小島教育研究所

教育関連ブログです。数学を筆頭に学問全般に渡る有用な情報を提供致します。
東海生、名高生、半高生に最も読まれています。

「国公立大医学部の合格者が多い学校」トップ200

2022-01-15 | 大学受験

 近年、減少傾向にあった国公立大医学部(医学科)の志願者数は、2021年入試で下げ止まった。コロナ禍で過酷な状況に置かれた医師を目の当たりにしていることから、当初は志願者が減少すると見られていた。しかし、不透明な経済状況が続く中、安定した職業である医師を選択する受験生が増加。さらに「人の役に立ちたい」と考える医学部志望の受験生にとっては、コロナ禍がやりがいを再認識する機会になったようだ。

 では、人気が上向きの国公立大医学部に強い学校はどこなのか。数年にわたって安定的に高い医学部合格実績を残している学校を見るため、5年間合計の合格者数でランキングした。

■地方や近畿・中部の学校が上位に

 医学部合格者数のランキングは、東京大学や京都大学の医学部(理Ⅲ)を除く理系学部と同レベルの大学が多い最難関の入試ながら、東京大や京都大の合格者ランキングと異なる点が特徴だ。

 2021年入試で東京大合格者数ランキングトップの開成は、当ランキングでは8位、同じく京都大ランキングトップの北野は42位となっている。ランキングの上位には、医学部を持つ大学が多い近畿や中部に所在する学校に加え、ラ・サール(4位)や久留米大学附設(5位)、愛光(6位)など、優秀な生徒の受け皿となる企業や仕事が少ない地方の学校が多い。

 もう一つの特徴は、私立の中高一貫校が上位を占めていること。医学部を除く難関国立大は、大学入学共通テストの多少の失敗を、2次試験で挽回することができる。しかし、医学部は、共通テストと2次試験両方で高得点が求められるため、隙のない学力が求められる。その学力養成のために6年間一貫教育が優位なことをランキングが示している。

 ランキングのトップは、14年連続で単年度の国公立大医学部合格者ランキングで1位を続ける東海。5年間合計では2位の灘を156人上回る556人の合格者を輩出している。医学部進学に特化した教育を行っていないが、高い合格実績に期待する優秀な医学部志望者が数多く入学することが合格実績につながっている。


 2021年に合格者が最も多かったのは名古屋大学で、同大の合格者数ランキングトップとなる30人が合格。その他、名古屋市立大学12人、岐阜大学12人など、中部地区の大学を中心に合格者を輩出している。

 ただ、近年、合格者数が減少傾向にあり、2017年と比較すると28人の減となっている。この間、旧七帝大(北海道大学、東北大学、東京大、名古屋大、京都大、大阪大学、九州大学)に東京工業大学、一橋大学、神戸大学を加えた難関国立10大学(医学部を含む)は8人増に留まっており、難関大の医学部以外の学部にシフトしたわけでもなさそうだ。

 愛知県内の他校の合格実績を2017年と比較すると、南山(18位)が6人増、旭丘(20位)が18人増、滝(25位)が5人増となっている。東海の医学部合格者が減少する要因として、近隣の学校に医学部志望の優秀な生徒が分散している可能性がありそうだ。

 2位の灘も2017年と比較すると33人減。この間、医学部を含む東京大と京都大の合計の合格者数は変わらず、医学部から他学部にシフトした影響も考えにくい。2021年の合格状況を見ると、トップが定位置だった東京大・理Ⅲの合格者は12人で、14人の筑波大学附属駒場(50位)にトップの座を譲った。

 それでも、2021年の医学部合格者50人中、東京大と京都大を合わせて26人と半数以上を占める、超トップ校であることに変わりはない。合格者の落ち込みが大きいのは2020年から2021年にかけて。合格者の減少が2021年だけの現象なのか、それとも今後も続くのか注目したい。

■女子校の台頭目立つ

 3位の洛南と4位のラ・サールは安定的に合格者を輩出している。一方、久留米大学附設は増加傾向にあり、2017年から12人増となっている。2021年の大学別の合格実績を見ると、九州大学が26人で次位のラ・サール(12人)に倍以上の差をつけてトップ、長崎大学(14人)、佐賀大学(9人)、山口大学(8人)など、九州と中国地方の大学を中心に多くの合格者を輩出している。


 合格者が増えた一因は、2013年に中学を男子校から共学化し、医学部志向が強い優秀な女子が入学してきたこと。2021年の合格者数ランキングはトップの東海と3人差の2位で、1位をうかがう状況となっている。

 高いステータスがあり、経済状況に就職環境が左右されにくい。さらに女性が生涯働き続けることが容易なことから、医師は優秀な女子受験生に人気が高い職業。女子校の状況を見ると、桜蔭(15位)が17年より13人増、豊島岡女子学園(24位)が同じく10人増と合格者を増やしている。ちなみに、両校とも、同時期に難関国立10大学(医学部を含む)の合格者数も増加。進学校としての実力を伸ばしている。

 2017年との比較で合格者の伸びが最も大きいのは、13位の西大和学園で30人増。同時期に東京大と京都大の合計数も64人増えている。特に東京大の伸びが著しく、2021年の合格者数は76人で63人の京都大を逆転している。近年、東京大や京都大、国公立大医学部に進学する生徒の増加が顕著なため、その背中を見ている在校生が「自分もできる」とモチベーションが上がり、難関大合格者が増加する好循環にあるという。

 中高一貫校が優位な中で健闘している公立校は11位の熊本で、2017年比14人増となっている。同時期に合格者が増えている、12位の札幌南(5人増)、18位の仙台第二(8人増)、前出の旭丘、21位の新潟(4人増)なども含め、上位の公立校は、地元大学の医学部に多くの合格者を輩出し、総合格者数を伸ばしている。中高一貫校に比べると不利な就学期間の短さを、伝統に裏付けられた医学部入試のノウハウと医師志望の生徒の多さがカバーしている点が、合格実績が高い公立校の共通項だ。

 合格者の増減はあるが、表中のいずれの学校も最難関の国公立大医学部にコンスタントに合格者を輩出する進学校だ。「国公立大医学部合格者数 ランキングTOP200校」で、それぞれの学校の実力を確認してほしい。

東洋経済Onlineより


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国立大学の「情報」必須化で2025年度入試は現役生のみの入試になる?

2022-01-15 | 情報Ⅰ
 昨年12月、大学入試センターは、2025(令和7)年度入試の課題とされていた「情報」の出題方法に加え、「情報」を得点調整の対象科目とすることを公表しました。報道によると、これを受けて国立大学協会は、一般選抜の受験者全員に「情報」の受験を義務づけ、基本となる受験パターンを6教科8科目とする方針を固めたとされています。高校の進学指導上での悩みの種がまた1つ増えたことになりますが、本当に悩ましいのは現在の高校1年生です。仮に既卒生として2025年度入試で難関国立大学受験に再チャレンジする場合、現役時とは異なり「情報」の受験が必須となってしまうからです。

ポイントは旧課程問題の出題と新旧科目間での得点調整


昨年、12月17日に大学入試センターが公表した「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストに関する『「情報」の出題方法』及び『得点調整の対象教科・科目』について」のポイントは次の2点となります。

1つは、新課程科目「情報Ⅰ」とは別に、現行課程で学んだ受験生に対応した「旧情報」科目も出題することです。2022年度4月から新高2生(現高1生)以上となる学年の生徒にとっては現行課程の「情報」科目なのですが、ここでは2025年度入試における対応をテーマとしていること、2022年4月から高校に入学する新高1生を対象とした新課程科目に対しては旧課程科目となることから「旧情報」と記すことにします。
この「旧情報」には「社会と情報」という科目と「情報の科学」という科目があり、どちらを履修するかは高校によって異なりますが、約8割の高校が「社会と情報」を履修しています。そこで大学入学共通テストの出題にあたっては、どちらの科目を履修していても受験生に不利益が生じたいよう、両科目の共通部分に対応した必答問題とそれぞれの科目に対応した選択問題を出題することとしています<図>。さらにこの「旧情報」の試作問題を作成・公表して、さらに配点も公表するという念の入れようです。

もう1つのポイントは、新課程生対象の「情報Ⅰ」と旧課程生対象の「旧情報」の両科目間で平均点に一定の差が生じた場合には、得点調整を行うとしたことです。新旧科目間で平均点差が大きく開いた場合、不公平感が生じて混乱する可能性もありますので妥当な措置と言えます。実は、1997年に行われた大学入試センター試験では、旧課程生対象の「数学Ⅱ」と新課程生対象の「数学Ⅱ・B」で20点以上の平均点差が開いてしまい、受験界は大混乱しました。通常は既卒生の平均点が現役生を上回るのが常ですが、この時は既卒生の平均点の方が20点以上低いという従来にはない結果でした。問題の難易度に明らかな差があったのですが、この時は得点調整が行われませんでした。既卒生でも新課程科目を選択することができたのですが、多くの既卒生は旧課程科目を受験しており、救済もされず、悲劇としか言いようのない状況でした。今回はこの点については改善されています。

国立大学の一般選抜は「情報」必須で6教科8科目がスタンダードに


大学入試センターの発表により、課題となっていた旧課程生への対応が決まったことで、国立大学協会が、国立大学の一般選抜では原則として「情報」を必受験科目とし、6教科8科目を基本パターンとすることを決めたと報道されました。正式な決定は1月末の国立大学協会総会でなされるとされています。もちろん国立大学協会も「情報」科目への取り組みは高校間で差が大きいことも理解していますが、それは国立大学協会が対応する問題ではなく、文部科学省や各教育委員会が対応すべき問題だとして、今回の決定に至ったようです。

確かにそれは正論ですが、高校で進学指導を行う現場では、悩みの種がまた1つ増えたと言うのが実感だと思います。多くの高校では「情報Ⅰ」は、高校1年生で履修するのが一般的です。英語、国語、数学などのように学年が進行しても、学習内容に関連がある場合は、高校1年生の時に履修した科目であっても、知識や思考はつながっています。ただ、「情報Ⅰ」の場合はそうではありません。履修してから、しばらくのブランクを置いて、高校3年生になってもう一度、試験のための勉強を始めるのは新たな負担と言わざるを得ません。

これが旧課程生となれば、現役生よりもさらに1年以上のブランクが開いているため、さらにその負担は重くなります。仮に各大学が「旧情報」の配点を低く抑えたとしても、必受験科目としての重みがなくなる訳ではありません。

「情報」必受験を嫌い、2025年度入試を受験する既卒生は減少する?

かつて新課程入試は旧課程で学習した受験生には有利になるとされた時期もありました。学習指導要領が改訂される度に学習する内容が減っていたためです。これは学習内容の削減ではなく、“精選”と言われていました。しかし、2000年代初頭の「学力低下論争」以降は、必ずしも旧課程生が有利だとは言えない状況になってきています。

また、受験生の立場で考えても、自身が高校時代に学習した科目とは異なる科目の受験対策をしなければならないことや、同じ科目名でも内容が変わっているケースもあり、それだけでも大きな負担です。今回は、さらに「旧情報」必受験が加わりますので、2025年度入試に再チャレンジするのを嫌って、現役(2024年度入試)の時に志望を下げてでも大学に入ってしまおうと考える生徒が多くなることも予想されます。

ただ、全ての受験生が国立大学を志望する訳ではありません。難関私大を目指して再チャレンジする受験生もいます。しかし、大学入学共通テストを必受験とする入試方式をメインとする難関私立大学は増えています。そのため、今後の難関私立大学の「旧情報」への対応が注目されるところです。

それに加えて、予定では2022年の秋冬頃とされている「情報」科目の試作問題の公表は注目度大です。「旧情報」も試作問題が公表される予定ですので、プログラミングを扱わない「社会と情報」の選択問題の内容によっては、既卒生が有利となる可能性もあります。得点調整が実施される予定になっていますが、平均点差が20点以上にならず10数点の差に収まり、得点調整が行われなければ既卒生は、そこでのアドバンテージを保ったまま2次試験に臨むことが可能です。逆に試作問題が新課程「情報Ⅰ」寄りの出題内容だった場合、2025年度入試では既卒生が本当にいなくなってしまうかも知れません。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする