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コンピュータ部門、鳴かず飛ばずのソニー。起死回生の一手とは。

2011-07-15 | コンピュータよもやま話

いまでこそ、パソコン分野でのVAIOシリーズ。ゲーム機分野でのPS(プレー・ステーション)シリーズをそろえ、順風満帆に見えるソニーも一時期、パソコン分野において撤退の危機にあったことを知る人は少ない。

1980年代前半、パソコン部門で、ソニーは鳴かず飛ばずの販売成績であった。SMC777シリーズ(8ビット機)を発売販売するも、先行するNEC、シャープ、富士通に遥か遅れをとっていた。今では良いおばさんになってしまった、松田聖子さんをイメージキャラクターに起用しても、売り上げは伸びず、ソニーの先行きに不安が付きまとった。

そんな中で、ソニー内部に一つの部署が出来上がった。

責任者一人とその部下4名からなる、新しい事業部の名は「スーパーマイクロ事業部」と名づけられた。

部長には、ソニーヨーロッパにいた土井が就任した。かれは、オランダフィリップス社と共同で音楽用CDの規格をまとめた人物である。(CD生みの親といってよい。)その彼をヨーロッパから呼び戻し、新しいコンセプトに基ずくコンピュータを製造販売することが、土井の当面の任務であった。他社は、16ビット機に主力を移しており、そこに割り込むには、大いなるリスクが付きまとう。そこで、土井は販売ターゲットをエンジニアリング部門に絞った。「エンジニアが使ってみたいとおもうような、高性能なワークステーションを造ろう。」アメリカでのSunワークステーションの成功を知る土井は、和製のエンジニアリング・ワークステーションを開発しようと決意した。

ハードもソフトも1から造ろう。必要なら業界標準を積極的に採用しよう。基本設計は若い人に任せる。「君が思わず使いたくなるようなワークステーションを自由に造ってよろしい。」という魅力的なうたい文句で、これはという人材に声をかけた。そうやって集められた4人の若者の中心人物はTであった。東工大の大学院を卒業したが、定職にはいまだついていないが、コンピュータ関連の知識と技能には定評があった。ソニーのプロジェクトに「おもしろそーやないか。」と土井の下に集まった。

CPUは68系統(モトローラー製品)。OSはUNIXのBSD(バークレー・ソフトウェア・ディストリビューション)を採用、ウィンドシステムはMITのX-Window R11を採用することに、さして時間はからなかった。基本仕様から詳細設計までスムーズに決まり、約1年半で発売までこぎつけた。その名もソニー「News」ネットワーク。エンジニアリング・ワーク・ステーション」の頭文字からとってものである。

発売直後から、エンジニアリング部門から大量に注文が入った。それまでSunのワークステーションの独壇場であった分野に、後発のソニーは起死回生を目指してNewsを開発、販売した。狙いは、的をえており、その成功は土井部長の手腕であった。さらにDTP部門では、企業内のドキュメント製造支援システムを住友金属グループが積極的にシステム売りをしてくれたおかげで、この分野のTOPシェアを記録した。

次に、土井は開発環境を備えたこのNewsを社内開発の道具として積極的に使い始めた。今でも記憶に新しい「ロボット犬アイボ」の開発も、このNewsを用いてなされた。さらに、遅れをとっていたパソコン分野にVAIOを開発し、販売を開始した。もちろん、設計開発にNewsがフル回転で使われた。最初は土井以下5名で始まった社内プロジェクトであった「スーパーマイクロ事業部」も、気が付けば、5000名を超える大所帯となっていた。

そして、先ごろ顧客情報漏えいで話題になったPS(プレイステーション「)シリーズの開発にはNews、VAIOが開発マシンとして使われたのはいうまでもないことである。

こうしてみると、一人の若者の夢「自分達が使いたくなるような、マシンを開発せよ。」と命じた土井の「先見の明」を感ぜざるを得ない。

そして、優れたシステムほど、こうしたごく少数の人間の手によって作り出されていことに、貴方は気が付いただろうか。

街中で、PSPで遊ぶ若者を見るたび、私は土井さんやT君のことを思わずにはおれない。

以前、Stanford 大学の生協で手にした1冊の本がある。タイトルは「Mt.XINU」、著者(Tanenbaum)という本である。中を見ると、Unixのシステムのソースコードが延々と記録されていた。何のことはない。手作りコンピュータを目指すひとのための本である。当時はまだLinuxなどない時代で、Unixの勉強には格好の本であった。

以前、アスキー・ラーニングシステムから「C言語入門」「実践C言語」「応用C言語」の3部作を出されていた三田典弘さんから、タネンバウムの本のことは伺っていたので、思わず買ってしまった。

本のいわれは、よく「Unix TM」の文字を目にするけれど、逆から読むとどうなりますか?

それが本のタイトルの種明かしです。

ではまた。

 

 

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