満天の星空が見たい!

温泉旅がメインの生活。酒とグルメとミステリ小説、ごくたまに失恋の話。

旅に魅了された人々の恋愛事情

2018-11-17 23:39:52 | 旅行
宇奈月温泉駅前の温泉噴水 ここから7キロ離れた黒薙という黒部峡谷の奥から高温のまま送られてくる

久しぶりの温泉旅。今回は仕事の仲間と二人、観光は黒部トロッコ電車がメインだった。旅の友は初めての黒部峡谷だったらしいが、「京都のトロッコをイメージしていたが、全然違いますね。高さも景色もスケールが違う!」と、驚いていたから、来た価値があったようだ。以前、6名で訪れた時は初夏のころで、V字谷を渡る風が爽快だったが、今回も晩秋の、やや冷たさを感じる澄み切った風が気持ち良かった。個人的には、晩秋のころが一年で一番過ごしやすいのではないかと思う。ただ、駅の人に聞くと、「紅葉には少し遅かったですね(11月15に訪れた)。10日前に比べると、かなり紅葉が散って、色合いがだいぶ落ちています」と教えてくれた。トロッコは11月30日で終了、来年の4月半ばまで運休する。その間、職員は何をするのかと尋ねると、トロッコを全部ばらして組み直したり、運転期間の再整備をするそうである。

この日の宿は、宇奈月温泉の中では中規模の建物だった。ただ、温泉街から少し離れていて、ドイツのライン川の城のように独立しており、全室黒部川の景観が楽しめるということで選んだ。さっそく温泉に入り、湯上りビールを飲んだ後、お楽しみの夕食となった。食事は富山湾の地魚満載のコースだったが、桶に盛られた刺身は優に三人前ぐらいあり、それが一人前と聞かされて、二人とも「食べれるかなあ」と、ほぼ同時に声が出た。

「大丈夫でございます。お好きな日本酒を飲みながら、ゆっくりご賞味ください」という係のお兄さんはにっこり笑ってわれわれにお酌してくれた。その食事処のフロアはテーブル席が12卓ほどで、半分くらい埋まっていたが、もうひとり若い女性もテキパキ動いていた。「やっぱりブリがうまいなあ」なんて話をし、冷酒をグイグイやっていると瓶が空き、「おおーい、日本酒追加!」と言うと、その女性が我々の卓に来た。「お姉さん、地元の出身?え、ちがうの?」と、さっそく友人が声を掛ける。「おい、忙しそうだらやめとけ」と言うと、その女性は、「とりあえずお酒の方をお持ちしますので」と、それでもいい笑顔で去っていった。そして、追加の酒を持ってきて、お酌をしてくれた。「おお、なんと愛想のええおねえちゃんやわ」と、友人は上機嫌である。調子に乗った友人は機関銃のように質問を彼女に浴びせ、話をしていたが、もうひとりの男性は文句も言わず、彼女の分まで動いて業務をこなしていた。

友人、「彼氏はいるの?」、女性、「はい。10歳上の人がいます」、友人、「なんや、おるんかい(笑)。で、結婚は?」、女性、「そうですね。私はしたいのですが…」。その話を聞いていて、ビッと脳がひらめいた。俺、「あそこにいる男があなたの彼氏やね」、女性、「………(苦笑)、どうしてわかったのですか?」、友人はそれを聞いて、ぽかんと口を開けていた。そして、「う、うそやろ~」と、男の方を見る。すると、その男性はちようど手すきになったのか、こちらのテーブルにやってきた。「なにか御用ですか」と笑顔をうかべて…。

その二人の話が興味深かった。彼は鹿児島県出身、そして女性は山形県出身で、ある職場で恋人関係になったが、彼の旅志向が強く、全国を今のような接客業で渡り歩いているという。「この宿はまだ2カ月ですが、ここの前は島根県の隠岐の島プラザホテルで半年いました。島一番の大きなホテルで、いいところですよ。ぜひ、行ってみてください」と言う。「そこは彼女も一緒に?」、「ええ、ずっとこの5年間一緒に旅をしています」、「でもあなた、35歳やろ。そろそろ落ち着かんと、彼女がかわいそうやなあ」と言うと、「そんなことはないですよ。私もけっこう楽しいですし」と、彼女が彼をかばうように言った。

「次はどこへ行くの?」と聞くと、「まだ決まっていません。でも、お客様のおっしゃるように、そろそろ流れ仕事も潮時かも知れませんね。ただ、この仕事が好きなので、一生働けるような、魅力的なホテルを探してみます」と、彼女の方を見て行った。「そのホテルが決まった時は連絡してよ。すぐに行くから」、「はい、必ず!」、彼女はずっと笑顔を絶やさず話を聞いていたが、部屋に戻るとき、すっと寄ってきて、「本当にありがとうございました」と、小さな声で言った。


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