雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

昔おぼえて不用なるもの

2014-09-09 11:00:32 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百五十六段  昔おぼえて不用なるもの

昔おぼえて不用なるもの。
暈繝端の畳の、節出で来たる。
唐絵の屏風の、黒み、面そこなはれたる。
絵師の、目暗き。

七、八尺の鬘の、赤くなりたる。
葡萄染の織物の、灰かへりたる。
色好みの、老いくづほれたる。


おもしろき家の、木立焼け失せたる。池などは、さながらあれど、浮草・水草など、茂りて・・・。


昔は良かったのに、今では役に立たたず、みじめなもの。
うげんばし(赤地にいろいろな糸で文様を付けた最高級の畳のヘリ)の畳が、古くなって節が出てきているの。
中国風の絵が見事に描かれている屏風が、黒ずんでしまい、紙や絹の表面が破れているのは、みじめなものです。
絵師が、老眼になってしまったこと。

七、八尺あるかつらも、すっかり赤くなってしまったもの。
えび染めの織物が、色あせた赤色になってしまったもの。(えび染めは紫の赤みがかった色。灰汁などを使って染めるが、古くなり色あせた赤色になることを、「灰かへる」という)
浮名を流していた人が、耄碌したのは、一層みじめなものです。
趣味のよい屋敷の、木立が燃えてなくなってしまったのはみじめなものです。。池などはそのまま残っているけれど、浮草や水草がはびこっていて、それがかえって・・・。



言葉そのものの意味はともかく、紹介されているものはどれも理解できるものばかりです。
ただ、「すりへった畳」と「耄碌した色男」が同列にされている辺りが、いかにも少納言さまらしい選択だと思ってしまうのですが。

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