今日、久しぶりにカラオケに行った。先輩(5年前に退社)の元後輩である主婦
二人は、一人が43才、子供は中学の女の子で、もう一人は58才、男女ひとりず
つ子供はいるが、ともに30才を超えていると言う。先輩は男前で、その主婦二人
は、会社の時から先輩のファンだったらしい。
俺はもともと人見知りはしないので、「よろしく。ではさっそく歌いましょうか。
じゃあ、まず俺から…」と、大滝詠一の「幸せの結末」を歌った。しかし、これが
失敗だった。自分的には最近の自信作だったが、入室したばかりで、何を飲むか、
何を食べるかで3人はそれどころではなかったみたいである?(苦笑)
飲み物、食べ物が来て、落ち着き、それぞれが自分の18番を歌いだしたころ、俺も
エルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」を歌った。すると43才の彼
女が、「最近聞いた歌で、これほど心に沁みたことはない」と言ってくれた。大阪
ミナミのラウンジのママが、「商売柄、長いこと、カラオケを聞いているけど、あ
なたのこの歌はベスト3に入るわ」と太鼓判を押してくれた俺のベストワンである。
実はこの歌はどこでも評判が良く、大阪キタのクラブのママも、「本人(プレスリー)
よりもうまいんとちがう?」と誉めてくれた。その店では、ダンスタイムの歌として、
何度もリクエストしてもらったが、当然エルビス・プレスリーのあの甘い声は出せない。
しかし、誉めてもらって悪い気はしなかった。
じゃあ、と、今度は53才の主婦が言った。「私からMさんにリクエストしてもいいです
か?」、「うん、知っている歌なら何でも歌いますよ」と言ったら、「ジュリー(沢田研
二)のー時の過ぎ行くままーは歌えます?」と言われた。歌えるどころか、この歌は、俺
が結婚するときの決め歌というか、当時の彼女が大好きな歌だった。
あなたはすっかり 疲れてしまい
生きていることさえ 嫌だと泣いた
こわれたピアノで 想い出の歌
片手でひいては ため息ついた
時の過ぎゆくままに この身をまかせ
男と女が 漂いながら
堕ちてゆくのも しあわせだよと
二人つめたい 体あわせる
俺も久しぶりで、昔の嫁さんを思い浮かべながら熱唱したらみんなシーンとなって、43才の彼
女が涙を浮かべながら、「すみません。もう一度歌ってもらっていいですか?」と、リクエス
トが来た。こうなると、俺は「歌手」である。「もちろん!」と言って歌ったら、女性二人が
また涙を流して頷いていた。
先輩が、「Mちゃんは、この曲で何人女をものにしたか!」と冷かしたが、そんなことはない。
これほど誉めてもらったのは初めてで、次に演歌、内山田洋とクールファイブの「愛の旅路」を
歌ったら、「演歌は心に響きませんね」と言われた。そう、演歌は好きだが、歌い方がまるで分
かっていない。「こぶし」が全然回らないのだ。
現在、独身生活4年目である。エルビス・プレスリーの「好きにならずにはいられない」を本気で
歌って、口説きたい女性はどこかにいないものだろうか?先輩は、「来年が勝負だ!」と発破をか
けてくれるけど、このまま、スルーのような気もする。出会いを求めて酒を飲み、旅に出る。しかし、
人との出会いは意識したらダメで、その境地が難しい。