雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ハラスメントを考える ・ 小さな小さな物語 ( 1772 )

2024-05-30 08:00:37 | 小さな小さな物語 第三十部

つい最近、続けさまに「カスハラ」に関するニュースをテレビで見ました。
カスハラ、つまり、カスタマーハラスメントのことですが、交通機関での例、ある販売店での例、自治体での例などが紹介されていました。
いずれも、顧客であることや利用者であることがまるで正義でもあるかのように、職場の一員である弱みにつけ込むかのように、過剰な暴言、要求などを突きつけ、土下座までさせたと報道されていました。
自治体に対するある調査では、回答のあった自治体のうちカスハラ被害を受けたと言う自治体が八割にも及んだそうです。

多くの企業において、クレーム対策は避けて通れない分野です。
ある経営者は、「クレームこそが商品開発や接遇向上のための教科書だ」と語られていました。実際に、クレームデーターを経営に生かしている企業があるようです。
私自身も、若い頃には勤務先で「苦情処理」の矢面に立ったことがありました。かつては、「苦情処理」という言葉は結構使われていましたが、今日では、こんな言葉を使えば、それだけで「カスハラ」の絶好のターゲットになるのでしょうねぇ。
それにしても、放送されている内容を見ますと、企業がもっとしっかりと社員を守る体制と、それが可能な法体制が必要だと思いました。
今回見た番組ではありませんが、同様の番組で、顧客が「『お客様は神さま』だろう」と悪態をつく場面がありました。
『お客様は神さまです』という、ある大歌手の名文句はいまだに健在のようですが、顧客は顧客であり、利用者は利用者に過ぎません。神さまでも何でもないのです。
「お客様は神さま」という考え方は、あくまでサービスなどを提供する側が心がけ、自らを戒める言葉のはずです。顧客や利用者が「お客様は神さまだ」と考えるのは、無知であり傲慢であると思うのです。

それにしても、世の中はハラスメントに溢れているようです。
「セクハラ(セクシャルハラスメント)」「パワハラ(パワーハラスメント)」あたりは問題視されはじめてから時間も経ち、対処方法や法的措置もかなり進んでいますが、立場の弱い人を苦しめるハラスメントは、数多く存在しています。
「モラルハラスメント」「マタニティーハラスメント」「アルコールハラスメント」「カラオケハラスメント」「リモートハラスメント」「ためいきハラスメント」等々、五十以上あるそうです。
「セカンドハラスメント」は、ハラスメントを受けた人が誰かに相談した場合に、それを広げられたり、誰でも経験していることだ、などと言われたりして、さらに辛い立場になる被害を言います。
「ハラスメント・ハラスメント」は、部下などからパワハラだと過剰反応されたり、それを恐れて注意も出来ないことを言うようです。

上記したハラスメントの中には、最近発生したものもありますが、多くは、昔からあるもので、近代になって闇の部分に日が当たり始めたからで、歓迎すべき現象ということはできます。
ただ、この種の犯罪で、亡くなった人や、深刻で回復困難な被害を受けた人も少なくありません。法的整備も含めて、社会の抑止力が追いついていないことは明らかです。
また、明らかな犯罪に当たるような事象は別ですが、例えば、「セクハラと恋愛感情」「パワハラと指導」と言ったように、正常な行為と紙一重の事象もあるのは事実です。
最近、とみに「何々ハラスメント」が増えている原因の一つは、様々な人間関係に温もりのようなものが薄れているような気がするのです。同時に、「なまじ温もりのある関係がハラスメント問題を深刻化させている」という声もあるそうですから、頭を抱えてしまいます。
せいぜい、加害者にだけはならないように心がけることにします。


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