雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

頼もしげなきもの

2014-09-08 11:00:11 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百五十七段  頼もしげなきもの

頼もしげなきもの。
心短く、人忘れがちなる壻(ムコ)の、常に夜離(ヨガ)れする。
虚言(ソラゴト)する人の、さすがに人の、事成し顔にて、大事請けたる。
風早きに、帆かけたる船。
七、八十ばかりなる人の、心ち悪しうて、日来(ヒゴロ)になりたる。


不安で頼りないもの。
薄情で、飽きっぽい性質の婿が、しょっちゅう夜の訪問がないの。
虚言癖のある人が、それでも人並みに、成算十分といった顔で、大事を引き受けたのですよ。
強風なのに、帆を張った船の、なんと危なっかしいこと。
七、八十歳ほどの人が、加減が悪くなってから、回復することなく何日も過ぎた時。



本段も、前段と構成が似ていて、四つ例をあげていますが、三つは人間模様であり、その中に一つだけ船を置いています。
この形は、少納言さま独自のということではなく、当時、一つの表現形態としてあったのかもしれません。ただ、解説書によっては、三つ目に「船」を置いていることから、起承転結の形としていますが、今一つぴったりと来ない気がします。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 読経は不断経 | トップ | 昔おぼえて不用なるもの »

コメントを投稿

『枕草子』 清少納言さまからの贈り物」カテゴリの最新記事