夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『前科者』

2022年02月13日 | 映画(さ行)
『前科者』
監督:岸善幸
出演:有村架純,磯村勇斗,若葉竜也,マキタスポーツ,石橋静河,
   北村有起哉,宇野祥平,リリー・フランキー,木村多江,森田剛他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて、仕事帰りに2本ハシゴ。その1本目。
 
岸善幸監督はもとは演出家でありプロデューサー。
テレビ番組制作プロダクションのテレビマンユニオンでは是枝裕和監督の同期だとか。
スタッフとして関わった番組を挙げると、『アメリカ縦断ウルトラクイズ』だとか、
『世界ウルルン滞在記』の前身番組だとか、『情熱大陸』だとか、人気番組だらけ。
 
監督デビュー作となったのは門脇麦主演の『二重生活』(2015)。
2作目は菅田将暉主演の『あゝ、荒野』(2017)。
なぜだか2本とも私は劇場鑑賞を逃しているのですよねぇ。
その後、DVDや配信でも観ていないから、単に時間が合わなかった以外の何か、
気分が乗らなかったということがあるのでしょう。
でも本作は観る気になりました。森田剛が見たくて。
 
まだ子どもだった頃の出来事をきっかけに、保護司となった阿川佳代(有村架純)。
保護司とは、元受刑者の更生をサポートする国家公務員だが、報酬は無し。
佳代はコンビニのアルバイトで生計を立てながら、
更生を目指す前科者たちに寄り添おうと日々奔走している。
 
佳代が新たに担当するのは、殺人を犯して服役し、仮釈放された工藤誠(森田剛)。
身元引受人となった自動車修理工場の社長のもと、実に真面目に働き、
保護観察期間が満了すれば正社員に雇うつもりだと言う社長の言葉に喜ぶ佳代。
 
そんな折、交番勤務の警察官が拳銃を奪われたうえに撃たれて負傷、
その拳銃で福祉課の職員と児童養護施設の職員が立て続けに射殺される事件が起きる。
 
佳代との最後の面談に現れなかった誠のことを心配していると、
刑事の鈴木(マキタスポーツ)と滝本(磯村勇斗)が佳代を訪ね、
誠が連続殺人事件の容疑者として追われていることを知らされるのだが……。
 
予告編を観たとき、有村架純はちょっと違うかもと思いました。
本編を観た後もちょっと違ったかもと思っていますが、だからって合っていなかったわけではなく。
それに、他に適役が思い浮かぶわけじゃなし。
 
『ノイズ』では冒頭で元受刑者を島に連れてくる保護司があっちゅうまに殺されていました。
保護司っていったいどういう仕事なのだろうと思っていたら、こういうことですか。
報酬は発生していると思っていたら、ボランティアだなんて。偉すぎる。
 
佳代は28歳という若さで、担当する元受刑者には女性もいるけれど、
本当に信用していいのかどうかわからないオッサンとかもいます。
彼らに面会に行くのはいいとして、家に上げて食事も振る舞うなんて、まず危険を感じてしまう。
しかも、自宅の鍵の在処を隠しもせず、帰宅したら勝手に上がり込んでいることもあるのですから。
前科者に本心で寄り添い信じていなければ、こんなことできませんよね。
 
本作もキャストに魅力を感じます。
森田剛がとてもよかったのはもちろんのこと、佳代が勤めるコンビニの店長役の宇野祥平が◎。
たびたび急用で飛び出す佳代の立場を理解し、文句も言うけど優しい。
猫に「時給いくら?」なんて尋ねるシーンにはほっこりしました。
 
ほかに佳代の上司で保護観察官役の北村有起哉も毎度の良さ。
本物の夫婦で出演したAmazonプライムのCMは不評だったようで残念。
そりゃ、役者としての彼を知らない人が見たら、
格好良くもないのに何このオヤジ、と思うでしょうね(笑)。いい俳優なのに。
 
先輩刑事役のマキタスポーツのとぼけ具合も良いし、
佳代が担当する元受刑者役の石橋静河には泣かされました。
石橋凌原田美枝子の娘である彼女、現時点で私はかなり好きです。
 
私は死刑廃止論者ではないので、家庭内DVで家族を殺した人間など、
死刑になったって仕方ないでしょと思っています。
でも、木村多江演じる弁護士は「更生する機会を区別してはいけない」と言う。
そうかなと少しは思う。
 
一方、本作の誠や弟の実(若葉竜也)のような虐待を受けてきた側の人は、
相手を殺したくもなってしまうでしょうとより強く思う。
彼らが戻ってきたときにどうか居場所がありますように。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ギャング・オブ・アメリカ』 | トップ | 『355』 »

映画(さ行)」カテゴリの最新記事