ミーロの日記

日々の出来事をつれづれなるままに書き綴っています。

美しい織物

2016-11-24 16:10:32 | 日記
最近読んだ本は吉野弘さんの詩集「素直な疑問符

吉野さんは残念ながら2年前に87歳で亡くなったが、何気ない日常生活の中にある人の優しさや弱さのようなものを多く詩に書き残している。

この詩集の中で好きな詩はいくつかあるのだけど、特に好きで何度も繰り返して読んだのが「生命は」(いのちは)という詩です。

「生命は」(いのちは)

生命は 自分自身だけでは完結できないように つくられているらしい

花も めしべとおしべが揃っているだけでは 不充分で

虫や風が訪れて めしべとおしべを仲立ちする

生命は その中に欠如を抱き

それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分 他者の総和

しかし 互いに 欠如を満たすなどとは 

知りもせず 知らされもせず

ばらまかれている者同士

無関心でいられる間柄

ときに うとましく思うことさえも許されている間柄

そのように 世界がゆるやかに構成されているのは なぜ?

私も あるとき 誰かのための虻(あぶ)だったろう

あなたも あるとき 私のための風だったかもしれない

以下(素直な疑問符より)抜粋しました。

私たちは日常生活を送る中で、見知らぬ誰かの力を借りて生きているなんてことを意識してはいない。

でも、本当は無数の他者が媒介してくれて、今の自分の幸福がある。

このことを吉野さんは「他者の総和」という言葉で表現されている。

たった一本の糸では美しい織物が織れないように、人は一人では生きることができず、無数の他者があって初めて美しい織物が出来上がる。

そのようなことが、この詩から伝わってくるような気がする。







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