これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

ファーウェイの問題 (その9)

2019-03-16 12:37:08 | 中国
 今回は中国の民間企業についてです。2015年に”中国製造2025"を打ち出しました。既に、”世界の工場”と呼ばれているのに、25年までに”世界の製造強国”になり、45年には”製造トップの国”になると言う目標を立てたのです。ノンビリ寝ている場合では有りません!

【中国の企業】
 日本では、”民間企業”と”民営企業”は全く違う意味で用いますが、中国では国の資本が入っていない企業を”民営企業”と呼んでいます。(民間人が立ち上げた企業でも、「今は君に経営を任せるけど、君の企業は国家のものだ」と言っている様に思えます。) なお、本稿では、日本の習慣に従って”民間企業”を用いる事にします。

 ”公司”は”会社”のことで、”○○股份有限公司"とは、日本の”○○株式会社”の事です。”××有限責任公司”は”××有限会社”に相当します。 (ちなみに、日本では、新たに有限会社を設立することは出来なく無くなっています。) (無限公司=合名会社、両合公司=合資会社)

 日本では、現在、資本金1円で株式会社を設立出来ますが、中国では股份有限公司は1,000万元(≒1.7億円)以上の資本金が必要です。そのため、中小規模の民間会社は有限責任公司になっているのです。

 ”△△公司”は国有企業の様ですが、国有企業でも株式を発行していると、”○○股份有限公司"となり、国有企業か?、民間企業か?、判断するのは難しいです。

 国有企業の分類に”国有独資公司”となっているのは、純粋な国有企業で、株主総会の様な物が存在しない企業です。

【中国の企業の種類】
 中国の企業の形態を以下に整理して置きます。外国からの投資、外国企業との合弁会社などに対する規制は、徐々に緩和されてきており、現在、中国には種々の形態の企業が存在しています。

① 個人企業 :従業員7人以下の自営業
② 個人独資企業 :従業員8人以上の自営業
③ 民間企業 :中国では”民営企業”と呼んでいます。
④ 民間/外資企業 :外資は50%以下
⑤ 独資企業 :外資が100%
⑥ 国有企業が株の一部を保有する民間企業
⑦ 国有企業と外資の合弁企業
⑧ 国有企業

 1986年から、先端技術が必要な分野に限り、外資が100%の企業(独資企業)が認められる様になり、その後規制が緩和されて、独資企業は増加しています。

 ①と②の個人企業は国に届けが必要で、中国人しか設立出来ません。外国人が投資する事も許されていません。

 外国の企業の支店は、金融機関だけが認められています。営業活動を行わない駐在員事務所は認められています。

(余談) 共産中国の建国以前から個人企業は多数存在していたと思われますが、「1949年の建国後にどの様になったのか?」私は非常に興味が有り調べていますが、未だによくわかりません。 規模がある程度以上の民間企業は、半国有企業にして、その後完全な国有企業にしました。多分、小規模な(①や②に相当する)個人企業はそのまま存続させた?と私は思っています。

(余談) 股東大会=株主総会、董事会(とうじかい)=取締役会、監事会=監査役会、董事長=会長、総経理=社長、 監事会(監査役会)には株主代表と従業員代表が参加します。

【中国の民間企業の成長】
 1978年まで、中国には民間企業は存在しなかったのです。”雨後の筍”では表せないスピードで数が増え、2011年には民間企業は900万社、自営業は3,600万軒にも達しました。

 民間企業は数が多いだけでなく、成長しています。 2016年の中国国家統計局のデータを以下に示しますが、僅か40年弱で国有企業と同じくらい重要な存在になっています。

★ 民間企業 :企業数=75.8%、売上=45.6%、雇用=46.7、純資産=31.4%
★ 外資企業 :企業数=17.5%、売上=27.8%、雇用=30.0、純資産=26.0%
★ 国有企業 :企業数=6.7%、売上=26.6%、雇用=23.3%、純資産=42.6%

 同業他社が多いいため、中国の経営者は”戦国大名”の様に生き残る術を、真剣に毎日考えている様に思われます。 中国の企業の経営戦略の決定スピード、成長スピード、開発/モデルチェンジのスピードに注目する必要があります。 安く作るのも重要な技術です、物作りの点では中国は世界最高のレベルに達したと考えた方が良いと思います。(決して、後進国では有りません。)

 白物家電などの家庭電気製品の分野では、すでに世界的な規模に成長した会社が数社有ります。各社、既に海外で販売しています。 サムスンでさえ、近い将来中国市場から撤退せざるを得なくなると、私は見ています。 美的集団、ハイアール、格力集団、TCL、長虹集団等々 (長虹は国有の軍需工場でした。)

【巨大マーケットの典型例=自動車産業】
 国を発展させるためには、自動車産業の育成が不可欠です。 然し、自動車の技術レベルは低く、資本が有りませんでした。中国は乗用車に25%、トラックに20%の関税を掛け、完成車の輸入を抑え、外国の自動車メーカに合弁企業を設立させて、国内で生産させる事にしました。

 現在、中国には自動車メーカが1,000社程有る様です。以下に、外国のメーカと合弁で乗用車を製造する企業を整理して置きます。

① 第一汽車 :国有企業;トヨタ、ダイハツ、マツダ、フォルクスワーゲン(VW)
② 上海汽車 :国有企業;ボルボ、GM、VW
③ 東風汽車 ::国有企業;日産、ホンダ、起亜、プジョー、シトロエン
④ 長安汽車 :民間企業;スズキ、三菱、フォード
⑤ 奇瑞汽車 :民間企業 (大手です)
⑥ 北京汽車製造廠:民間企業;現代、メルセデス
⑦ 広州汽車:国有企業;ホンダ、トヨタ、三菱、日野、フィアット
⑧ 浙江吉利控股集団:ベンツ
⑨ 華晨汽車:民間企業;トヨタ、三菱ふそう
⑩ 東南汽車:三菱
⑪ 華泰汽車:現代

 2018年の中国の自動車生産台数は2,780万台、販売台数は2,810万台で、巨大なマーケットになっています。ちなみに、アメリカの販売台数は1,730万台で、日本は527万台です。中国の人口は多いですから、5,000万台になっても不思議ではありません。

 トランプの要求により、習近平は自動車産業などの分野で外資参入規制緩和(現在は出資比率の上限=50:50)を撤廃すると宣言しました。 中国の自動車メーカが力を付けてきており、規制を緩和しても影響が少ないと判断したのだと思われます。

【民間企業の国有化】
 近年、国有企業が民間企業を買収したという報道が時々有ります。2002年頃から始まり、特に2018年から多くなっている様に思えます。(国進民退)

 中国には民間の報道機関は殆ど無く、共産党に都合の悪い報道は出来ませんから、個々の国有化の理由は外からでは類推する以外には有りません。日本では、かなり憶測を交えて国有化が報じられています。 例えば、アリババ集団の会長、馬雲(ジャック・マー)が「2019年9月に引退する」と公表したのは、「共産党がアリババ集団をコントロールしやすくするためだ」等々。

 2018年から国有銀行が民間企業に対し”貸し渋り”や”貸し剥がし”に出ている様です。 民間企業は、『ファーウェイ(7)』で述べました”P2P”から20%もの高利で資金を調達するか、銀行に、その企業の株式を買い取って貰う様になっています。銀行は、取得した株式を国有企業に売却しているため、民間企業が国有企業の傘下に入る事になります。

 「民間企業の国有化が進めば、効率が低下して中国経済は減速する」と予想するコメンテーターがおられますが、中国政府はデメリットを織り込み済みで、この政策を始めたと私は考えています。

 『外国の企業と競争出来る国有企業が多数成長してきたし、”富国強兵”もかなり達成出来たし、経済が多少減速しても共産党がコントロール出来る企業を増やす方が都合が良い。減速し過ぎたら手綱を緩めたら良い』と考えているのでは?

【民間/外資企業の運命】
 中国で殆ど製造されていない製品の分野で、海外のA社が中国のB社と合弁会社(C社)を設立したとします。 A社は技術移転を要求されていますから、当然、技術情報は漏れてしまいます。A社の種々の情報を集め、A社の社員を引き抜いて、純粋な中国の会社(D社)が設立され、同様の製品を製造し始めます。 マーケットがドンドン大きくなって、D社が成長して来ました。 中国政府がD社に膨大な助成金を投入して、D社の設備を増強し、安価な製品を販売させると、合弁会社C社は赤字に転落します。 A社は,中国から撤退せざるを得なくなります。

 合弁会社C社の工場は、国から借りた土地に立っています。 A社が中国に持っている資産はD社の株式だけです。 A社はB社に、安い値段で株を売って撤退せざるを得ません。 C社とD社がそのまま存続すれば、雇用を失うことが有りません。 これが、鄧小平が考えた”解放”のストーリーなのだと思います。

【ハイテク企業の優遇】
 1995年頃に、安川電機さんのロボット工場を見学させて貰った事があります。ロボットがロボットを組み立てるラインが有り、ラインが始まる所では組み立てられているロボットはわかりますが、ラインが進むに連れどちらが組み立てられているのか判別出来なくなるのです。最後にロボットがロボットを検査していました。このラインは無人で、SF映画を見ている様でした。

 私達は、第四次産業革命の真っただ中に生きているのです。明治維新の頃は、第一次産業革命が終わる頃で、明治になって、(直ぐに、)第二次産業革命が始まりました。1980年頃から、パソコンに代表される第三次産業革命が始まったのです。その後、急激に種々の分野で先端技術が開発され商品化される様になり、いつの間にか第四次産業革命の時代になりました。

 第三次産業革命が始まった頃に、中国は改革開放政策(1978年~)を始めました。その後の中国の経済発展は、携帯電話の普及が象徴しています。日本でポケットに入るくらいの携帯電話が出たのが1990年です。中国では、固定電話が各家庭に普及する前に携帯電話の時代になったのです。そして、2018年のスマートフォンは、世界の1/3を中国で製造される様になっています。

 明治維新を進めた人達と、改革開放を進めた中国の政治家は、同じ様な”気概”を持っていたのだと思います。明治5年(1872年)にお金が無いのに、富岡製糸場を設立しました。”ケチな”工場では無く、当時としては世界一の製糸工場を建設したのです。

 中国の企業に対する税率は25%ですが、ハイテク産業分野の企業には軽減税率(15%)が適用されています。資金調達の優遇、人材の投入、更には国家の機関が外国で合法/非合法に入手した情報を与える等々して、ハイテク産業を育成して来ました。その典型がファーウェイです。

【ファーウェイ】
 ファーウェイは1987年に商社としてスタートしました。 2010年からスマートフォンの製造を開始し、中国政府の強力なバックアップを得て急激に規模を拡大してきました。 2018年、スマートフォンの分野ではサムソンに次ぐ世界第2位の会社のなりました。

 ファーウェイのスマートフォンには、「中国が情報を引き出せるプログラムが入っているのでは?」と言うのが、アメリカの主張です。然し、AppleやGoogleで通信したらアメリカの情報機関に筒抜けだと、昔から言われています。

 第5世代移動通信システム(5G)の分野からファーウェイを排除したい理由は、第四次産業革命の主導権を中国に渡したく無いためだと私は思います。中国がアメリカから穀物等を多量に輸入して、一時的にアメリカの貿易赤字を減らしても、問題は解決しないでしょう。アメリカは研究/開発費を大幅に増やして、ハイテク産業分野の企業を資金的に支援しない限り、中国には勝てません。

 日本の政府は、第四次産業革命が進行中だと言う認識が無いように思います。研究/開発費を削減し、レベルの低い大学にも補助金を出し続けています。予算委員会のTV中継を見ていると、森友/加計/データ改竄問題やUSBについての質問をする野党にはうんざりします。第四次産業革命で、中国と「どう戦うか?」、「こう戦うべきだ!」と言った議論をして頂きたい。国会議員は、ハイテク技術について勉強する必要があります。


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