暖かくなってきて、庭の雪が一日毎にすごい速さで減っていく。
雪は放って置いても必ず無くなるのだけど、早く土が見たくて雪割りをしていた。
ザクザクとスコップを雪の塊に差し込むだけで、ずいぶん雪の溶け方が早まる。
私より早くに外に出て雪割りをしていたのは、お隣りのご主人で、ばったり裏庭で会った。
お隣りとは生垣や塀など遮るものが無いため、庭続きのようになっている。
だから庭に出ると、たまに両隣りさんと顔を合わすので、そんな時はよく立ち話をする。
立ち話をするのは、圧倒的に奥さんとが多いのだけど、珍しく今回はご主人と立ち話をした。
普段、挨拶をした後は、無言を通す無口なご主人なのだが、珍しく向こうから話題を振ってこられた。
「最近、庭にアライグマが来るんですよ」とご主人がおっしゃった。
アライグマと聞いても一瞬、何のことか分からなかったが、昔のアニメが頭に浮かんだ。
「アライグマって、もしかしてラスカルですか?洗濯する熊?」
思わず両手で洗濯をする動きをしたら、「そうそう、洗濯する熊です」とおっしゃった。
お隣さんは、最近、庭にカメラを付けたそうだ。
「後で画像を確認したら、夜中にアライグマが来てるんですよ」
アライグマがこの辺りに居るとは知らなかった。今まで一度も見たことがない。
単純な私は「見たいなあ、、可愛いでしょうね」と言ったのだが、ご主人は少し困った様子で教えてくれた。
「アライグマは外来生物なので駆除の対象なんですよ。もともと住んでいる蝦夷たぬきが住めなくなってしまうので、、、それにアライグマを一匹見つけたら、周囲には百匹いると言われているくらい繁殖力が強い」
ご主人は仕事で駆除をしているそうだが、罠にかかるのは、カラスが多いのだとか。
「というか、カラスはわざと罠の中に入るんです。罠の籠の中に餌を置くんですが、朝行くと、いつも同じカラスが罠にかかっていて、中で堂々と餌を食べてますよ。カラスは駆除の対象じゃないので、すぐに逃してもらえるってわかっているんですね」
やっぱりカラスって頭がいい。
でもアライグマが罠にかかったらどうなるのだろう、、、考えたくない事だが、仕方がないのだろうか。
元はと言えば、人が飼っていたアライグマを、野山に放したのが原因だという。
まったく、、、最後まで覚悟を持って飼えないのなら、最初から飼うな!と思う。
今後ペットを飼う人には、資格審査を受けることを条件にしたら良いのではないかと、いつも思う。
「これから暖かくなってくると、森の中で親から離れて迷子になっている子どものアライグマを見かけますよ。可愛いです」
お隣のご主人は、初めて笑顔になって教えてくれた。
ただし、野生のアライグマはキツネと同じく、エキノコックスを持っているので、決して触ってはいけないそうだ。
「それからアライグマだけに、気性があらい。噛みついたら離しませんから」と、ご主人は表情を変えずにジョークを言った。
ここは笑うべきか迷う、、、
他にもテン(イタチ科)やエゾリスなどが映っていたとか。
昼間はあまり見ることは無いが、夜になると庭はかなり賑わっているのだな〜
庭に集っている動物たちを想像しながら、雪割りを終えた。