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『人数の町』

2020年09月09日 | 映画(な行)
『人数の町』
監督:荒木伸二
出演:中村倫也,石橋静河,立花恵理,山中聡,橋野純平,植村宏司,
   菅野莉央,松浦祐也,草野イニ,川村紗也,柳英里紗他
 
TOHOシネマズ梅田で欅坂46、ひとり呑みしたのち、
シネ・リーブル梅田で『mid90s ミッドナインティーズ』
スタバでお茶してテアトル梅田へ。
中村倫也人気でしょうか、これも満席。
本編の前に荒木伸二監督と中村倫也、石橋静河の3人が並ぶインタビュー映像付き。
 
「第1回木下グループ新人監督賞・準グランプリに選ばれたオリジナルストーリー」とあります。
木下グループって何なのかと調べたら、
ハウスメーカーの木下工務店などを傘下に置く持ち株会社とあります。
ますますよくわからないのですけれど、
一昨年にアニメーション制作会社の株式を100%取得していて、グループの子会社としたとのこと。
ここでうっすら映画との繋がりが見えてくる。
まぁいいか、何でも。(^^;
 
なんだかよくわからんけど、その賞を受賞したオリジナルストーリーとあるだけに、
斬新なストーリーが面白い。愉快な話ではありません。
 
借金取りから逃げようととして暴行を受けていた蒼山(中村倫也)は、
黄色いツナギを着た見知らぬ男(山中聡)に助けられる。
助けられたのはありがたいが、こいつはいったい何者なのか。
男は蒼山に「居るところがないんだろう」と言い、居場所まで提供してくれると言う。
 
蒼山と同様の境遇とおぼしき人々を乗せたバスが到着したのは奇妙な町。
そこでは蒼山たち住人は名前を持たず、全員「デュード」と呼ばれ、
「チューター」である黄色いツナギを着た者たちがすべて管理しているらしい。
 
住人たちは衣食住を保証され、労働のノルマなども一切ない。
気に入ったデュードには声をかけてセックスもし放題。
食事と引き換えに住人が求められるのは、ネットに褒めたり貶したりの書き込みをすることと、
他人になりすまして選挙に行って投票すること、それぐらい。
最初は疑問を感じたものの、次第にその生活に馴染んでゆく蒼山。
 
そこへある日、紅子(石橋静河)という新たな住人がやってくる。
彼女の境遇は蒼山らとは異なり、行方不明になった妹を探しに来たのだという。
確かにそこには彼女の妹である緑(立花恵理)も暮らしていたが、
夫のDVから逃げてきた緑は元の生活になど戻りたくないと言い……。
 
この町から逃げることはできません。
逃げようとすれば頭がおかしくなりそうな音が流れて、とても正気ではいられません。
誓約書にサインすれば簡単に入れるけれど、出られない町。
蒼山と紅子はそれでもなんとか脱出しようとします。
 
恐ろしいのは、誰も何の疑問も持たずに町で暮らしているということ。
そりゃそうですね、怯えて暮らす必要もなく、
それぞれ個室が与えられ、働かなくても食事にありつける。
服だっていろいろ支給されて、プールで優雅な時間を過ごすこともできる。
実際にこんな生活ができるのだとしたら、
たとえ戸籍を失ってもこの生活を選ぶ人がたくさんいるのではないでしょうか。
 
脱出した蒼山と紅子が結局たどり着く果ては絶望的。
でもこれがいちばんいい選択だったようにも思えます。
考えないこと。それを求められる暮らしは自由なのでしょうか。

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