雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

雄を知って雌を守る ・ ちょっぴり『老子』 ( 33 )

2015-06-19 14:31:28 | ちょっぴり『老子』

          ちょっぴり『老子』 ( 33 )

               『 雄を知って雌を守る 』
 

「 知其雄、守其雌、為天下谿。為天下谿、常徳不離、復帰於嬰兒。知其白、守其黒、為天下式。 」
『老子』第二十八章の冒頭部分です。
読みは、「 其の雄を知って、其の雌を守れば、天下の谿(タニ)となる。天下の谿となれば、常徳(ジョウトク)離れずして、嬰兒に復帰する。其の白きを知って、其の黒きを守れば、天下の式となる。 」
文意は、「 雄を知って、雌を守れば、自然と天下の谿 ( 人々が拠り所とする所、とぃった意味 ) となる。天下の谿となれば、その身に不変の徳が備わり離れることがなく、嬰児のような全くの自然体、つまり『道』を体得した状態になる。潔白なものを知って、黒い状態に置いた身を守れば、天下の人々の式 ( 人々が模範とする標準・手本、といった意味 ) となる。 」

最初の「知其雄、守其雌」という部分ですが、現在の私たちが普通に考えるものとは少し意味が違います。
「雄」というのは、「硬く強くはあるがもろく、人に先んずるが憎まれて退けられる、といった性質の徳」を指します。対照的な「雌」は、「柔らかで直やかであるが折れることなく、人に後れるが愛されて結局支持される、といった性質の徳」を指します。
つまり、雄のような徳を知ったうえで、雌のような徳を守れば、人々に受け入れられる、といった意味です。そして、そのようにすれば、不変の徳が身を離れることがなく、嬰児のような全く自然のままな姿に帰ることができる、すなわち『道』を体得することができるということなのでしょう。
その次の部分も、「白」というのは潔白という意味ではありますが、「美しいが、汚れやすく身を危うくするもの」という意味で、そのことを知ったうえで、黒、すなわち汚れた環境の中でその身を守れば、その生き方が天下の人々の手本となる、ということのようです。

ありのままがよい

第二十八章の最後の部分には、次のようなことが述べられています。
「  朴 (ボク・切り出したままの木材) は切り刻まれて世間の役に立つ器となり、それぞれに役割を分担する。聖人も同じようにすれば、すなわち一芸に秀でた人物となり、統括などできない。だから、偉大な制作は分割してはいけない。つまり聖人は、切り出されたばかりの朴のようでなければならない。 」

人にはそれぞれ適材適所があって、それぞれに役割を果たすべきであるが、聖人、つまり『道』を体得し指導的立場に立つべき者は、一技一能に固まってはならないと教えています。
この辺りは、まさしく帝王学というものなのでしょう。

     ★   ★   ★
 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 天下は神器 ・ ちょっぴり... | トップ | 善行は跡を残さない ・ ち... »

コメントを投稿

ちょっぴり『老子』」カテゴリの最新記事