散歩途中に、庭の手入れをしていたご近所の方に会ったのでご挨拶をした。
この方とは今の場所に同じ時期に引っ越しをしてきて知り合い、同じ年齢で植物や自然が好きという共通点もあって話が合った。
会えばいつも花や山の話で盛り上がるのだが、今回はご挨拶だけで立ち話はせず通り過ぎようと思った。
ご挨拶だけでと思ったのはコロナのこともあるが、彼女は現在闘病中であり気温が30度近い中で立ち話をすると、彼女の身体に負担をかけるのではないかと思ったからだった。
ところが彼女が笑顔で手招きしてくれたので、喜んでお庭にお邪魔することにした。
彼女が丹精をこめて作ったお庭は、いつ見ても美しく手入れがされており色とりどりの花が咲き乱れている。
今年も新しいお花を植えたそうで、植えたばかりの花に水をあげている最中だった。
まだ身体も辛いだろうに、庭の手入れをしているなんてすごいなあと思う。
「家の中に居てもすることがないから、こうして庭の手入れをしていた方がいいの。でも帽子をかぶっていると暑くて」と言う彼女は今、抗がん剤治療をしている。
薬の影響で髪の毛が全部抜けたそうで、今年になってからいつも帽子をかぶっていた。
彼女は、三年ほど前に乳がんを患った。その後、順調に回復していると言っていたが、昨年また癌が見つかってしまった。
その時の衝撃たるや計り知れないものがあったと思うが、会う時の彼女はいつも明るく優しい。
「(呼んだのは)教えてあげたい事があったの」と彼女が言った。
「新しい道を見つけたの。登り切った場所は、見晴らしが良くて気持ちいいから今度行ってみて」
なんと彼女は山の中で行ったことのなかった道を見つけたのだそうだ。
それを聞いてびっくりした。
驚いたのは新しい道を見つけたということじゃなくて、山道を一時間以上も歩いたという事。
抗がん剤の副作用で様々な症状に苦しんでいるのに、よく山道を長い時間かけて歩いたと思った。
彼女とは、これまで何度か一緒に山を歩いたことがあった。
名も知らない草花を愛でながら、美しい自然を楽しみながら歩くのは楽しかった。
最近は一緒に山歩きをしていなかったけど、新しい道を発見していたなんてさすが。相変わらずの旺盛な好奇心と行動力は健在だと嬉しくなった。
彼女の手術は明後日。絶対に治ると思っている。