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温泉旅がメインの生活。酒とグルメとミステリ小説、ごくたまに失恋の話。

ある秘湯の宿での微妙(好意?悪意?)なできごと

2018-11-16 17:36:07 | 旅行
う~ん、微妙?いや、これは「微妙」の二文字で片付けるべきではなく、ひとこと言っても良かったかもしれない。昔、シリアスな内容の漫画を読んで、考えさせられたことがある。今回の件は、その漫画の内容に似ている。その漫画の内容とは…。

『いつも通う、食堂の女将さんが病気で倒れ、しばらく店を休んでいた。そこの唐揚げ定食が半端なくうまい。これはその男だけの意見ではなくて、店を訪れるお客の大半がその味を求めて通っていた。皆さんは店の前に立ち、(休業)の札を見てう~んと、ため息をつき、今か今かと再開の日を待っていた。その男も麻薬的なあの唐揚げの味が忘れられず、毎日その店の前を通ってはしょんぼりしていた。それで、近所の人に話を聞くと、風邪をこじらせて肺炎を併発、今は店の奥の部屋でずっと寝ているというのだ。女将さんは一人暮らしなので、その近所の方が時々様子を見に行っているらしい。

歳も歳だし、もう再開は無理かも…という話を聞いたその男は一念発起して、その店の中に入り、女将さんを見舞った。そして、店の再開を待っているお客が何人もいて、何とか頑張って一日でもいいから店を開けてほしいと言った。そう話すと女将は、今は立つことも無理で、貴方にレシピを教えるから、指示通り作り、その方たちを満足させてもらえないかと懇願した。男は目を輝かせ、一日料理人になることを承知し、常連の人々にその話を伝え、次の日曜日の昼に店に集まってもらった。

集まった人は10人、自分を入れて11人だ。奥の部屋で女将は寝ながら男にアドバイスし、見事あの唐揚げ定食の味を再現した。そして、常連客全員が、あの味だ、めちゃくちゃ旨い!と感嘆し、満足の表情を浮かべ帰っていった。お代はひとり600円、しめて6千円を女将に渡した。そして男は台所を片付け、女将に挨拶をして帰ろうかと部屋に入った。そして、ありがとう。僕も凄く満足しました。やっぱりここの唐揚げは世界一だ!と言って席を立つと、女将が言った。

「何だって、あんたも食べたのかい。それじゃあ、600円足らないじゃないか。私は6000円しかもらっちゃいないよ」、男はしばしフリーズしたが、申し訳ありませんと言い、女将に600円を渡して帰った…。

今回の話はそれに近い。ある秘湯の宿をネット予約し、ご希望があれば…と言う欄に、「駅からタクシーで行くつもりだが、帰りのタクシーを朝呼べるのか?」と書いた。すると、次の日の昼過ぎに女将から電話が掛かってきて、「タクシーでくれば片道4000円ぐらいかかる。もったいないので、主人が迎えに行きます」と言った。「本当ですか。わざわざ連絡ありがとうございます」と、感激した自分は一緒に行く友人に、「な、いい宿だろ。こんな温泉宿に泊まってこその通だよ」と、自慢した。そして、手ぶらでは悪いと、1500円くらいのお土産を持参した。

当日、主人はトヨタ・セダンのマイカーで迎えに来ていた。そしていろいろ温泉の話をしたが、「うちは何もないが、温泉だけは自慢できます」と、笑顔で行った。その話の通り、温泉は表面に油を浮かせたような素晴らしい泉質、小ぶりの浴室ながら、掛け流しで我々を満足させてくれた。食事も素朴ながら地産の料理で、1万円以下の宿泊料とは思えないクオリティだった。だが、…。

翌日の朝、宿泊の伝票を見て驚いた。なんか、思ったよりも高めだなと各項目を見て行くと、「主人、送迎料金、送り迎え4000円」と書いてあった。うそ~と思い、声が出かかったが、友人が、「女将、大変いい宿でした。温泉は最高だったし、料理も酒も旨かった」と、女将にハグをしていたので、黙って払った。そして帰りの電車の中でその伝票を見せると、友人は何とも言えない表情をして俺を見た(笑)


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