満天の星空が見たい!

温泉旅がメインの生活。酒とグルメとミステリ小説、ごくたまに失恋の話。

山形県南陽市の天使よ、幸せを祈っています!

2018-07-21 23:29:22 | 人間

赤湯温泉で女神に遭遇する!は大げさな表現かも知れない。しかし、自分にとっては、女神より天使と言うべきか、その若き女性は、一人旅の寂寥感を癒してくれた。自分にとって地図はお友達で、ほとんど間違うことはないのだが、赤湯駅から国道を歩いて何番目の信号を右折……と言う具合に進んだものの、少し時間が超過した感じがあった。道は、一度迷うとすべての感覚が狂ってしまう。文字通り、迷路になるのだ。

南陽市内と言っても、午後3時くらいの時間帯はほとんど人が歩いていない。「うーむ」と360度、何か目印になる建物を探したが、特別目立つものはない。グーグルの地図を眺めていたその時、小さな川の橋の向こうから若い女性が歩いてきた。実は最近、人に道を尋ねてもいい結果が出ていない。ジーパンに半そでのポロシャツ、ヤンキースのロゴ入りの帽子、白ぶちのメガネ……。自分では派手な格好ではないと思うのだが、大柄な体形(183cm、75キロ)が威圧感を与えるのか、「あの~」と近寄ると、手をかざして「ストップ」という表現をする方が多い。白ぶちのメガネが悪いのか、それともヤンキースの野球帽が嫌いなのか、若いころには経験した事がなかったことである。要は、今の自分は偏屈じじいに見えるのかも知れない。

しかし、その女性はちがった。「はい?」と、立ち止まり、ニコッと笑ってくれた。その素晴らしい笑顔!どんな恋愛映画でも見たことがない、自然で柔らかい、包容力がある笑みだった。「すみません、自分は赤湯駅から赤湯温泉に歩いて来たつもりなんですが、どうも見当たらないんです」と言うと、「あら、そうですか。でもこの辺りがそうなんですよ」と、また自然な笑顔、「どこにお泊りですか?」と、聞かれたので、「は、はい、○○旅館です」と言うと、「あら、それじゃあ、この道を真っすぐ行って、左折したらすぐその○○旅館さんです」と教えてくれた。赤湯温泉は、普通の住宅街に散在する温泉地だった。旅館はひとところに固まってない。

「私は幼稚園に子供を迎えに行くところなんです。同じ道ですから、一緒に行きましょう」とまで言ってくれた。一緒に歩いたのは5分くらいだったが、「赤湯温泉に来たら、ぜひお土産に○○を買ってください。もし夜がお暇でしたら、××に行くと楽しいですよ」と、その間にもいろいろな情報を教えてくれる。「あの~、自分は今は大阪で暮らしていますが、実は山口県の新南陽市で育ってですね」、「あ~、はい」、「町から市に格上げされたときに、こちらに南陽市があったので、新南陽市になった話、ご存知ですか?」、「はい、きのう知りました」と、彼女はにっこり笑った。「きのう?」、「そうです。本当に奇遇ですね。実は主人がたまたまあちらの方に出張になりまして、昨夜電話で話してくれたんです」、「今の周南市(徳山市と新南陽市他が合併)ですよね」、「そうなんです。山形県の南陽市から来たことを知った地元の方が、その話をされたそうです」、「な、なんと!」

本当にこのシーンを台本で作ったように奇遇な話だった。「私、主人が帰ったら早速この話をします」、「そ、そうですね。自分もこの話を誰かにしそうだ」、彼女の瞳は初夏の太陽のようにキラキラ輝いていた。女神だ、天使だ、そう心でつぶやいていたが、やがて別れが来た。「それでは赤湯温泉、楽しんでくださいね」、「旦那さんによろしくお伝えください」、頭がボートしたまま、彼女を見送った。彼女は次のカドを曲がるまでずっとこちらを振り返り、手を振ってくれた。

なんだ、たったそれだけの事かと言うなかれ。「旅をして良かった。日本って本当にいい国だなあ」と再確認した次第である。


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