これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

ファーウェイの問題 (その9)

2019-03-23 12:00:36 | 中国
 今回は中国の高等教育についてです。 経済的に豊かになった中国が、どのような高等教育機関を整備していくのか? 「きっと欧米諸国とは一味違った独特の素晴らしいものにしていくのでは?」と期待してきました。今の所は期待外れです。

【中国からの国費留学】
 中国は、鄧小平が改革開放政策を始めた頃から、人材の育成に巨額の国費を投入して来ました。松下幸之助は、人材は”人財”であると言われたそうです。国や企業を発展させるには、”人財”が不可欠なのです。人数を揃えてもだめです。

 アメリカへの国費留学は、まだまだ貧しかった1978年から始まりました。 ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)に一人留学させると2,000万円/年、修士までだと”12,000万円/一人”も掛かります。

 留学を終えて帰国した人を、”海帰族”と呼びます。2005年までの”海帰族”は23万人にも達した様です。当時は、中国経済はどんどん発展していましたから、海帰族は”引っ張りだこ”だった様です。

(余談 1) 1970年頃に私は大学4年になりました。ゼミの研究室では、(学習机の様な)本箱付きの机が各自に与えられました。私の隣の机は中国の留学生でしたが、2年前にアメリカの大学に短期留学するといって渡米したまま帰って来ていませんでした。優秀な学生だと指導教官は言っていましたので、会って見たかったのですが! この頃から、中国は国費留学制度を始めていたのでは?と思います。

(余談 2) 中国の成長はアメリカにとって”困った問題”ですが、中国の成長を支えている”人財”を教育したのは、皮肉にもアメリカです。現在でも、中国から留学生を多数受け入れて教育しています。

 国費留学生の数は減少して来ましたが、中国で金持ちが増加する様になって、私費留学生が大幅に増加しています。2017年に出国した、国費留学生は3万人程ですが、私費留学生は54万人にも及びました。 (中国への留学生も増加しており、2017に入国した留学生は48万人もいた様です。)

【日本からの海外留学】
 明治時代、日本は外貨が不足していましたが、政府は国費で優秀な人材を海外に留学させました。帰国後、彼らは種々の分野で活躍したので、国が豊かになっていったのです。森鷗外は1984年~88年にドイツへ、夏目漱石は1900年~02年までイギリスに留学しました。

 独立行政法人日本学生支援機構と言う天下り組織がありますが、日本が受け入れている留学生の数は2017年に約27万人と公表していましたが、日本からの留学生は余りにも少ないためか、1か月未満の留学を含めたりして実態が良く分からない数字を公表しています。

 2013年に、大学生の海外留学を2020年に倍の6万人にする方針がでましたが、達成出来るのでしょうか?優秀な学生を国費留学させる事は非常に重要だと思うのですが、そんな重要な仕事を”天下り組織”に任せて良いと思われますか?

(余談) 私の勤めていた会社には、優秀な理科系の社員をMITの修士課程に2年間留学させる制度が有りました。帰国しなかったり、他社に転職するケースが増えて、修士号を取得したあと数年以内に退職した場合は、留学費4,000万円を会社に返済させる規定を設けました。当時、会社の経営はどんどん苦しくなって来て、毎年給料が下がっていました。私の席の隣に、二十歳代の極めて優秀な社員がいて、上司からMITへの留学を勧められていましたが、断り続けていました。彼は、「今から留学したら三十歳過ぎまで、この会社に縛られるのは嫌だ!」と言っていました。 金で縛り付けるのでは無く、修士号を取った若者が、帰りたくなる様な会社にする努力が必要だったのです。

【中国の大学進学率】
 1949年の建国後、40年ほどたった1989年の天安門事件の頃の大学進学率は3%程度だった様ですが、その後、徐々に高くなり2002年には15.0%、2016年には42.7%(学生数は 3,700万人)にもなっています。

 一人っ子政策を始めたのは1979年です。その年に生まれた子供は、1997年頃に大学に進学した事になります。その後は、子供一人に親二人と祖父母4人もいるわけですから、大学進学率がドンドン高くなたのでは?と私は見ています。

 大学と専科大学への入学者数は、1998年=108万人、99年=155万人、2000年=221万人、01年=268万人、・・・05年=504万人と急激に増加しました。学生数の増加と同時に、大学や専科大学の数も急激に増やしましたが、教官の確保が追っつかなかったようです。

(余談) 「大学進学率が高くなるのは良いことだ」と言う方がおられますが、私は賛同しません。某中小企業に出向していた時、入社して15年以上の設計担当の社員がいました。指示された通りに図面は書けるのですが、自分で考えて工夫する能力は全く有りませんでした。顧客との打合せを任せて見ましたが、ダメでした。彼の履歴書には工業高校出身となっていましたが、○○大学を卒業している事がバレテしまいました。別の企業に出向した時、○○大学卒業の社員がいましたが、その社員もダメでした。多分、今でも○○大学に国は助成金を出していると思います。

【中国の大学】
 中国の有名な、北京大学、清華大学、南開大学は清朝の時代に設立されました。清朝~中華民国時代に設立された大学は全て国公立大学になり、共産中国になってからは国公立大学しか認めませんでした。

 私立大学が認められる様になったのは1980年です。私立大学は、個人、団体、企業からの金で運営されており、国や地方政府からの助成金は受け取っていません。私立大学に”独立学院”と呼ばれるのがあります。一流の公立大学(○○大学)から学校の運営ノーハウをもらう私立大学です。名前が○○大学△△学院となりますが、○○大学とはキャンパスも異なり、教育内容も違います。(”学院”は学部としても使用されます。○○大学外国語学院とは○○大学の外国語学部のことです。)

 日本の大学は文部省が所管していますが、中国では中央政府と地方政府(省など)が所管し、私立は全て地方政府の所管になっています。

 日本のセンター試験(2020年度からは大学入学共通テスト)の様な、大学受験の”足切り”の試験(普通高等学校招生全国統一考試)が中国にもあります。各省にある大学を、レベルの高い順に一本大学~三本大学に分けて、”足切り”点数を決めているのです。

★ 一本大学(第一批次本科) :難関大学
★ 二本大学(第二批次本科) :
★ 三本大学(第三批次本科) :
★ 専科大学 : 日本の短期大学に相当します。3年制

 大学の数はどんどん増えています。2012年に2,442校(内私立706)、2015年には2,879校(内私立735校)にもなっています。 (短期大学を除いた)2018年の日本の大学は768校(内私立589校)です。

(余談) 中国では偽物が横行している様ですが、認可を受けていない、実態が無い等々の”偽大学”が毎年、学生を募集しています。インターネット上に実名をあげて、注意を喚起している様です。

【中国の大学の学費】
 改革開放(1978年)の前は大学の学費は”ただ”でしたが、1985年には200元ほどになり、2017年には6,000元(≒10万円)以上の大学がある様です。(中国の平均給与は5,000元ほどです。)

 自宅から大学に通えない学生は、寮費や生活費が必要になりますが、一か月に1,400元ほど必要な様です。所得の少ない地方(農村戸籍)の子供は、大学に進学するのが難しくなって来ている様です。

(余談 :授業料) 私の大学4年間、国立大学の授業料は12,000円/年でした。(公立高校の授業料より安かったのです。)自宅から通学できる場合は、貧しい家庭の子供でも国立大学には進学出来ました。現在、国立大学の授業料は高いですね!私の様な貧乏学生だったら、今は進学出来なくなっています。

(余談 :生活費) 私は1967年に入学しましたが、(格安を探して)2食付四畳半の下宿代が10,000円でした。夏休みが終わった頃、下宿の小母さんが「11,000円にする」と言ったので、「12,000円払うから、卒業するまで値上げしないで」と言うと、了解してくれました。卒業時には15,000円ほどになっていました。

【御参考 :中国の初等/中等教育】
 改革開放を始めた頃から、初等/中等教育にも力を入れてきました。義務教育の無償化も進んでいます。

★ 幼稚園 :3年 共働き家庭が多いために入園率は75%以上
★ 小学校 :6年 義務教育 入学年齢は6-7歳
★ 初級中学 :3年 義務教育
★ 高級中学 :3年 日本の高等学校に相当


最新の画像もっと見る

コメントを投稿