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あるいて・みつける

歩く速さで見つけたものを、記録に残していきます。ゆっくりと歩けば、いろいろなものが見えてきます。

単焦点レンズ礼賛

2013-03-28 19:35:08 | 温故知新
土曜日に、いつもの通り撮影行に出かけていた時の事です。道行く人にも昔ながらのM42レンズは、ちょっと違った風に見えるようです。装着していたレンズはSMCタクマー135mmF2.5で、近接撮影をしていましたので鏡胴は長く伸びた状態です。昔ながらの全群繰り出し式の望遠レンズは、近接撮影時に鏡胴が長く伸びます。

加えて、F2.5の大口径レンズですから、全体ぼってりの感じでいかにも70-300mmズームと同じような勇ましさがあります。しかし、単焦点レンズなのですね。思わす聞かれた事は、かなり長焦点のズームレンズですね。最長何mmなのですか。

いや、135mmです。と答えると、最短135mmで最長は300mm位ですか。と云う質問。確かに長く伸びる鏡胴と結構幅広のピントリング。ズームレンズとしての説得力は十二分にありますね。今のズームレンズのピントリングは判らないほどに細くなって、先端にちょこんと付いているだけか、ある意味オートフォーカス専用で付いていないものもあったように思います。

今のズームレンズは、昔のマニュアルフォーカス・レンズの大きなピントリングが、そっくりそのままズーム・リングになっていますから、無理からぬところです。実は単焦点レンズで、今から40年ほど前のレンズなのですよ。と話すと、ようやく納得していただけました。

結構重たくて、オートフォーカスも無くて、面白く無いところだらけのレンズですが、ズームレンズと違って、歪曲収差も結構補正されていますし、何よりも違うのは描写の主張です。色々な種類のレンズがありますが、各々すべて画像の硬さや解像感、コントラストや色味の違いを特徴として持っています。ほんの少ししか違わないのですが、この違いで得意とする被写体が違ってきます。

このため、季節や咲いている花、茂っている葉や幹の色、そして川の流れや水の澄みかたによって候補となるレンズが数本出て来ます。後は、その時の状況を鑑みてベストと思われる1本を装着して撮影行に出かけます。

2本くらいあって判断に迷う時には、2回同じ所に行って撮影する事もあります。それ程の事をしてまで、撮影するような楽しさが単焦点レンズにはあります。レンズの描写と被写体の状況がベストマッチした時は、思わずため息が出る程の良い結果を得る事が出来ますので、ますますはまり込んでいくと云う訳です。

カメラで撮影を始めて、しばらくするとカメラ自身の機能にも飽きてきて、自分自身の写真を求めるようになるから、そうしたら自分にベストマッチするレンズを探すと良いよ。色々借りたり、作例を良く見たりして自分の主張にあったレンズを見つけて行き、たどりついたレンズで日常を写すと、その結果には自分の魂が乗り移るから。先達の人からもこの様にアドバイスを受けました。

レンズ探しをしていて、ズームレンズはあまり面白くはないのですね。焦点距離ごとに描写がコロコロと変わるので、昔上手くいった設定にしてみようと思っても、なかなか当てはまってくれません。加えてレンズ枚数が多いのがズームレンズの泣き所。シンプル構成の単焦点レンズが、今もなおズームレンズより性能が良いといわれるのが、この所です。

少ない予算でばっちり性能が出ます。取り替える手間暇がうんとかかりますが、ズームレンズの開放F値まで絞り込むと、解像感や質感が高くなって、高いレンズで撮影したかのような効果を得る事が出来ます。加えて絞り開放からの解像感が高いのも、単焦点レンズの魅力と言えます。

単焦点レンズ礼賛。これからもこのスタイルは続いて行くと思います。

それでは、土曜日に撮影した写真から掲載します。


PENTAX K-5 SMC Takumar 135mmF2.5
撮影データ:1/125sec F4 ISO400
ひっそりと咲きだすひさかきの花。葉っぱの裏側に咲いていますので先ず分かりません。下から見ると咲いているのが分かります。F4まで絞っても背景ボケが硬くならないSMCタクマー135mmF2.5はお気に入りのレンズです。
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レンズと解像感

2013-02-05 19:55:19 | 温故知新
レンズを比べる時に、解像感は結構重要な位置を占めていたりします。レンズの解像度が高ければ、しっかりと細部まで描写された画像が手に入りますし、空気感や質感などの雰囲気も良く表現できるようになります。

コントラストは、解像感を高く見せる時に有効な手段ですが、諧調感の喪失につながりますので、あまり高いと、後から見たままの諧調に戻す時に、結構骨が折れます。諧調感を広くしながら、解像感を上げていくのは至難の業ではないかと思います。

それを知ることになったのは、ズームレンズの使用感に慣れきっていて、ふとペンタックスSPと標準レンズを持ち出して、撮影した時にあったと思います。ペンタックスSPとスーパータクマー、両者とも今から軽く30年前以上の古兵です。とっさに感じた印象は、ズームより、はるかに良いじゃん、でした。

レンズは、その構成枚数が少ない程、印象的な写真が撮れるよ。レンズのガラス1枚を光が通る毎に、あなたが見ている光の印象的な部分が、少しずつ削がれていく訳だから。と、先達の方々からも聞いていました。現代のレンズにあっても、その事は切実な問題なのであろうと思います。そのため、分散の違ったレンズやコーティング、はたまた曲面の少し変わったレンズが、ズームレンズには多用されています。

しかし、現代のレンズは、昔のレンズの軽く3倍位の枚数のレンズが使用されています。昔は多くとも5群6枚位で、今の12群15枚位のズームレンズは、結構解像感に不安を覚えてしまいます。ズーム操作を行うための中群レンズが付加されているためなのでしょう。前群はレトロフォーカス、中群は逆エルノスター、後群はテッサー等、昔懐かしいレンズ構成を見る事が出来ます。

どちらかと云うと、昔のレンズを3段繋ぎにした感じですから、面白半分でボール紙を利用し、3種類のレンズをつなぎ合わせて、中群のみを前後に移動させるようにすれば、立派なズームレンズが出来そうな気がします。それだけレンズを使うと、かなり解像感はそがれそうな気がします。

やはり、面倒でも色々な単焦点レンズを手に入れて、取り替え引き換え撮影するのが、解像感良く撮影するための基本と云えそうです。単焦点レンズは、構成枚数の少なさと、レンズ径をゆったりと大きく出来ますので、明るいレンズが多く、ズームレンズの解放絞り値まで絞り込んだ時のピント位置にある被写体の解像感が、決定的に違います。加えて、背景のボケも柔らかく、質感描写と空気感が上手く表現できると考えています。

そう考えていたら、3群3枚構成のトリプレット・レンズで撮影がしたくなってきました。抜けが良くなりますので、撮影するとメリハリのはっきりとした画像が得られます。身近なレンズはドミプランですので、多少近接するとぐるぐるボケが出て来ますが、少し離れて絞り込めば、このレンズでもズームレンズ以上の解像感を手に入れる事が出来ます。

それでは、日曜日に撮影した画像を掲載します。


PENTAX K-5 Super Takumar 135mmF2.5
撮影データ:1/200sec F5.6 ISO100
庭の蝋梅の花です。絞り込んでも、背景ボケの角が立ちにくいのはこのレンズの良い点です。諧調感が出せますので、このレンズも大好きになりました。
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一期一会

2012-09-11 21:36:27 | 温故知新
写真は、良く一期一会と云われます。あなたが目にして、すごいと思って、思わずシャッターを切る。しかし、その写真をもう一回撮影しようと、その場所に、同じ季節に行って撮影したとしても、同じ写真は撮影できません。光線状態も、周りの様子もほぼ一緒なのですが、なぜか同じには撮影できません。

一つは、あなたの心の揺れ動きですよ、と云われた事があります。確かに、一年前と今では、思考の形態や好みがバージョンアップしていますし、何かしら他の作品に感化されて、さて、と思っている自分があります。つまり、昨年と同じ、この前と同じ撮影結果では満足できなくなっている自分があると思います。

そして、植物を相手にしている以上、花のつき方や枝の伸ばし方、色々な状況が変化しています。昨年と同じような影は出来ないし、また、同じような色付き方もない訳です。定点観察だ等と云って、同じところを撮影したりしますが、確かに毎年見え方や色が違います。

もうひとつは、その日の気分です。気分が乗っているときは明るい・コントラストの付いた被写体を、逆に気分が乗らない時には、渋めの色合いを探していたりします。つまり、毎回同じものを撮影しても、撮影する位置や背景が、その日の気分で変化していきます。まさに一期一会です。

習っているピアノも、数年間も続けていると、その日の気分で雰囲気ががらりと変わりますし、練習を始める前の疲れ方によって、音色やテンポがかなり変わります。写真も、構図を決める際に、花や葉、そして背景のリズム感が決定要素になりますので、気分と云う事がかなり重要であろうと思います。

写真の場合は、フィルムやデータで結果がある程度残っています。構図決定の際に、ある程度余裕を持って広く撮影しておくと、後から心変りが起きても、トリミングの位置をある程度変えることで、対応できる訳です。良く文章を書いて、後から何回も推敲して色々な表現に変えていくことと同じように、写真もトリミングして印刷し、鑑賞した後でトリミング位置を変え、文章の推敲と同じように仕上げていきます。

ですので、撮影した写真は数年度の間に何回か見直され、再度印刷されて目標の雰囲気に近づいて行きます。確かに一期一会の結果なのですが、同じ場所に行って再度撮影した結果を基に、トリミングや色合いを変えて、今の自分の好みに変えていく作業は楽しいものです。今では、ディジタルデータにしておくと、現像ソフトを用いて昔の暗室作業と同じように、何度も好みに応じた画像に変化させる事が出来ます。

色々と鑑賞を繰り返すうちに、レンズの個性も判ってきます。この時は、このレンズでチャレンジしてみようか、と思える時がかなり幸せな瞬間であると思います。
これからも、色々と発見しながらチャレンジしようと思っています。


結構、昨年からの写真も見返していますので、その写真から掲載します。


PENTAX K-5 SMC Takumar 120mmF2.8
撮影データ:1/320sec F3.5 ISO400
どうだんつつじも、そろそろ紅葉が始まります。昨年はA4サイズで印刷を行っていましたので、横長になっています。今は正方形サイズにはまっていますが、今後、どの様にサイズが変化していくのか、想像するのも楽しいものです。
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一枚入魂

2012-08-07 21:55:37 | 温故知新
昔はフィルムの時代でしたので、メモリ1個で400枚撮影等と云うことは、考えてもみませんでした。良い時代になったものです。フィルム自体は12枚・24枚・36枚撮りがあって、その週の懐具合でフィルムを選んでいました。当然ながらプリントを含めると、1枚数十円の額になります。100円にほぼ近い額は、相当の出費でした。

そのような訳ですから、専ら白黒フィルムの自家現像となります。これだと、大伸ばしをしない限り、ほぼ1枚50円未満で済む訳です。撮影時には、そのような事を考えていますから、1枚入魂。相当の時間をかけて撮影します。また、ファインダーに写る画像が、ピントリングをゆっくり回すと、徐々に解像感を増していくことに、ある種撮影をしているという達成感を感じていました。

今でも、この癖が取れていないように感じます。マニュアル・フォーカスの昔レンズを使っているせいか、1枚入魂の意気で写さないと、撮影した画像のすべてがピンボケになってしまいます。手抜きの出来ないレンズとお付き合いをすると、この様になります。時間のかかることです。しかし、写された画像は、ずっと見ていても飽きませんし、長い時間、お茶するときのお供になります。

おかげで、2時間位の撮影行でも、100枚くらいしか撮れません。しかし、撮影した画像のピンボケやぶれ等の失敗は、少なくなりました。後は、構図の腕前が上がれば、と思ってはいますが、月4回ほどの撮影行では、なかなか腕前も上がらないというのが現状です。昔レンズは、写真に魂を吹き込んでくれる、大切なアイテムかもしれません。昔レンズとは呼ばず、今後はモダンクラシック・レンズと呼ぼうと思います。

それでは、日曜日に撮影した写真から


PENTAX K-5 SMC Takumar 105mmF2.8
撮影データ:1/125sec F4 ISO800
桜の葉にも少しずつ虫食い穴が出来てきました。緑色の天井は、心癒されるものがあります。
タクマー・レンズは、柔らかな描写で、多少ピントが来ていないふわふわ感がありますが、大好きな描写です。
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レンズと被写界深度

2012-08-03 22:11:46 | 温故知新
単焦点レンズばかり使っていると、一つのこだわりが見えてくるような気がします。それは、被写体の厚みです。この花は厚みを持っているね。とか、しべが長いからどうやって写そう。等等、厚みに関することが多くなります。ズーム・レンズを使っているときには、あまり気にならなかった、と云うか、あまり気にしなくてもそれなりの写真が撮れます。

ズーム・レンズは解放F値が少し大きい、すなわち暗い訳ですが、その分被写界深度がある程度深いので、それなりに撮れるという訳です。しかし、レンズの隅まで使って光を集めるために、諸収差の取り切れなかった部分が現れて、解像度は少し低い状態になります。これが、単焦点レンズと違うところかもしれません。

単焦点レンズは、構成枚数が少なくて、作り易い。なので、昔も今も同じ形態や構成のレンズが多くあります。あまり変わっていないのかもしれません。コーティングが唯一違いますが、ペンタックスでも、タクマー時代から続くSMCコーティングは今でも現役です。そこで、ズーム・レンズと同じF値まで絞ると、俄然解像度が向上して、見ても判る位のはっきりとした画像になる訳です。

そうなると、被写界深度の特性を合わせ込んでしまうことで、被写体が背景から浮かび上がったような、印象的な写真を得ることが出来るようになります。ズーム・レンズでも、深く絞り込むことで、解像感を上げることが出来ますが、逆に被写界深度が深くなりすぎて、コンパクトカメラで撮影したような、ある意味つまらない写真になってしまいます。

難しいものですね。先達のレンズ職人は、この様な事を知っていたのかもしれません。解像感と被写界深度が、各々の焦点距離のレンズで、まさにばっちりと合うような造りになっていたりします。まさに、この様な大きさの被写体を撮ってほしいがために、創られた感があるのです。解放F値がそれなりに小さいレンズが、単焦点レンズに多くあり、中には意図的に円形の固定絞り輪を配置し、解放F値を上げて絞り開放での解像感と丸ボケを作り易くしているレンズもあります。

レンズを買ってくると、まず行うことは、被写界深度の確認です。簡易ですが深度メータを自作してありますので、最短撮影距離で、絞りを開放にして撮影して、撮影結果を印刷して確認します。単焦点レンズは、思っている以上に被写界深度が浅く、浅いものでは前後0.5mm程度のものがあります。この様な深度では、被写体の一部しかピントが合いませんし、体の前後で直ぐにピンボケになりますので、三脚を用いるかどうかの判断材料になります。この様なレンズの基本的な特性を把握しておくと、撮影の時に思い出して、それなりの対処をすることが出来ます。

それでは、本日写した写真から、暑いので最近は写真も思うように撮れません。休日は涼しい朝に撮影してみようと思います。


PENTAX K-5 SMC Takumar 105mmF2.8
撮影データ:1/250sec F4 ISO100
モントブレチアの花も終りになり、実が鈴なりになっています。面白い形になりましたので撮影しました。後ボケが柔らかく、秀逸なレンズです。
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