
ありす え、おにいたんて天才だったの!?(笑)
おにいたん 俺だって分かってはいるのよ。元々根拠があるわけでもないし。ただ、そうやって自分を慰めるほかなかった。「天才は孤独なものだ」って。
ありす 追い込まれていたんだろうね。
おにいたん 追い込まれていたし、強がってもいたんだと思う。
ありす うん。
おにいたん 今でこそ弱音ばかり吐くおじさんになってしまったけど、昔はそうじゃなかったから。弱みを見せることなく肩肘を張るのが男だと思っていた。
ありす 確かに辛い10代後半だったのだろうけど、そういう経験もおにいたんの糧になっているんじゃないの?
おにいたん 分からなくはないけど、俺はそういう風に言ってくる奴が好きじゃない。
ありす いや、ごめん。
おにいたん マイナスの経験すらプラスにできたらという気持ちはもちろんある。ただ、それは「結果的に」という話であって、俺だって普通の10代を過ごしたかったよ。人並みの青春を送りたかったよ。それが叶わなかったことに対するコンプレックスは一生消えることがないだろう。
ありす 友達と遊ぶことは全くなかったの?
おにいたん これは通信時代だけど、中学時代の友達のひとりとよくラウンドワンで競馬のコインゲームをやったりした。夏には他の連中も集まって花火をやったり。ただ、俺は自分の事情を話さなかったし、ぶっちゃけあいつのことが苦手だったからね。
ありす 苦手って……。
おにいたん まぁでもあの時期に一緒に遊んでくれたことは感謝しているし、そういう部分ではすごい助かったと思ってる。

試験日の直前にインフルエンザに罹ってしまって。

ありす で、いよいよ受験だけど、力は出せましたか?
おにいたん いや、最初の試験日の直前にインフルエンザに罹ってしまって。
ありす よりによって(笑)。
おにいたん 病院でもらった頓服を飲めば一時的に楽になるけど、やっぱりその場凌ぎに過ぎないよね。
ありす ちなみに最初の受験地はどこだったの?
おにいたん 静岡だったのが救いだね。神奈川の大学なんだけど、地方でも受けれたんで。
ありす なるほど。
おにいたん 朝からぐったりしていて、たかだか30分の電車移動だけど、マジで死ぬかと思った。
ありす 熱もあったんだろうからね。
おにいたん よく覚えているのが、昼にイトーヨーカドー内のファストフードでポテトを買ったんだけど、半分も食べれずに捨てちゃった。
ありす 揚げ物を選ぶのがおかしい(笑)。
おにいたん 午後は薬も切れてくるから頭が回るはずもなく。得意なはずの英語だけど、もうほとんど勘みたいなもんだよね。
ありす 大変だ。
おにいたん 他の大学の受験で東京へ行く頃になってもなかなか体力は戻らなくて。しかも渋谷で某大学の試験を受けた時はマークミスをするし。
ありす おっちょこちょいだな(笑)。
おにいたん 英語の問題を全部解いたんだけど、マークシートの最後が余っていた。要するにどこかで1個飛ばしちゃったんだな。
ありす ああ……。
おにいたん 気付いた瞬間はさすがに血の気が引いたよね。かと言ってもう時間はないから直すこともできない。
ありす 最悪だな。
おにいたん あの日は英語に限らず問題とのフィーリングがよくて、結構手応えもあっただけにね。今でも思い出すとちょっと悔しいよ。
ありす まぁしょうがないんだろうけどね。
おにいたん 結局、静岡で受けた滑り止めの大学に入ったんだけど、他が全部ダメだって分かった日は号泣したね。涙を流しながら母の作った唐揚げを頬張った記憶がある。


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