箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

言葉の力

2015年10月05日 09時08分19秒 | 教育・子育てあれこれ

一般的に、子どもが言語を習得するには「臨界期」があり、おおむね9歳ぐらいまでと言われています。

もちろんこの年齢を過ぎても言語の習得は可能です。ただし、「臨界期」は音声面では存在するようで、9歳ぐらいまでに子どもは言葉をシャワーのように浴びた経験をくぐると、言語を聞きとり、正しい発音で話すことができるようになります。

だから、日本に生まれた子が、日本語を話す家庭や環境で育つと自然に日本語を聞いたり、話せるようになるのです。

ですから、「臨界期」までにとくに音声面で日本語以外にも言語のシャワーを浴びて育った子は、その後、言語の学習から遠ざかる期間があろうとも、また習い始めると音声面の能力が引き出され、開花します。

とくに音声を正しく聞きとり、正確に発音できるようになるには「臨界期」は一つの目安になります。よく言われる「日本語もできない時期に、英語を学ぶ必要などない」という主張はあてはまらないのです。

この点から、現在、英語の早期教育や小学校での音声を主とする英語教育が、重要視されている側面があります。

子育てに関して言えば、子どもは親やまわりのおとなから多くの言葉を聞きます。子どもは親からの言葉のシャワーを浴びれば浴びるほど、言葉の数が増え、言葉と言葉をつなげて文章にするという豊かな言葉の世界に引き込まれていきます。

そして、子どもは言葉を介して考え、思考を深めたり広げたりすることができるのです。

子どもが思春期にさしかかり、もし親やおとなに対して無口になったりしたとしても、または、おとなに対して反発するようになろうとも、あるいは、非行の道に入りこみ、おとなをシャットアウトするようになっても、小さい頃に一度言葉のシャワーを受けた子どもは、また言葉の豊かな世界へ戻ってきます。そして、言葉の世界の豊かさは子どもの内面の豊かさを生み出します。

これが言葉のチカラです。ですからおとなは子どもに対して、幼少期には言葉をシャワーにして、思春期には願いや思いを言葉にして伝え、子どもの内面を豊かにしていくことが必要になります。
(写真は、柳田邦男さんの書籍『言葉の力 生きる力』の表紙画像を引用しています。)