庭からふと裏の森を見たら、一匹のキツネが死んでいた。
死んでいたのは大人のキツネだったが、なぜこんな住宅に近い場所で死んでいたのだろうと思った。
車が通れない森の中なので、交通事故というのはあり得ない。
また自然死ならば、もう少し人間のいない森の奥で死ぬのが、普通なのではないだろうか。
それとも他の動物に襲われたのか?
よく見ると、内臓の一部が出ている。
じゃあ襲った動物は何だろう?もしかしてヒグマとか、、、、怖
ここ数年、住宅地近くにヒグマが現れるようになってから、昔はよく裏の森を散歩している人を見かけたが、今はヒグマと鉢合わせするのを恐れて、歩く人はほとんどいない。
ただ今回のキツネは、ヒグマに襲われたのではないだろうと思う。
ヒグマなら襲ったキツネを食糧にするのではないかと思うが、キツネの亡骸は完全な姿のままだった。
それにしても、こんな家の側でキツネが倒れていてどうしよう、、、と思った。
土に埋めてあげれば良いのだろうけど、鳥とはあまりにも大きさが違いすぎる。
キツネは小ぶりな中型犬くらいあるし、運んで埋めるのも抵抗がある。
自治体に連絡すべきかと思ったが、そもそもそこは人が住んでいない森林であり、人や車が行き交う道路や公共の公園でもない。
自治体に連絡しても断られるかもしれない、、
今回はたまたま目に入る場所でキツネが死んでいたが、広大な森の中では、こうしたことは日常的に起きているのだろうと思う。
そこで気にはなるが、そのまま様子を見ることにした。
すると翌朝。キツネの亡骸は、他の動物に食べられて半分の大きさになっていた。
さらに次の日もまた小さくなっていた。
その様子を見ていた夫が「一歩入ると、この森の中は弱肉強食の世界なんだなぁ」と言った。
「自然界は弱肉強食」と言うのをよく聞いたことがある。
確かにそうかも知れない。
植物は昆虫に食べられ、ネズミなどの小さな生き物が昆虫を食べる。
そしてネズミは、もっと大きな生き物に食べられる。
でも大きな生き物が死んだら、その亡骸は腐って溶けて大地に染み込んで植物の栄養になる。
そう思ったら、自然界は弱肉強食の世界というより、互いに自分の生命を与え合って共生し、絶妙なバランスで循環していると言った方がぴったりくる。
自然界の中にあって循環できていないのは、人間だけなのかも知れない。
昔のトイレは汲み取り式で、排泄物を畑の肥料に使っていたことがあったらしいが、今はどこも快適な水洗トイレになった。
そのおかげで感染症などが減ったという利点は大きい訳だが、排泄物はあっという間に処理されるので土地の栄養分になれない。
また亡くなっても直ぐに火葬されるため、肉体が大地の栄養分になることもない。
この地球に住む生き物として、自然界の循環システムにまったく貢献できていないことが、なんだか恥ずかしい。
せめて汚さないように気をつけようと、キツネの亡骸を見ながら思った。
森で死んでいたキツネだが、それほど遠くない将来、その姿は循環して消えて無くなるのだろうと思う。