あなろぐちっく

mintonのスナップと気まぐれつぶやきブログ。コメントは古い日記でもお気軽に。写真の無断利用は厳禁。

暗室 吉行淳之介

2008年07月09日 19時06分10秒 | HEXANON35mmF2 1st
本屋の古本フェアで初版に近い吉行淳之介の「暗室」を購入し、先週末東京に向かうバスの中で読んだ。
小説でありながらも、そこには赤裸々な自らの生活の吐露があり、深い性と生と人生があった。
何人もの女を性の対象としながらも、どこかに満たされない部分が残る疲れた40代の鬱な作家の姿が見えたが、奇異でも特異でも軽薄でもない世界があった。


暗室は出てこない。28年間愛人として過ごした大塚英子の暗いアパートのことだろう。
吉行淳之介は正妻と愛人宮城まり子との間でも愛憎劇のあった人だが、大塚も彼には必然の女性だったのだろう。
彼女は実際に文壇バーと呼ばれた「ゴードン」や「姫」に出ていたそうだが、男と女の深淵は、小説の最後のページから先もずっと続いていた。
昭和45年に初版が出版された時期にゴードンを辞めている。彼女の中の吉行は彼が亡くなってもずっと続いているのだろう。

吉行淳之介の妻、吉行文枝さんもまた濃い人生を歩まれたと想像する。彼女の中でも彼はずっと続いていたのだろう。


僕が数寄屋橋界隈のバーによく顔を出していたのは昭和50年代前半だ。
まだこれらの文壇バーが華やかだったのかもしれないが、僕とは縁がない世界だった。
知り合いがバーのママだった。有名人の来るような文化の香りはなくて、派手な電飾のEP盤ジュークボックスにはポールアンカやニールセダカなどの洋楽に混じって、ママの好きな西島三重子の「池上線」が入っていた。
ママはカウンターの僕に百円玉をまとめて渡して「あの曲をかけて」って頼んだ。


ニールセダカやポールアンカ、デビーレイノルズの「タミー」などを聴くと、リアルタイムじゃないのに郷愁に包まれるのは、この頃のこの年代の人たちとのいろんな経験からくるものだろう。

R-D1 + HEXANON 35mm F2
渋谷 のんべえ横丁にある飲み屋の開店前のカウンター
コメント (4)
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