「いいかげんにしなさい。スマホ代いくら払っているか知っているの?」
「いま何時やと思ってるんや。約束の時間はとっくに過ぎてるわ~!」
こんなふうに言われたら、言われた人はどう感じるでしょう。このセリフのどこに問題があるのでしょうか。それは、これらのセリフは「あなたメッセージ」になっているという共通点があります。上の二つのセリフは、このように読み解くことができます。
「(あなたは)いいかげんにしなさい。(あなたは)電話代いくら払っているか知っているの?」
「(あなたはorおまえは)いま何時やと思ってるんや。約束の時間はとっくに過ぎてるわ~!」
私たちはよくこのような「あなたメッセージ」を使います。この場合、言われる側にしてみれば非難されるとか抗議・説教・皮肉・命令などの意味を感じます。言われるのが子どもの場合、責められていると感じます。
そして子どもは親の言葉を聞き流し、ときには反発を覚え、ひたすら小言が終わるのをじっと待つことにもなります。
大切なことは、子どもに悪気はなくても、むしろ子どもにとって楽しいことでも、自分の言動がまわりにマイナスの影響を及ぼすこともあることを教えることです。その繰り返しが、まわりへの配慮となって実を結ぶことになります。
そのためにも、親は「あなたメッセージ」で子どもを責めるのではなく、子どもが受けとれるメッセージにして発する必要があるのです。
「お母さんはたいへんだと思っているの。毎月これほどの電話代を払うのは、わが家の家計では大変なの。スマホ料金を減らすように協力してほしい」
「私はとても心配してるんや。あなた(おまえ)がどこにいるのかわからないし、何かあったんやないかと思って」
この二つのセリフは「あなたメッセージ」から一転して、子どもに親の気持ちを伝えています。あくまで私のこととして話しています。これを「わたしメッセージ」といいます。
こうすることで、子どもは相手のこととして冷静に聞くことができます。自分が責められているのではなく、少々自分にとってイヤな話でも反発にはなりません。むしろ「困っている」とか「心配している」と言われることで、相手を助けなければ、という気持ちになるかもしれません。
これを読んでいるおとなは、それぐらいのことは子どももわかるだろう、と思いがちですが、必ずしも子どもは気づいているとは限りません。
もともと子どもは、自分の言動が問題のないことと思っていたのです。だから親がたいへんだと思っていたとか、親が心配していたなんてことは思いもしなかったのです。
親が子どもにやってほしいことがある、やめてほしいことがある。そのときには、命令したり、指示をしたりするのではなく、ていねいに接します。
教師の中にも「わたしメッセージ」を実践しているというか、そのような接し方を自然に身につけている人は、三中生と良好な関係を築いています。
私も折につけ、生徒の問題を親御さんに指摘するときには、「困っています」ではなく、「心配しています」ですよ、と伝えています。
困っているのは、あなた(=教師側)なのであり、「(わたしは、)お子さんのことを)心配しています」だからね、と添えます。
思春期の子どもには、機嫌どりをするのではなく、「こうしてください」と依頼するのです。親の気持ちがわかり、そしてなぜ言われているのかがわかれば、子どもは言動を変えてくれます。これが「わたしメッセージ」で親が自分の気持ちを伝えることの効果です。
「わたしメッセージ」の話し方はけっこう難しそう、と思われるかもしれません。ですが、ふだんからおとなが子どもに、自分の気持ちを伝えるようにしていれば、「わたしメッセージ」の話し方はさほど難しいことではないのです。
ぜひ、実行してみてください。しばらく続けると、このごろ子どもが変わったね、親子の関係がしっくりいくようになった、と思える機会が増えてくるはずです。