何年ぶりだろうか。
学校を卒業してすぐに就職した会社員時代の同期から電話をもらった。
当時、たくさんいた同期の中でも親しくしていたのが彼女だったが、私が結婚退職してから数回会ったものの子供が生まれてからはほとんど会うこともなかった。
ちょっと緊張している声で「○○です」と言った彼女の声は昔と変わらず若々しく、すぐにそれが彼女だとわかった。
「久しぶりに同期会をすることになったのだけど来ない?」というお誘いだった。
私たちの同期の中でまだ会社に残っているのは、男性の同期たち。
そして、女性の同期はほとんどが結婚退職して、会社に残っているのは電話をくれた彼女ともう一人くらい・・・だと思っていたら、なんと彼女は去年退職をしたのだと言う。
60歳の定年まであと少しなのになぜ?と驚いたが、理由については「親の介護と仕事の両立が難しくなって」という事だった。
今は一人暮らしをしている90歳を越えたお父さんの所に毎日のように通って、家事を含めた介護をしているのだそうだ。
「でも父としか話さないと、自分がボケてしまうような気がするから、集まりには積極的に顔を出そうと思っているの」と言い、実はこの同期会も彼女が幹事役なのだとか。
積もる話をしているうちに会っていなかった長い時間は無かったかのように、まるであの頃のように会社のお昼休みにご飯を食べながら話しているような感覚になった。
徐々に昔に戻って打ち解けてくると彼女が教えてくれた。
「会社を辞めた理由、介護もそうだけど、まだあるんだ」
「そうなの?」
「ほら、この年齢になると会社では同期とか数年の入社の違いなら差が出て来ちゃうじゃない?」
「差って?」
「役職の差とかお給料の差。真面目に働いてきても、結局、私は会社にとって必要とされていない人間なんだって思っちゃったのよね。そう思ったら、もういいかな~と思ってね」
彼女が辞めようと思ったのは最近のことではなく、何年も前からずっと考えていたのだそうだ。
彼女の場合、仕事を辞めてもお金の心配がないことと、養う家族がいないことも早期退職を決断した理由なのだと思う。
「で、辞めて気持ちがラクになったのだけど、生活が落ち着いてきたら、これから何をすればいいだろう?と思うようになってきてね。失業手当をもらうためにハローワークに行って思ったんだけど、私って長く会社勤めをしていたけど、実はな~んにもできなかったんだなってことを思い知ったわ」
会社では長く事務仕事をしていた彼女だが、事務系の仕事はもう就く気はなく、思い切り別の事をやってみたいと思っているそうだ。
「でも、まずは家の中の片づけかな」と、電話の向こうで笑いながら言った。
今までは、仕事と介護で毎日が精一杯、ヘトヘトになって部屋に帰ってくる生活で、ここ数年の間は自分の家を片付ける気力さえ湧かなかったそうだ。
「孤独死して発見されて、その時にこんな汚い部屋を誰かに見られたら恥ずかしいって思うようになったの・・・でも死んだら意識がないわけだから、恥ずかしいなんていう想いも無いんだろうけど」
そう話す彼女に「そんなことないよ。死んでも意識は残ると、私は思うよ」と言いそうになって言うのをやめた。
彼女の言った「孤独死」という言葉、そのあと何度も彼女は「孤独死」という単語を口にしたことが引っかかっていた。
賢い彼女の事だから、ちゃんと考えているとは思うが・・・
たくさんおしゃべりをして、最後に「同期会は行けないけど、こんどは昼間にお茶しようね」と約束して電話を切った。
今度は電話ではなく、会ってたくさんおしゃべりをしたい。
学校を卒業してすぐに就職した会社員時代の同期から電話をもらった。
当時、たくさんいた同期の中でも親しくしていたのが彼女だったが、私が結婚退職してから数回会ったものの子供が生まれてからはほとんど会うこともなかった。
ちょっと緊張している声で「○○です」と言った彼女の声は昔と変わらず若々しく、すぐにそれが彼女だとわかった。
「久しぶりに同期会をすることになったのだけど来ない?」というお誘いだった。
私たちの同期の中でまだ会社に残っているのは、男性の同期たち。
そして、女性の同期はほとんどが結婚退職して、会社に残っているのは電話をくれた彼女ともう一人くらい・・・だと思っていたら、なんと彼女は去年退職をしたのだと言う。
60歳の定年まであと少しなのになぜ?と驚いたが、理由については「親の介護と仕事の両立が難しくなって」という事だった。
今は一人暮らしをしている90歳を越えたお父さんの所に毎日のように通って、家事を含めた介護をしているのだそうだ。
「でも父としか話さないと、自分がボケてしまうような気がするから、集まりには積極的に顔を出そうと思っているの」と言い、実はこの同期会も彼女が幹事役なのだとか。
積もる話をしているうちに会っていなかった長い時間は無かったかのように、まるであの頃のように会社のお昼休みにご飯を食べながら話しているような感覚になった。
徐々に昔に戻って打ち解けてくると彼女が教えてくれた。
「会社を辞めた理由、介護もそうだけど、まだあるんだ」
「そうなの?」
「ほら、この年齢になると会社では同期とか数年の入社の違いなら差が出て来ちゃうじゃない?」
「差って?」
「役職の差とかお給料の差。真面目に働いてきても、結局、私は会社にとって必要とされていない人間なんだって思っちゃったのよね。そう思ったら、もういいかな~と思ってね」
彼女が辞めようと思ったのは最近のことではなく、何年も前からずっと考えていたのだそうだ。
彼女の場合、仕事を辞めてもお金の心配がないことと、養う家族がいないことも早期退職を決断した理由なのだと思う。
「で、辞めて気持ちがラクになったのだけど、生活が落ち着いてきたら、これから何をすればいいだろう?と思うようになってきてね。失業手当をもらうためにハローワークに行って思ったんだけど、私って長く会社勤めをしていたけど、実はな~んにもできなかったんだなってことを思い知ったわ」
会社では長く事務仕事をしていた彼女だが、事務系の仕事はもう就く気はなく、思い切り別の事をやってみたいと思っているそうだ。
「でも、まずは家の中の片づけかな」と、電話の向こうで笑いながら言った。
今までは、仕事と介護で毎日が精一杯、ヘトヘトになって部屋に帰ってくる生活で、ここ数年の間は自分の家を片付ける気力さえ湧かなかったそうだ。
「孤独死して発見されて、その時にこんな汚い部屋を誰かに見られたら恥ずかしいって思うようになったの・・・でも死んだら意識がないわけだから、恥ずかしいなんていう想いも無いんだろうけど」
そう話す彼女に「そんなことないよ。死んでも意識は残ると、私は思うよ」と言いそうになって言うのをやめた。
彼女の言った「孤独死」という言葉、そのあと何度も彼女は「孤独死」という単語を口にしたことが引っかかっていた。
賢い彼女の事だから、ちゃんと考えているとは思うが・・・
たくさんおしゃべりをして、最後に「同期会は行けないけど、こんどは昼間にお茶しようね」と約束して電話を切った。
今度は電話ではなく、会ってたくさんおしゃべりをしたい。