一燈照隅

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『再び、誇りの持てる国へ』関西経済同友会の提言

2007年05月13日 | Weblog
昨年、北朝鮮のミサイル発射事件で当たり障りのない発言をした経済同友会に対して、厳しく批判した関西経済同友会(関経同)がこのほど、10年後のビジョン-目指すべき国の姿-として『再び、誇りの持てる国へ』と題した提言を発表しました。
「誇りと志」「成熟と調和」「美と絆」「関西州と大阪都」の四つを柱として、未来の子供達へ忘れられた日本の文化や伝統の良さ、世界でこれから果たしていかなければならない事を提言しています。
提言要約のみ転載


はじめに ~子供たちに守り伝えたいもの~

日本は、戦後の荒廃の中から立ち上がり、「東洋の奇跡」と称される高度成長を成し遂げ、世界第2位の経済大国となった。今や、諸外国からも羨望される経済的な豊かさを実現したものの、多くの日本人は、真の豊かさを実感できていないばかりか、将来に対する漠たる不安の中にいる。

日本のこれまでの経済成長を支えてきた中央集権の官僚主導型システムは、グローバル化の進展など急速な環境変化に対応できず、弊害を生じている。それは、巨額の財政赤字であり、東京への一極集中と地方の疲弊であり、少子高齢化と人口減少が進む中での社会保障制度の持続性に対する大きな不信である。また、経済成長がもたらした物質的な豊かさと、戦前の持つ良い面をも否定する教育とが相俟って、日本人の精神性に変化を生じさせている。家族や地域のつながりが薄れ、ただ個人の自由が幅を利かせており、他者や公への配慮と関心を失った人々が、政官民を問わず倫理観を欠いた不祥事を引き起こしている。

本来、私たち日本人は、豊かさと厳しさの両面を持つ自然に対する感謝と畏敬の念を併せ持ち、四季折々の変化によって育まれた特有の美意識や感性を有している。また、自然の森羅万象に神の存在を感じる多神教的な考え方を基礎に、和を重んじる心根を有する国民である。

こうした日本人が創り上げる社会は、互いに配慮し合う、自助と共助の精神にあふれるものであったが、現在の日本においては、相互の信頼関係が薄れており、人々が明るい未来を思い描くことは困難である。日本がこのままの道を辿った先に、亡国の未来がある訳ではなかろうが、瑞穂の国があるとも思えない。私たちは、美しい日本と日本人を後世に守り伝えることができるのだろうか。

私たちが、将来への不安を感じることなく真の豊かさを実感するためには、相互の信頼関係に基づく国際社会の平和と安定が大前提となる。現在の経済的な繁栄も、戦後日本が平和国家としての道を歩むことを決意し、世界の平和と安定に対する相応の貢献により、国際社会との厚い信頼関係を築いてきた上に成り立っている。

しかし今、世界の情勢は大きく変化しており、軍備の拡張や核開発を進める近隣諸国、世界中で横行するテロリズム、民族や宗教的な対立から続発する地域紛争など、新たな「不安定な時代」へと進んでいる。そして、こうした問題の抑止力として期待される国際連合は、力の限界を露呈し機能不全に陥っている。

かつて「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」日本が描く理想の国際社会は、戦後60年を経た今も実現されることのない理想に過ぎず、「不安定化する世界」こそが私たちの生きる現実である。

こうした現実に対峙せざるを得ない今、地政学上のリスクの高い北東アジアに位置する日本は、これまでの一国平和主義を唱え続けることだけで自国と自国民を守ることができるのだろうか。また、世界の平和と安定に自ら責任ある役割を担わずして、将来の世代へと平和な日本と世界を守り伝えることができるのだろうか。

こうした日本と世界の平和や繁栄は、すべて地球という惑星の存在の上に成り立つものである。しかし現実には、46億年と言われる地球の歴史の中で、ほんのわずかな時間しか存在していない私たち人類が、地球に対し過度な負担をかけ続けている。地球規模で温暖化ガスの排出削減が声高に叫ばれるものの、日本自身も含め京都議定書による削減目標の達成は不確実であり、その枠組みに与しない大国も存在する。その中には、かつての日本と同様に、環境との調和を図ることよりも自国経済の高度成長を優先するかのような国もあり、地球そのものの持続性が損なわれつつある。

この状況を放置することは、人類全体にとって取り返しのつかない結末につながるおそれがあり、そもそもの価値観や生活様式を転換する必要がある。その際、自然の中で「生かされている」と感じながら自然と共生してきた日本人特有の考え方や、技術立国である日本が有する高い環境技術を活かし、国際社会に対し大いに貢献できることがあるだろう。私たちは、地球そのものの危機を乗り越え、水と緑にあふれる美しい地球を後世へと守り伝えることができるのだろうか。

私たちには、未来の子供たちへと守り伝えたい大切なものがある。それは、美しい日本と日本人の心であり、平和な国際社会と豊かな地球である。こうした価値あるものの喪失は、急激に進むものではないが、私たちの目に触れにくいところで徐々にかつ確実に進行している。厳しい構造改革を経て、経済の先行きに明るさが見えるようになった今、子供たちの将来にも目をやり、価値あるものを守り伝える取り組みを始めるべきである。その第一歩は、国民全体が、将来に対する危機感を共有することであり、そして新しい日本のビジョンをしっかりと思い描くことである。

10年後のビジョン-目指すべき国の姿-『再び、誇りの持てる国へ』
国家像 その1 『誇りと志』
1-1 国民が誇りを持てる国家
    自主憲法の制定
1-2 自分の国は自分で守る国家
    日米同盟の強化
1-3 世界のために汗をかく国家
    国連安保理常任理事国入り

国家像 その2 『成熟と調和』
2-1 地球を癒す国家
    自然とともに生きる
    新エネルギーフロンティアの創造
2-2 世界をソフトに変革する国家
    日本のソフトパワーを拡げる
2-3 活力出づる国家
    ニュージャパニーズドリームの実現

国家像 その3 『美と絆』
3-1 美しい道徳を掲げる国家
    現代版教育勅語の制定
3-2 自助と共助の精神を回復する国家
    地域社会の要を回復

地域像 『関西州と大阪都』
4-1 技術と知恵の泉:阪神(大阪・兵庫)
    先端産業の創出圏域
4-2 地球環境保全の鑑:京滋(京都・滋賀)
    環境リーディング・クラスターの形成
    水資源ODA
4-3 伝統と文化の弧:京奈和(京都・奈良・和歌山)
    伝統と革新の圏域