箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

不安な1年を過ごして

2020年11月27日 09時03分00秒 | 教育・子育てあれこれ

2020年もあと1か月ちょっととなりました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きすぎて、教育の現場でも、本当にたいへんな1年でした。

春という季節は、新しいスタートを迎え、期待して迎えることも多いですが、その一方で、まわりの環境が変化することに不安を抱きやすいものです。

期待ばかり、不安ばかりというのではなく、多くの生徒にとっては、期待と不安が入り混じった生活を送るのが、春という季節です。

そこに今年は新型コロナウイルスというイレギュラーなできごとが入ってきて、なんらかの影響を受けた児童生徒は多かったと思われます。

新しい学校、新しいクラス、新しい人間関係、新しい学習に思いを巡らせているところに、突然降ってわいたような臨時休校で、新しい学校生活を体験する機会と場を失い、「不安」が大きくなった子が多かったようです。

じっさい、再登校してきた生徒に「休校の間のあなたの気持ちはどんなものでしたか」と聞くと、多くの子が「不安だった」と答えていました。



6月に入り、途中から分散登校が始まりました。子どもはどんな様子だったのでしょうか。

ちょっと意外でしたが、子どもたちは、おとなしく、落ち着いていました。

分散登校はクラスの半分のクラスメートしか、その日には来ないので、少人数で、外から受ける刺激も少なく、ある意味、過ごしやすかったのかもしれません。

ところが、一斉登校が始まってからは、様子が変わってきました。体調不良を訴える子、何か気持ちが落ち着かないという子、うつむいて伏し目がちになる子などが気になるようになりました。

中学生は思春期の子どもですので、ただでさえいろいろな悩みを抱えています。そこに加えて、なにか落ち着かず、は「理由が自分でもわからないのです」という状況でした。

ちょっと眠れない、あまり食欲がない、急に泣きたくなる、家にいたら淋しくなる。

不安定な生徒が目につく日々が続き、思いあぐねた教師は、生徒の保護者に連絡を取りました。

やはり、親御さんも家庭でもわが子の様子にとまどい、どうしたものかと思案されていたのでした。

「うちの子だけかと思っていました」

「いいえ、まだ中学生なので、不安になるのは無理もないことですよ。不安になっているのはほかの子も同じです。どう支えていくかを学校と家庭でいっしょに考えていきましょう」

そうすると、保護者も安心して、相談がスムーズに進みました。

親御さんが落ち着くと、子どもが落ち着くこともありました。

考えてみれば、新型コロナウイルスで不安なのは、子どもだけでなく、大人も多かれ少なかれ同じです。

2学期、学校の教師は、生徒から相談を受けて、答えに導くことができなくても、不安な気持ちを聴く。

そして、現在の状況を生徒本人と保護者とともに、教師がいっしょに受け止めていく。

ここに、教師がいる意味があるのです。