言語空間+備忘録

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戦略兵器削減条約(START)の裏側

2010-12-24 | 日記
毎日jp」の「新START:米批准 被爆地から歓迎の声 米「核予算維持」に批判も」( 2010年12月24日 )

 米露の新戦略兵器削減条約(新START)の批准承認が22日、米上院で可決されたことに、被爆地では歓迎の声が上がった。一方で、「核抑止力の維持」を明言するオバマ米大統領が今後も巨額の核関連予算を計上する方針であることから、「核廃絶」に向かっているとは評価できないという厳しい意見も出ている。

 秋葉忠利・広島市長は「オバマ米大統領が目指す『核兵器のない世界』の実現に向け大きな弾みとなる条約の発効に一歩近づいたことを歓迎したい。ロシアもできるだけ早く批准するよう期待する」とコメントした。

 広島県被団協理事長の坪井直さん(85)は「我々の願いは『核兵器ゼロ』だが、核兵器が少しでも縮小されることはうれしいし、評価する」と歓迎。そのうえで、「核実験全面禁止条約(CTBT)の早期批准や新たな核兵器の研究をやめるべきだ」と求めた。

 条約は配備済み戦略核弾頭の上限を1550発と規定するが、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(71)は「劇的に減ったとは言えないし、(射程が短く地域間紛争で使われやすい)戦術核は対象外で、『核廃絶』への道筋の上に位置づけることはできない」。さらに、オバマ大統領が今後10年間で800億ドルの核兵器関連予算の計上を発表していることなどに触れ、「新たな核開発を保証するもので、核軍拡とも言える」と批判した。

 入市被爆者で元長崎大学学長の土山秀夫さん(85)=長崎市=も「戦術核兵器や備蓄された核兵器は対象外。今後は、これらの削減への取り組みなどが課題となる」と指摘した。

 長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄(すみてる)会長(81)=同=も「広島や長崎に投下された原爆の何十倍、何百倍の威力とみられる核弾頭が残る事実は変わらず、喜べない。オバマ大統領には、核弾頭全廃に向けやることをやってほしい」と注文した。【寺岡俊、加藤小夜、柳瀬成一郎、下原知広】


 米露の新戦略兵器削減条約(新START)が米上院で批准承認された。しかし「核抑止力の維持」を明言するオバマ米大統領は今後10年間で800億ドルの核兵器関連予算の計上を発表している、と報じつつ、反核団体・平和団体の声も紹介されています。



 オバマ大統領は核兵器を削減すると言いつつ、核兵器関連予算を計上しています。核兵器を減らしたいのか、増やしたいのか、どちらなのでしょうか。

 この問いの答えは、次の引用を読めば一発でわかります。



西部邁・宮崎正弘 『日米安保50年』 ( p.228 )

(宮崎)  シミュレーションを重ねていくと、アメリカの力が後退して、今後生じる劇的な変化は、やはり中国とアメリカの関係において起こるだろうと思います。中国は十年以内に空母を二隻造る体制に持っていこうとしているうえ、核戦力も十分すぎるくらいあります。核弾頭は二百数十発ある。しかも中国の開発は後発組ゆえに、一基のICBMに十発から十二発を搭載する多弾頭型だから、費用対効果ではなく戦力の効果比でいくと、ものすごいことになる。
 アメリカとロシアが今、核軍縮とか戦略核の削減と言っているのは、旧来の、もう役に立たない単発の兵器が多いからです。しかし地下のサイロに隠すなどして持っているから、管理コストがやたらとかかって困るのです。ロシアはもっと露骨で、旧式のICBMを廃棄して、その中にあるプルトニウムを取り出して原発の燃料にしようとしています。そうすると売り物になって、日本にも売れるかもしれない。そういうことを考えています。ロシアにしてみれば二千発も持っいれば十分で、アメリカだって五千発も持っていれば、それでも地球を四十回くらいぶっ壊してもまだ余るくらいの戦力です。
 ただ、相対的に中国の核戦力が増すことになるのは事実です。中国の軍事力は非常に強くなるでしょう。アメリカの一番の恐怖感はそこにあります。そこで、何をするか分からない国とは軍事交流を始めたほうがよいという方針に変わりました。今盛んに軍艦の友好訪問をやり出して、中国軍の首脳をアメリカに呼んで意見交換することも始まっています。これは非常に大事なことで、人間関係をつくって、フランクな話をしているうちにジョークが飛び出して、本音が聞けるわけです。実際中国軍高官が、アメリカ太平洋軍の司令官と話している時に「太平洋の支配海域をハワイの東と西で分けませんか」と言ったそうですけど、あれはおそらく中国の本音です。
 もし十年以内に中国が空母を二隻持つことになると、空母は動く空軍基地ですから、東シナ海に一隻、南シナ海に一隻あれば、アジアの海は完全に中国の海になります。そこまでの政治力の変化が射程に見えてきたら、次に日本が対応すべきは何かということも、当然分かるはずです。


 アメリカとロシアが核軍縮・戦略核の削減を言っているのは、古くて役に立たない単発の兵器が多いからである。最新の核兵器は一基のICBMに10~12発を搭載する多弾頭型である、と書かれています。



 要するに、
  1. アメリカもロシアも、古くから核兵器を開発してきたために旧式(単発)の兵器が多い。しかしいまや、最新式(多弾頭型)の核兵器が開発されている。
  2. アメリカもロシアも、十分すぎるほど核を持っているので、威力の低い旧式の核兵器を処分したところで困らない。困らないどころか、かえって管理コストが浮くのでさっさと処分したい。
  3. 戦力としては最新式の核兵器のみで十分である
ということですね。

 したがって最初の問いの答え、つまり核兵器を減らしたいのか増やしたいのか、の答えは

   旧式の核兵器は減らしたいが、
   最新式の核兵器は増やしたい

ということになります。この解釈は、「核抑止力の維持」を明言して核兵器関連予算の計上を発表しているオバマ大統領の行動と完全に合致します。この解釈(推測)は的を射ているとみてよいと思います。

 したがって、当面、核兵器が「ゼロ」になる可能性は「ゼロ」です。核兵器がなくなる可能性はないと考えられます。



 これは当然ではないかと思います。「核廃絶は不可能、核の傘は必要」に述べたように、現実問題として、核兵器がなくなる日がくる、核廃絶は可能である、などとは考えられません。

 それにもかかわらず、核廃絶を叫び続けることは「ムダ」だと思います。

 また、「アメリカの核実験と「核兵器のない世界」」で述べたように、アメリカが核を持っているからこそ、日本の反核団体・平和団体は核廃絶を主張する「自由」があるわけです。もしもアメリカが完全に核廃絶を実行してしまえば、米中の軍事バランスは崩れ、中国の軍事力が圧倒的になるでしょう。そして日本の米軍基地はなくなり、代わりに中国人民解放軍の基地になります。そうなれば、日本の反核団体・平和団体が核廃絶を主張しようものなら、「国家政権転覆扇動などの容疑で逮捕され、懲役11年、政治的権利剥奪2年の判決」を受けたりすることになるわけです。

 したがって、反核団体・平和団体の主張は「ムダ」であるのみならず、「自分で自分の立場を悪くしている」ということになります。つまり露骨に言えば「トンチンカン」ということです。

 さらにいえば、「トンチンカン」な「反核団体・平和団体自体が(あとで)困ることになる」のみならず、「日本全体・日本人全体が窮地に陥る」ことになります。

 したがって、反核団体・平和団体の主張はいかがなものか、と思われてなりません。



 いかがでしょうか。反核団体・平和団体の皆様、一度、考え直していただけないでしょうか。「日本全体・日本人全体が窮地に陥る」ことになるのですよ?

 私ですか? 「核兵器は廃絶すべきであり、核廃絶は可能である」という反論コメント(根拠の記されているもの)をいただければ、もちろん考え直します。(^^)



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