小野川温泉の日帰り施設、尼湯。もちろん、源泉掛け流しである。
2日目は村上から2つ戻って坂町駅へ。いつもなら朝食の後はゆっくりして、チェックアウトぎりぎりまで宿でのんびりするのだが、米坂線は本数が少ない。1日で5本、午前中はたった2本しか運行していない。村上発が8時49分、そして坂町発の米沢行きが9時34分。これに乗らないとすべてのスケジュールが狂ってしまう。しかし、この本数の少なさがローカル電車としての希少価値であり、ワクワクの原動力である。
電車は意外にも2両連結、そこそこ乗客もいた。荒川沿いに国道113号線と平行して走るこの米坂線、真ん中に奥羽山脈があり、山形、福島方面に行く道はここしかない。帰りは高速バスを利用して113号線を走ったが、特に難所はなく、「秋は紅葉が素晴らしい」という口コミ も納得がいく風景だった。このローカル電車に揺られて約2時間で米沢に到着。駅前でレンタサイクルし、さっそく市内観光に向かった。
米沢と言えば上杉家と米沢牛。そんな感じの街並みだった。駅前に有名らしき米坂牛の食事処が2軒、そのうちの1軒が有名な駅弁、「牛肉どまん中」を作っているらしく、大きな看板が目立っていた。しかし、ここだけではなく、町中に「米沢牛」の看板。他の食堂を見つけるのが難しいくらいあちこちで見かけた。上杉神社までは最上川の橋を渡って自転車で10分ほどの距離。平日にもかかわらず、観光客は多かった。
上杉神社は上杉謙信を祀る神社だが、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」で有名な上杉鷹山(ただし、 その言葉の元は武田信玄らしい)や、上杉景勝、直江兼続の像も堂々と鎮座していた。さらに宝物殿や博物館もあり、なかなか見どころの多い観光地である。ただ、ここのレストランでも食事のほとんどが米沢牛関連(ステーキ、ハンバーグ、シチューなど)で、当然ながら値段も安くはない。自分はつつましく、今夜の酒の肴にしようと思い、お土産販売所で米沢牛のスジ肉煮込み(1080円)と、牛肉弁当(1250円)を買った。昼ごはんとして、生ビール一杯と米沢ラーメンを食べたが、山形県はラーメン消費量が日本一と言うのを思い出した。去年訪れた酒田市や、鶴岡市も町中でラーメン店をよく見かけた。米沢ラーメンは醤油味の素朴なラーメンで、懐かしい味がした。
自転車で駅まで戻り、小野川温泉行の バスに乗った。ここから30分で旅のメインともいえる温泉地に着く。小野川温泉は世界三大美人の一人として有名な小野小町が発見し、伊達政宗公や歴代上杉の殿様もこよなく愛した名湯で、温泉マニアにとって外せない温泉と言われている。到着したのは14時半で、チェックインには30分ほどの時間があった。昔ながらの温泉街で、こじんまりした旅館、少し大きめのホテル、年季の入ったお土産店、そして源泉掛け流しの日帰り温泉施設が2軒、なかなかの賑わいである。その裏手と言うか、温泉街の右側に最上川が流れているのも好印象だった。今夜の宿は「亀屋万年閣」という旅館だが、なかなか味わいのある宿で、源泉掛け流しの温泉も素晴らしかった。
いい温泉地と言うのは、到着した時点で温泉 の匂い、香りが香ばしく、「おおっ」と声が出る。小野川温泉はまず硫黄の匂いがした。その後に何とも言えぬ甘い香りが漂ってきた。この時点で素晴らしい温泉だと確信できる。さっそく入浴すると、白い湯の花が舞い、メタケイ酸の含有量が多い美人系の温泉で、今まで入浴した温泉の中でもベスト10には入る魅力的な泉質だった。いやちょっと待て、ベスト5かも知れないな~と考えながら楽しく湯あみした。ただ、この日は夕方から強めの雨が降ってきて、雨音を聞きながらの就寝となった。雨音は状況によっては寂しく感じる。一人旅のマイナス点である。そこで持参したウィスキーをグイグイ飲み、酔いに任せて寝ることになった(笑) その③に続く。