AI (ええ愛・Atelier Ichien)

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人生を肴に 人の心に灯をともす 5474より 写真はMさんからいただいたプレゼントです(*☻-☻*)ありが...

2023年09月21日 | 
【人生を肴に】5474



太田和彦氏の心に響く言葉より…


今年で七十七歳になった。

喜寿だ。

わが人生に酒が離れることはなかった。


学生時代はカネがなく、本格的に飲み始めたのは、入社した会社の先輩と通った銀座 の居酒屋「樽平」からだ。

お前はどう思うと問われて考えを述べ、続く先輩の言葉を聞き、論を交わし、少しくだけると噂話、バカ話、失敗談で笑って互いを知ってゆく。

酒とはなんと良いものか。


社会に出ると、人との付き合い席には必ず酒があった。

酒はこれから親しくなろうという挨拶代わりであり、心を裸にして話すための潤滑油であり、決意を込めて切り出すための勢い付けであり、失意の友を慰める心であり、失敗の悔しさを流し去る手段であり、まことに酒というものは人を育てる必需品だった。

その時期も過ぎると酒自体が目的化し始め、そのために居酒屋に入るようになった。

話題はなんでもよく、というか話題はいらなく、関心は目の前にある酒に。

その味を 云々(うんぬん)し、産地を探り、合う肴(さかな)はなどと言い始める。


さらにそれも常態化すると、その場所たる居酒屋に興味がわき、もはや誰かと飲むのもやめて一人で入るようになり、やがて未知の居酒屋を求めて日本中を歩き始めた。

そこで知ったものは大きかった。

居酒屋は土地の歴史や風土、気質をじつに反映している。


以降ライフワークとなって本も山ほど書き、テレビのルポ番組まで始めた。

五十年におよぶながい酒との付き合いも、この頃は年齢もあって、家飲みが増えた。

晩酌だ。

その盃を重ねるうちに、家飲みには外飲みとは違う別の世界があると気づいた。

外飲みであれば机には注文した肴が並ぶが、家飲みの机に置かれた肴は、自分のそれまで過ごしてきた人生だったのだ。


助けた亀に連れられた浦島太郎は、竜宮城で乙姫様と、月日のたつのも忘れて夢のうちを過ごして帰り、もらった玉手箱を開けると、一瞬の煙に老人になった。

深夜、家で独酌しながら、その玉手箱を開けてみよう。

わが人生の肴は、酸いか甘いか、辛いか、苦いか、それとも......。


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中国の唐の時代に、于武陵(う ぶりょう)作の「勧酒(かんしゅ)」という題名の詩がある。

【勧酒】 《酒を勧(すす)める》

さあ、君に黄金の杯を勧めよう

このなみなみと注がれた酒を断ってはいけない

花が咲く頃には、風雨が多くなり、咲いた花はやがて散ってしまう

花と同様に、楽しみの後に別れはやってくる

人生に別れはつきものだ



これを、井伏鱒二は次のように訳した。


この杯を受けてくれ

どうぞなみなみ注がしておくれ

花に嵐のたとえもあるぞ

さよならだけが人生だ



人生には、たくさんの出会いもあるが、また同時に様々な別れもある。

親と子、家族、友達…


まさに、人生を肴に…

今宵も一献傾けたい。





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